第39話 古の伝説
大聖堂、地上。
俺達は地上に戻った。
「おお、ユーリ殿、ご無事でしたか。」
「はい。何だかんだで、一番奥まで行ってきました。ボスらしきモンスターも倒しました。」
「おお、そこまでやっていただけるとは!ありがとうございます!やはりユーリ殿たちにお頼みして良かったです。」
「ちなみに、聖遺物はどのような感じでしたか?」
「一番奥の部屋に、それらしき物が置いてあったので、とりあえず持ってきたのですが。」
「も、持って来た!?」
総主教がすごく驚いている。
「・・・あれ、これひょっとして、動かしたら不味い物でした?」
なんかやらかしたかと思ったが、どうも違うようだ。
「い、いえ。不味いと言うよりも、動くはずがない物なのですが。」
「でも、確かに普通に持ち上がりましたよ?これがその物です。」
俺は球に十字架が刺さった謎の物体を、総主教の前にそろりと置く。
「これは!?・・・確かに、古の記録にある、聖遺物の絵と全く同じだ!」
「総主教聖下。これは一体何なのですか?」
俺が皆の疑問を代弁して聞く。
長い話になりますので、どうぞこちらへ。
俺達は会議をする部屋に通された。
「ユーリ殿は、この国の建国にまつわる伝説をご存知ですかな?」
「いえ。あまり詳しくは。」
宝具どうこうの話は前に聞いたが、そこまで詳しいわけでは無い。
「では、改めてお話しいたしましょう。」
「今を去る事、600年前。東方より、突如魔物の大群がこの大陸の国々に攻め寄せました。当時の国々は皆懸命に闘いましたが、力及ばず、次々に領土を奪われ、人間は魔物の餌食となって行きました。」
皆が息をのむ。
「しかし、魔物から人類を開放するため、一人の英雄が立ち上がりました。その英雄は、不思議な力を用い、それまで魔物に対してなす術がなかった人類を、ついに勝利へと導いたとされています。その英雄こそが・・・」
「初代、リューリク王ですか?」
「そのとおりです。しかし、時が経つにつれ、伝説は、人々の記憶から忘れ去られていきました。」
総主教は顔を上げる。
「残念ながら、今や信徒たちも含め、ほぼ全ての者が信じてはおりませぬでしょうが、私個人は、この伝説を本当に信じています。」
総主教は一度言葉を切り、続けた。
「初代リューリク王は、本当に不思議な力をお使いになられたのだと。」
不思議な力。
考えるまでもない。
この国では俺だけが使えると言う、魔法のことだろう。
他の3人も、それに気付いたのか俺を見上げている。
「この際、お話ししてしまいましょう。私はその聖者こそが、初代リューリク王のことだと考えています。ですが、聖遺物が何であるのかは、調べる事すらできず、長らく謎のままでした。」
俺にとっても謎のままだ。
―待てよ?
初代リューリク王が奇蹟を起こした、聖遺物。
―もしかして、あれも宝具の一つなのか?
「今回、ユーリ殿のおかげで、ようやく聖遺物を目の当たりにすることが出来ました。私達はこれより、残る記録と文献を総動員して、この聖遺物が何であるか、どのように使われたのかを解明するつもりです。」
「そして、俺からも聞きたいことがあるのですが。」
「なんなりと。」
「あの魔人とやらは、自らを『ギタイアの魔人』」と言っていました。ギタイアとは、・・・そもそも魔人とは何なのですか?」
俺の言葉に、総主教の顔色が変わった。
「魔人ですと!?迷宮のボスは、確かにそう名乗ったのですか!?」
総主教はしばらく考え込む、
そして、口を開く。
「教会も、『ギタイア』と言うものについては、聞いたことがありません。・・・ただし、魔人については、古の記録にて存在が確認されています。」
―やはり、ただのモンスターじゃないのか。
「魔人は、数多の魔物を束ね、率いることが出来る存在です。かつての魔物の侵略の際には、ドルジアの魔人と名乗る存在が、各地に多数出現したと言う記録があります。」
またなんか新しい言葉が出てきたが、要するに魔物の兵隊の将軍みたいなものか。
―兵隊・・・か。
そこまで考えて、ふと思いつく。
兵隊がいて、将軍がいると言うことは。
「それは、魔物の世界にも、国があるということですか?」
「魔物の言うそれが、国であるのか、はたまた、ただの種族名であるのかは、はっきりとはわかりませぬ。」
―もし、ギタイアだのドルジアだのが、魔物の国の国名と言うことであれば。
魔物の国にも、王が。
―魔王が、いるのだろうか。
俺はひとまず、聖遺物を総主教に預けることにした。
「ユーリ様、あの聖遺物って、もしかして・・・」
「今ユーリ殿が2つ持っている、宝具かもしれませんね。」
「ユーリさんの、新しい力の源・・・」
「可能性は、高いと思う。とりあえずは総主教に調べてもらおう。」
どんな使い方かも、よくわからないみたいだし。
「記録によると、残る宝具は2つ、宝珠っていう謎の物体と、剣だそうだ。」
「と言うことは、あれがそのほうじゅ・・・っていう物ですか?」
サーシャが思いついたように聞く。
「恐らくはそうなんだろう。だとすれば、あれは確か、治癒の力があるとかいう話だったような。」
俺は半年前にサーシャと見た映像を思い出す。
―あれ?そう言えば。
「俺さっき強化魔法をかけた矢が跳ね返ってきて、それなりのダメージを受けたはずなのに、もう全然なんともないぞ?痛みすらない。」
「わたしも、結構疲れたはずなのに、もう全然疲れがありません。」
「ユーリ殿とサーシャ嬢に同じくです。私も疲労を感じません。」
「かなり激しい戦闘だったのに、これもユーリさんが宝具で力を使ったからなんでしょうか。」
どうやら3人とも同じようだ。
これは、ほぼ決まりと言っていいだろう。
あの聖遺物は、宝具の一つにほぼ間違いない。
―とはいえ、どう考えても教会の所有物だ。
どうにか譲ってもらえないか、総主教と交渉しなければならないな。
―こりゃ長引くかもしれないな。
「何はともあれ、明日は城で『王子様』と面会だ。何を言い出すやらわかんないけど、まずはそっちに集中しよう。」
「そうですね。」
サーシャが大きくうなずいた。
まずはそっちを片付けよう。
おそらく、大きな問題になるだろうし。
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