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28話「死神談義」

「なんにせよ、呪いの中でも可能性が絞られてきました」

「ひとまず、考えられる呪いについての情報を、手あたり次第に調べてみないことには始まらないわね」

「ですね。結構な数の候補は上がると思いますが」

「ええ。その候補も、多少は絞りたいわね。呪いの代名詞、悪魔の力を借りる黒魔術だけでも結構な量があるから、マイナーなのまで含めたらきりがないわ……」

「そうですね……呪いの手掛かり。つまり、この呪いの特徴といえば、まずは容姿ですね」

「大鎌の死神……」

「はい。大鎌を持った死神が、大鎌を一振りして対象者の首をはねる。この呪いの一番の特徴はそれでしょう」

「んー……なるほどね」

「ええと、この死神の特徴に関しては、瑞輝さんが詳しく喋ってくれました」

「桃井瑞輝。今のところ、死神の目撃者で、死亡、または昏睡状態に陥っていない人物……要は死神の姿を詳細に喋れる唯一の人物ね」

「はい。その瑞輝さんが言うには、ぼろぼろの紺のマントを羽織っていて、頭は角の生えた骸骨だったそうです」

「で、手には大きな鎌……か……」

「そして、その中には何も見えなかった……これは、本当に空っぽなんだと思います。つまり、中には人には見えない『呪い』が入っているということ」

「なるほどねぇ。で、その呪いには鉄砲も効かないと」

「みたいですね。そして、その弾丸には歪みがあった」


 梓が、死神に銃弾を撃ち込んでいるところを想像する。

 杉村は三発も発砲していた。一発は威嚇用に放ったものらしく、遠く離れた民家の庭で見つかった。その弾丸には奇妙な点は無かったが……他の弾丸には、何か固いものに当たったような歪みがあったのだ。


「うん……つまり、相手には物理干渉できるってことね」

「はい。だたし、銃弾を弾き返すほどの頑丈さと、怪力のティムちゃんを上回る怪力の、まさに化け物です」

「当たるけど、通用しないってことか……」

「恐らく、あれは呪いそのものなんでしょう。だから、特殊な方法しか通用しない」

「特殊な方法……」

「解呪や浄化、または破魔といわれる手段です」

「そっか、呪いを解けば、あの怪物も消えるのね。……え、待って、呪いも絞りきれてないのに何でそれが分かったの?」

「それは、実際に解呪をした人が居たからです」

「えっ、まさか梓、遭遇したの!?」

「いえ、解呪したのは私じゃないです。桃井瑞輝さんです」


 梓が瑞輝の名前を出す。それにはさすがの杏香も驚いたようで、目をぱちくりさせている。


「またしてもあの子の名前……いえ、その方がむしろ自然かもね。イレギュラーな危機回避ができたのなら、むしろこのレアケースの十分な理由になるわ」

「ええ、そう思うです。瑞輝さんの証言は、クレハさんに見せられた映像とも一致しているので、瑞輝さんは信用できると思うです」

「梓以外にも、呪いを解けるくらいの頼れる霊能者が増えたってことね」

「いえ……瑞輝さんの場合は魔法を使ったそうです」

「あ、そっちか」


 魔法。梓はその言葉がフィクションに対する事以外で使われることに、どうしても強烈な違和感を感じてしまう。しかし、杏香の方は、梓にはそれほど驚いたようには見えていない。

「あれ? 驚かないんですね」

「慣れてるからね」

「ああ、超常現象とか、詳しいですもんね」

 梓は、そもそも、呪いや霊能以外については、杏香の方が自分よりも専門家だと思っている。時折来る、呪いや霊能以外の超常現象のことを相談するときには、杏香は梓にとって、本当に頼りになる存在なのだ。


