06「幼妻王の城」その3
ドームの全てのガラスが瞬時にモニターに変わり、世界各国のテレビ番組やネット動画などが映し出されました。
「ボクが旧世界のネットワークからサルベージしてきたんだ。どれもこれも80年以上前のものなのだが……これを見て欲しい」
モニターが切り替わり、世界各国の検索サイトを表示しました。
日本語のサイトが近くにあったので、それを見ました。
そこへ厳かに検索ワードが入力されたのですーー
【 ロリ 裸 】
「……………………」
途端にモニターが裸の少女のイラストに切り替わりました。
検索ワードがブロックされる場合も多いみたいですが……。
「……わかるかい? 何か気がつかないか? ボクが言いたいのはね、つまり『ロリ 裸』で検索しても、イラストしか出てこないという事さ! しかも、それも一部の国のみ! ほとんどの国ではイラストすら出てこないんだ!」
Dr.ストレンジラブは手振りを交えて説明します。
トゥインクルさんは、ドームを真剣な目で見つめていました。
「まさかと思って調べてみた。するとどうだ! 旧世界において、幼女の裸がタブー視されていたことがわかってきた。幼女の裸について……写真、絵画、文章で記録すること……それは旧世界において最大級のタブーだったんだ。男児のそれが、さほどタブー視されていなかったにもかかわらずね!」
ドクターの説明(と身振り手振り)にも熱が入ってきました。
「そう……もうわかるだろう。旧世界において、幼女は神聖な存在だったのだ。その姿をありのままに表すことは、偶像崇拝にも等しいのだ。まして無理矢理その服を脱がせようとするなど! 神への冒涜だ……!」
ドクターは幼女さんへ近づき、そばにかしずきました。
そしてそっと幼女さんの手をとりました。
「ああ、なんてボクは罪深い存在なのだろう……神にも等しい彼女たちから、服を奪うことしかできないなんて……!」
「なるほど……よくわかりました」
病気なんですね、何かの。
「うーん? かみとか、いってることよくわかんない」
「神……ようじょ……はぁはぁ」
ドクターがおもむろに幼女さんのスカートに手をかけたので、トゥインクルさんが吹き飛ばしました。
「万死に値する行為ですわ!」
「……そんなことはボクが一番よくわかっているよ……」
ゆらりとドクターが立ち上がりました。
「しかし幼女を前にすると、この欲求に抗えない……それがボクを支配する遺伝子なんだよ!」
「そんなプログラム、私がこの場で書き換えて差し上げましょう!」
ついに対峙する2人のアンドロイド。
かたや変態、かたや変態……どちらが勝っても、幼女さんの貞操が危ない。
「できるものか! アンドロイドが自身のプログラムに干渉することなど!」
「ならば喰らいなさい! トゥインクル・リ・ライト!」
トゥインクルさんの左手が投光器に変形し、青白い閃光が放たれました。
さながらビーム攻撃のようです。
そしてーー
ーーーーー
「……長い夢から覚めたようだよ」
ドクターが言いました。
目が覚めたようですね。
「だいじょうぶですかぁ?」
幼女さんがその顔を心配そうに覗き込みました。
「大丈夫だ。もう君たちの服を、無理やり脱がせたりしない……ちゃんと聞いてからにするよ」
「分かればいいのですわ」
本当にわかってますか?
「改心した以上、あなたもまた私の同志! 同じ幼女を愛する者として、これからもよろしくですわ、Dr.ストレンジラブ!」
「ああ、こちらこそだ! ええと……」
「世界の幼女をあまねく守る! トゥインクル=トゥインクル 2ndですわ」
「よろしく! 世界の幼女をあまねく守るトゥインクル=トゥインクル 2nd!」
前口上から名前だとカウントされたようです。
「それにしても、Dr.ストレンジラブとはまたずいぶん呼びにくい名前ですわね」
「そう言ってくれるなよ。ボクがお父様からもらった大事な名前なんだから。なんでも『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのをやめて幼女を愛するようになったか』という意味らしい」
長っ!
しかもろくな意味じゃない……。
「うーん、じゃあ今後は省略してドクターと呼ぶことにしますわ」
「かまわないよ」
「じゃあ、さっそくなんですがDr.ストレンジラブさん」
「呼ぶことにしたんじゃないのかい?!」
「『あなたも』お父様に創られたの?」
ドクターが丸メガネの奥の瞳を丸くしました。
2人のアンドロイドは無言で見つめ合いました。
沈黙は時に雄弁です。
お父様……それはきっと、彼女たち共通の創造者なのでしょう。
「おとーさまってなに?」
幼女さんが私のスカートのすそを引っ張り、尋ねてきました。
「パパのことですよ」
「パパ……? うーん、それってなに?」
え?
「ーーそう。私だけではなかったんですわね、お父様に創られたのは……」
トゥインクルさんが寂しげにつぶやきました。
そのとき、けたたましいアラーム音が城内に鳴り響きました。
「え、え、なに? なに?」
幼女さんが私に抱きついてきました。
トゥインクルさんとドクターが、血走った目でこちらを睨みました。
「なぜいつも人間さんに抱きつくんですの……」
「いいんだぞ……ボクに抱きついても……」
目が怖いって……。
「それで、なんのアラームですの、これは」
「城が何かを見つけたようだね」
ドクターの手元に虹色のキーボードが現れました。
ピアノをひくように、ドクターがそれを弾きました。
部屋がガラスのドームに戻ります。
荒地の先に、オアシスのような青々とした木々が茂っていました。
林に立ち込めている霧のせいで、その先は判然としませんでしたが。
「あの霧の中に町があるようだ」
「町? 幼女の町ですの?!」
トゥインクルさんが頬を紅潮させました。
「いや、そんな感じはしないね。人間の町じゃないか?」
町。
私の町から、多分そんなに離れていない所の町。
未来の世界へ来て、初めて出会う私以外の『人間』。
妹もまさかそこに?
「どうする? おりて行ってみるかい?」
ドクターが尋ねました。
行かない理由がありませんでした。
結局、ドクターは城の管理があるということで、私と幼女さん、トゥインクルさんの3人で町に向かうこととなりました。
ーーーーー
「しっかし、なんか妙な町だなぁ。ちょっと外から調べてみないとな」
Dr.ストレンジラブは、町へ向かう三人を見送りながら独り言ちた。
【次回のロリの惑星】
何かがひっかかります。
でも何だろう?
借りていた本を返すため図書館に向かっていました。
今日返さなきゃいけない本なんだから……普通、ですよね?




