07「ようじょの誕生日」その1
「ハッピバースデー、トゥーユー♪ ハッピバースデー、ディア、ななみ〜♪」
「わぁ、ありがとう、おねーちゃん!」
幼女は笑って火を吹き消した。
ーーーーー
霧の先にあったのは、実にどこにでもありそうな街でした。
丘の上から街を見下ろします。
車の音、雑踏の喧騒。
分譲住宅が広がる若い街並み。
先ほどまでの霧が嘘みたいに、青空が広がっていました。
「なんだ! まだ普通に暮らしているんじゃないですか!」
人類はまだ衰退していなかった。
喜び勇み、日の当たる丘を駆け下ります。
「かけっこ?」
駆け比べと勘違いした幼女さんも続きました。
「いや、待ってください! 何かおかしいですわ……」
後ろからトゥインクルさんが何かを言ってきましたが、何と言っているかはうまく聞き取れませんでした。
それにしても……ああ、人間がいる!
道行くハゲたおじさんも、コンビニ前のうるさい中学生も、今は何もかもが懐かしく感じます。
なんだ!
私以外にもいるじゃないですか、若者!
「よかった……」
気がつくと体から力が抜けていました。
アスファルトの地面にへたり込んでしまいました。
「だいじょうぶ?! おねーちゃん!」
ようじょさんに手を引かれ、近くの公園に入りました。
ベンチに腰を下ろしていると、幼女さんがペットボトル飲料を持ってきてくれました。
「えと……これどうしたんです? お金は?」
「なんか、おばーちゃんがくれたの」
いいのかなぁ……ソレ。
引っ掛かりつつも、いただいてしまいます。
普通のお茶。
普通のお茶ってこんなにおいしかったっけ?
選ばれるだけあるということなのでしょうか……。
少しだけ落ち着いてきました。
公園では子供たちが遊んでいます。
それを見守る親や老人たちもいます。
普通だ。
ここにいると、コールドスリープから目覚めてからのことが嘘みたいに思えてきます。
「もう少し、この街のことを調べてみましょうか」
住宅街。
分譲住宅らしき小綺麗で無個性な街並み。
「るんららー、たーるん♪ るんららー、たーるん♪ たるたるそぉす、エビフラーイ♪」
何の歌だろう?
幼女さんが歌っていました。
両手をしきりに前で動かしていますけど……それって指揮のところなんでしょうか?
歌に気を取られて周囲がおろそかになっていたらしく、飛び出してしまった曲がり角で誰かとぶつかりました。
「きゃっ」
「うぎゃっ」
尻餅。
思わず乙女にあるまじき声を出してしまった……。
相手を見ると、中学生くらいのジャージ少女でした。
「だ、大丈夫ですか?!」
少女が顔を上げました。
「あっ、はい……ごめなさい、飛び出したりして……」
重そうなバッグ。
学校に急いでいたんでしょうか?
いや、時間的に帰り道かな……。
「て、あれ? ななみ、どーしてこんなところにいるの?」
少女が幼女さんを見て目を丸くしました。
ななみ……?
「今日は誕生日なんだから! もう帰るよ。あ、おねーさんも一緒に来ます?」
少女が幼女さんの手を取りました。
なぜか私も家に誘われました。
あれ?
「私も……?」
「いつもななみが話していた『本のおねーちゃん』ですよね? ささっ、行きましょう!」
あれれ?
「おー、帰ったのか六花、七海。この子は……? ああ、『本のおねーちゃん』か! いつも娘の面倒をみてくれてありがとうね」
あれれれれ……?
どういうわけだか、幼女さんの誕生日パーティーにご一緒することになっていました。
一番置いてきぼりを食らっているのは、他でもない幼女さんでした。
「どーいうこと? おねーちゃん……」
私もかぶりを振りました。
わかるわけがない。
状況、理解不能。
「ハッピバースデー、トゥーユー♪ ハッピバースデー、ディア、ななみ〜♪」
パーティーは滞りなく進みました。
大盛りの唐揚げやお寿司が振舞われ、幼女さんも私も大満足でした。
奇妙なことに、途中から違和感が薄まっていきました。
最初からこうだった、ような……?
幼女さんが『ななみ』という幼女として振る舞い、私も『本のおねーちゃん』らしくオススメの本を語りました。
私の知らない本の話ばかりを語りました。
ーーーーー
遅くなってしまったので、ななみちゃんの家に泊めてもらうことになりました。
楽しいパーティーでした。
疲れてすぐに眠ってしまいました。
朝起きると、ななみちゃんはもう起きていて、母親を手伝っていました。
「おはようございます」
「あら、おはよう。よく眠れたかしら?」
「それはもう」
「まっててね! すぐあさごはんできるよ!」
朝ごはんはトーストに目玉焼きとウインナー。
それからなめこのお味噌汁。
普通……か?
