リリアナ・シェスタ
どうしてこうなった。早まるな、妹よ。
私は貧乏没落貴族シェスタ伯爵家の長女、リリアナ・シェスタ。
その名に恥じぬ様、立派な行動を心がけて来た。心がけすぎてわがままな高飛車に立派な成長を遂げた。
自覚していても治せないものもあると思う。
妹が優しすぎて、9歳の時に没落したにもか関わらず、自分のことを自分で出来ないまま10年すぎて19歳になってしまった。妹が7歳で自分のことを自分で出来たのに、このザマはなんだろう。
アレクシス・ミランダード様の元へ向かう馬車で、妹のレティは頬を上気させながら私を褒め称えている。
久々に、きちんとした服で着飾った姿を興奮気味に。馬車も私の服も、アレク様がくださったものだ。
ちなみに、妹もアレク様にドレスをいただいたのだけど、『兄様ったら、宛先が間違えているわ。姉様へのプレゼントがあたしへ届いたの。あ、それとも姉様が自分のためにここまでお金を使うなんて……と気にするのを見越して、あえてあたしに送ったのかしら?』と言っていた。
その誤解は多分、私がレティと服のサイズが一緒だからだろうけど。レティは、私が自分の服のサイズも把握していないと思い込んでいる。
実際最近まで知らなかったんだけど……。
ちなみに、レティに送られた服は全て私の私物になってしまった。
今レティが着込んでいるのは、シェスタの家で着ていたのと同じメイド服。出来れば、おかえりなさいませお嬢様、をやって欲しい。
閑話休題。
レティは驚くぐらい鈍感。それは間違い様もなく、レティに送られた服なのに。哀れ、アレク様。まぁ、私の愛おしい愛おしい妹はあげないけど。
「姉様、この前の刺繍はどうなさったの?」
静かな馬車で、レティが気を利かせて話題を振って来る。でもレティ、その話題出来れば姉様避けたかったなぁ。
「あれは、そう、暇つぶしよ。適当に使っているわ」
笑顔は引きつっていないだろうか。
実はあれ、内職である。服飾店まで行って、ハンカチを置いて欲しい!と頼み込んだのだ。実は私、刺繍に関しては自信がある。レティは知らないけれど。
実際、貴族の間で私の刺繍入りハンカチは好評で、即日完売らしい。元々の数が少ないから、即日完売も何も無いが……。
「良いのはできた?あたしも欲しいなぁ」
可愛らしく、欲しいなぁ、と呟くレティににっこり微笑んで今度あげる約束をする。
可愛い刺繍をしてあげよう。
そういえば、私は靴のサイズもレティと同じ。幸いなことに、それのおかげでアレク様の求婚を私に向けることが出来たけど。
アレク様は、私とレティで2足のガラスの靴を作ったそうだけど、あれ絶対嘘。レティのしか作ってない。
だって、私の足にぴったり合った時の驚き様と来たら。ぷくくく。レティに不思議そうに見られたから自重する。
アレク様がレティを好いているのは知っている。でも、私は認めない。
レティは私に掛かりっきりで不自由に見えるけれど、意外とレティは自由を愛している。あんな、独占欲の塊みたいなアレク様にレティの自由を妨げさせてたまるものか。
それぐらいなら、私がアレク様の婚約者、引いては妻になってアレク様を縛り付けてやる。
もちろん、レティ自身がアレク様を好きならば姉として応援しようと思っていた。両思いなら、浮気の心配のないアレク様は好物件だから。
でも、レティはアレク様を好きだとは思っているけれど、あれはどう見ても兄を慕う気持ちだわ。
さて。ようやく私もレティの手を煩わせることがなくなると思ったのに、あのバカ……もとい、アレク様はあろうことかレティを屋敷に住まわせようとするし……。早く使用人を雇わせて、レティには実家に帰ってもらわないと。
いや、離れたくないんだけどね。
私はレティが大好きだ。レティが私を好きだという以上だと思う。
困ったものだと思う。許されることなら、私は結婚なんてせずに家にとどまり続けたかったなぁ。
でもそうなると、レティの世話になりっぱなしになる……。
これでも、レティの手を煩わせない様、自分の事は自分でする努力はして見たのだ。それを見たレティが、世界の終わりと言った様子で私を戸惑い気味に見てきた。
そして、言ったのだ……。
『あたしはもう、いらないのね……』
と。
それ以来私は、無駄な努力はやめた。
さて、これからアレク様の毒牙にレティがかかってしまわない様、姉様は頑張ります。




