第38話 迷宮のボスと聖遺物
大聖堂地下、迷宮の最深部。
大きい部屋の中に、何かがいる。
「影・・・?」
「ユーリ様、あれは一体?」
影が、ゆっくりこちらを振り向いた。
一見、人のようなシルエットをしているが・・・?
「ユーリさん。あれは人間ですか?」
「いや、明らかに雰囲気が違う。・・・人間じゃなさそうだ。」
俺はその影に問いかける。
「何者だ!」
≪我はギタイアの魔人ビョートリャン。この迷宮を守りし存在である≫
「魔人・・・?」
「人ではない?」
サーシャはいぶかしげな表情を浮かべ、ミーリャさんも疑問符を浮かべている。
見た目は、ただの大男だ。
上半身は裸だ。筋肉隆々(りゅうりゅう)なのが見て取れる。
ただし、その身長は5メートルほどある。
そして全身からは、見たことが無いまがまがしい雰囲気を漂わせている。
―魔人?
そんなモンスターは聞いたことが無い。
―それに、ギタイアってなんだ・・・?
魔人とやらはさらに語る。
≪そして、この迷宮を作り存在なり≫
「迷宮を・・・作った・・・?」
イオナが剣を構える。
―よくわからないが、つまりはこの迷宮のボスか。
「ならば倒すまで!!みんな行くぞ!!」
「「「はい!!!」」」
俺は杖を手に魔法で全員を強化する。
『攻撃力上昇!』
『防御力上昇!』
『俊敏性上昇!』
「どんな手で来るかわからない。まずは牽制しながら出方を見よう。」
「いきます!えいっ!」
「私も!はあっ!」
間合いを取り、サーシャがクロスボウを放つ。
バシュ!
≪ふんッ!≫
「わたしのクロスボウを・・・弾き返した!?」
その矢が、そのまま戻ってくる。
「おっと!」
―盾は間に合わない!
俺はサーシャの前に立ちふさがって跳ね返された矢を受け止める。
「ユーリ様!」
カウンターか。
「なるほど。人間に似ていると思いきや、しっかりモンスターじみているじゃないか。」
―中々やりがいがありそうな相手だな。
続いて攻撃しようとしたミーリャさんの手が止まる。
≪なんだ、それで終わりか?では我から行くぞ!≫
―さあ来い。お手並み拝見だ!
今度こそ盾を構える。
『防御!』
≪食らえ!無量全体拳撃!≫
≪オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!≫
俺達に向け連続で拳の雨が飛んで来るが、防御魔法で全て弾き返す。
≪我の攻撃が効かぬだと?≫
「結局ただ高速で殴るだけかよ!」
ただし、こちらの攻撃もなぜか効かないと。
≪まだまだ行くぞ!無量全体拳撃!≫
≪オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!≫
『防御!』
いや、待て。
俺は少し考える・
―効かないのではない。
カウンターで弾き返されただけだ。
ならば!
「サーシャ!ミーリャさん!絶え間なく攻撃し続けて!カウンターは全部俺が防ぐ!」
「イオナは俺についてきて!敵が防御から攻撃態勢にうつる隙をみて、連続で叩き込む!」
「「「はい!」」」
「えいっ!」
「行きます!」
バシュ!
カカカカカカ!
≪ふんっ!効かぬと言うに!≫
『防御!』
こちらに戻される矢やナイフを、全て防御魔法で防ぎながら。
徐々に。
間合いを詰めて行く。
≪・・・弾切れか。では我の≫
「隙ありっ!」
ザクーーーーッ!
≪何!≫
「はあああっー!」
ザクーーーーッ!
≪ぐわっ!≫
「わたし達も!」
「・・・!」
ドスッ!
ガガガガガ!
≪ぐぬぅ!≫
敵が防御体制に移行する間を与えず、立て続けに攻撃を集中する。
―カウンターの暇なんかやらない、一気にたたみかける!
「おりゃああああ!」
「やあああああ!」
ザクーーーーッ!
ザシューーーーッ!
≪な、なんという素早さ!き、貴様ら本当に人間か!?≫
一旦距離をとる。
「敵は弱ってる!みんな!同じ所を集中攻撃してとどめを刺すぞ!」
「「「はい!」
サーシャが、渾身の力を込めてクロスボウを放つ!
「と、ど、けぇー!」
バシューーーン!
≪無駄だと言うのがわからんかああああ!≫
「わかってやってるんだ!『防御!』」
その合間に、敵の間近に接近する!
「行くぞ魔人とやら!おりゃあああああああ!」
「はあああああ!」
≪ふっ!≫
魔人が位置をずらし、俺とイオナの剣撃は外れた。
≪同じ手を何度も食うか!無量全≫
ザシューーーー!
≪ぐっ!三人目だと!≫
密かに回り込んだミーリャさんの剣は直撃だ。
俺達3人は体勢を立て直して突撃する。
「とどめえええええええ!!!」
「はあああああああああ!!」
「・・・・・・・・・・!!」
ザシューーーーー!
ドシューーーーー!
ズバーーーーー!
≪ぐふ・・・・あ・・・・が・・・!≫
ドシーーーーーーン!!!
地響きとともに、魔人ピョートリャンとやらはついに倒れた。
「ふう・・やっと倒したか。」
「ユーリ様!」
サーシャが駆け寄り、先ほどの傷の手当てをしてくれた。
「みんなは怪我無いか?」
「ユーリ殿がまた全て防いでくださったので、他の皆は無傷です。」
「ならよかった。俺の傷も大したことは無い。数日で元通りだろう。」
「ユーリさん、何だったんでしょうか、あれ?」
「とりあえず、あれはここのボスで、俺達はそれを倒した。今はそれだけで十分だ。」
魔人。
ギタイア。
正直、アレの言っている意味は、全く分からないままだった。
その内、知る機会もあるのだろう。
俺が地上に戻る準備を始めた時だった。
「ユーリ様、台座の上に、何かが置いてあります。」
「本当だ、これは・・・丸い、玉?」
「玉に、十字架が刺さっているようですね。」
「ユーリさん。何なんですか、これ。」
―こればかりは、さっぱりわからない。
「何じゃこりゃ?」
俺はそれを手に取る。
どうも置いてあっただけの様で、あっさり動いた。
意外と軽い。
俺はしばらくそれを持って色々考えて見るが、正体は全く思い浮かばない。
「うーん、駄目だ、わからん。」
「ユーリ様、もしかして、これが聖遺物じゃないですか?」
「可能性はありますね。」
「地上に持って帰りましょう。」
―そうだな、もしかしたら総主教ならこれが何かわかるかもしれない。
いつの間にか、俺の傷は治っていた。
サーシャの手当ての仕方が良かったんだろう。
これなら、たとえ明日敵が攻めてきても全然平気だ。
「よし、地上に戻ろう。帰ったら今度はゴリツィンと戦だ。」
俺達は、帰り道を歩き始めた。
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※次回投稿は6月18日(金)午後か夕方を予定しています。