気合が入っていますね。
「それにしても、六花はいつまで眠っているつもりかしらねぇ」
10分ほどして、六花ちゃんが寝癖もそのままに飛び起きてきました。
「学校あるっていったじゃん!」
「あれ、そうだったっけ? 今日土曜よ」
「学校ある日だよぉ! 前にも言ったじゃん!」
「またちこくだ、おねーちゃん」
パンを掴むと、六花ちゃんは慌てて飛び出して行きました。
「今日は早く帰ってくるのよ!」
「わかってるって!」
母親が六花ちゃんを見送りました。
「今日何かあるんですか?」
「七海の誕生日なの。だから今夜はパーティーだわ」
パンと母親が手を叩きました。
「そうだわ、せっかくだからあなたもどう?」
ーーーーー
何かがひっかかります。
でも何だろう?
借りていた本を返すため図書館に向かっていました。
今日返さなきゃいけない本なんだから……普通、ですよね?
図書館で本を返して、新しい本を読みました。
読みきれなかった分はまた借ります。
気がつくと16時になっていたので、図書館を出て近くの公園で一休み。
ベンチに腰を下ろしていると、誰かが近づいてきました。
「おねーちゃん!」
「あれ、ななみちゃん?」
偶然ななみちゃんと合流した私は、二人でななみちゃんの家に向かっていました。
「るんららー、たーるん♪ るんららー、たーるん♪ たるたるそぉす、エビフラーイ♪」
何の歌だろう?
ななみちゃんが歌っていました。
両手をしきりに前で動かしていますけど……それって指揮のところなんでしょうか?
歌に気を取られて周囲がおろそかになっていたらしく、飛び出してしまった曲がり角で誰かとぶつかりました。
「きゃっ」
「うぎゃっ」
尻餅。
思わず乙女にあるまじき声を出してしまった……。
相手を見ると、中学生くらいのジャージ少女でした。
「だ、大丈夫ですか?!」
少女が顔を上げました。
「あっ、はい……ごめなさい、飛び出したりして……」
重そうなバッグ。
学校に急いでいたんでしょうか?
いや、時間的に帰り道かな……。
「て、あれ? ななみ、どーしてこんなところにいるの?」
ななみちゃんの知り合い……でしょうか。
雰囲気的に、ななみのお姉さん?
「今日は誕生日なんだから! もう帰るよ。あ、おねーさんも一緒に来ます?」
どういうわけだか、ななみちゃんの誕生日パーティーにご一緒することになっていました。
「ハッピバースデー、トゥーユー♪ ハッピバースデー、ディア、ななみ〜♪」
「わぁ、ありがとう、おねーちゃん!」
ななみちゃんが笑って火を吹き消しました。
パーティーは滞りなく進みました。
大盛りの唐揚げやお寿司が振舞われました。
ーーーーー
遅くなってしまったので、ななみちゃんの家に泊めてもらうことになりました。
楽しいパーティーでした。
疲れてすぐに眠ってしまいました。
朝起きると、ななみちゃんはもう起きていて、母親を手伝っていました。
「おはようございます」
「あら、おはよう。よく眠れたかしら?」
「それはもう」
「まっててね! すぐあさごはんできるよ!」
朝ごはんはトーストに目玉焼きとウインナー。
それからなめこのお味噌汁。
普通……か?
気合が入っていますね。
「それにしても、六花はいつまで眠っているつもりかしらねぇ」
10分ほどして、六花ちゃんが寝癖もそのままに飛び起きてきました。
「学校あるっていったじゃん!」
「あれ、そうだったっけ? 今日土曜よ」
「学校ある日だよぉ! 前にも言ったじゃん!」
「またちこくだ、おねーちゃん」
パンを掴むと、六花ちゃんは慌てて飛び出して行きました。
「今日は早く帰ってくるのよ!」
「わかってるって!」
母親が六花ちゃんを見送りました。
「今日何かあるんですか?」
「七海の誕生日なの。だから今夜はパーティーだわ」
パンと母親が手を叩きました。
「そうだわ、せっかくだからあなたもどう?」
ーーーーー
ーーーーー
ーーーーー
何かがひっかかります。
でも何だろう?
借りていた本を返すため図書館に向かっていました。
今日返さなきゃいけない本なんだから……普通、ですよね?
「どこに向かっているんですの?」
「あ、図書館に……ってあれ?! トゥインクルさん?!」
道端のベンチに。トゥインクルさんが座っていました。
膝に見知らぬ幼女を乗っけていました。
訴えられますよ。
「ふぅん、図書館。どうして?」
「どうしてって……借りた本を返すためですよ」
「その本、いつ借りたのかしら?」
「いつってそりゃ……」
……あれ?
あれれ……?
「いつだろう……思い出せない……私……本なんて借りてたっけ?」
その時、霧が晴れました。
衝撃の新事実。
私は『本のおねーちゃん』ではなかった!
「やはりこの街は『普通』じゃありませんでしたわね。早いところ幼女さんと合流して抜け出しましょう」
【次回のロリの惑星】
「かつて幼女のパンツだったものです……気がついたら、こんなことに……」
80年分の時間のツケ。
それをこのパンツは支払ったというわけですか。