「まあ……色々と耐性がついちゃったんでしょうね。仕事柄」

 杏香がしみじみとしながらお茶をすする。

「ふー……ま、どちらにせよ、呪いを解ける子なんでしょ? 心強い味方ができたじゃない」

「それがそうでもないみたいで……」

「ええ?」

「瑞輝さん、あの時は必至だからできたって言ってました。どうも常に安定して力を出すことはできないみたいです」

「火事場の馬鹿力ってやつね。魔法は精神力に影響され易いから、その時の気持ちによる影響が強いのよ。こんな機械だらけの所で使うんだから、なおさら効果も薄くなるだろうし、呪いも強力っぽいし、よっぽど魔力が高くなければ解呪なんて無理か……」

「なるほどなるほど……って、く、詳しいですね……」

「あはは……職業柄ね。でも、そうなると、結局いつも通り、梓だけが頼りになるわけね」

「気が重いですね。今回は一筋縄じゃいかなそうです。誰かに変わってほしいところですが……」

「え、そうなの? 大丈夫よ!」

「そんな無責任な……私、ティムちゃんの身体能力は知ってるんですけど、ティムちゃんでも一太刀浴びてしまう身のこなしをする怪物を相手に接近戦をするのは厳しいなって」

「いつもの薙刀ね。上下両方に刃のある。あれ、あたし好きだわ」

「どうも。あれ、先祖代々の家宝なので、褒められたら嬉しいですけど……その薙刀を扱う私の腕は人並みですからね。その点、あの怪物はティムちゃんの身のこなしにもついていけているので、単純な斬り合いになると、私に勝ち目があるかどうか……」

「それはでも、ティムの攻撃が効かなかったからってのもあるだろうし……あ、そうだ。アレできないの、アレ」

「何ですか、アレって」

「ほら、ええと……」

 杏香が人差し指を立てて、斜め上を見つめた。何かを考えている様子だ。


「そう! 間接攻撃よ! なんか、薙刀からでないの? ビームとかさ!」

 スッキリしたような顔をして、杏香が言う。


「ビームは出ませんけど……破魔の矢っていうのならあります」

「あ、そうなの? じゃあ、あるんじゃない」

「いえ……破魔の矢は使えないんです。破魔の力の扱いって、どうも苦手で……ほら、矢って、空中を飛ばすじゃないですか。かなり安定した力を乗せないと、矢がぶれちゃうんですよね。薙刀だったら、ちょっと扱いづらいだけで、そんな事はないんですけど」

「へぇ……そういうもんなのね。でも、ただでさえ扱いづらい両刀薙刀を、もっと扱いづらくしてたとは、恐れ入るわ」

「恐れ入れられても、その接近戦で、かなり不利ですからね。一応、破魔の矢は練習中なんですけど、未だにまともに的にすら当てられないですし……」

「そうなんだ……んー……何かいい手があればいいけどな……」

「今のところは破魔の矢を練習するしかないですね。それか、あの怪物の正体。つまり、呪いを特定するかです」

「結局、そこに戻るわけね」

「正体が分かれば、それなりにちゃんとした対処法も見つかるかもしれないですから」

「なるほどねぇ、それさえ分かれば、こんなはた迷惑なことをする奴が誰かも分かるから、根本的な対処をしてしまえばいいわけね」

「はい。結局、一番の対処法は、この事件を解決する。それに尽きます」

「四の五の言ってないで、早く解決しろってことか……とはいっても、近づいたようでいて、まだまだ遠いって気はするのよね」

「その通りですね。呪いのルールについても、まだまだ呪いを特定できるほどには解析できていなくて足踏み状態ですし……あの怪物の正体も特定できていないです」

「正体か……」


 呪いを解析して犯人を見つけ出す。そうすればこの事件は解決。それは間違いない。

 しかし、破魔の矢を会得すれば、解決までの間に襲われる人を救えるかもしれない。救える人がいるのなら、それを無視することはできない。どうにか破魔の矢を会得しないといけない。梓は決意を新たにしたのだった。

薙刀ビーム! っていうのも面白そうではあります。

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