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神様なの?小悪魔なの?




 “渋山羊君”ていうのは、最近女子中高生を中心に人気の、『渋い山羊』をコンセプトにしたキャラクターだ。


 何が可愛いのか、俺にはさっぱり分からない。


 でも、残念なことに、その渋山羊君を首から下げてしまうくらい大好きで、拓郎の言った容姿に酷似する人物に、俺は心当たりがあった。


 可能ならば、誰にも関わらせたくない人物だ。


 いや、本人の言葉を真に受けるなら“人物”という言葉は当てはまらない。



 本人曰く――



 私は神様です。



 ――らしいのだ。




 イタイ。




 すっごくイタイ。




 どんなに顔が良かろうと、どんなに体が良かろうと、絶対無理だろ、そんな女。


 平気な奴もいるかもしれないが、とにかく俺は無理だ。


 しかも、初対面で『君は前世で愛した男の生まれ変わり』とか言われてみろ。


 逃げるだろ、普通。


 自慢じゃないが、俺は足が速い。色んな部活から助っ人を頼まれるくらいには。


 が、結果から言えば、俺は神様から逃げられなかった。


 逃げても逃げても必ず追いつかれて……今じゃ逃げるのを諦めて、あいつとの関係を他の奴に知られないようにすることに徹している。




 学校には来るなって、あれほど言ったのに、何考えてんだよ、あいつ!!



 校門がもどかしいくらい遠い。


 おまけに帰宅ラッシュ時で人が多く、思うように走れない。



 誰かに話し掛けられて、「神様です」なんて口走っていたらどーすればいいんだぁぁ!?



 パニック状態でたどり着いた校門で、俺はすぐに神様を見つけた。ていうか、神様を中心に校門はなんだか異様な雰囲気に包まれていた。



 ……すんげぇ、目立ってる……



 遠目からでも分かる、白磁のような艶やかな肌。キラキラと、夕日を受けて輝く黒曜石の瞳。唇は熟れた果実のようにツヤツヤしていて、腰まで届く黒髪が彼女の美しさを際立たせていた。


 拓郎が騒ぐのも納得の、美少女だ。見た目だけなら、文句のつけようがない。



 取り敢えず、俺は胸を撫で下ろした。学校の連中は神様を遠巻きにしているだけで、接触しようとした猛者はいなかったようだ。


 草食系万歳!!


 いや、万歳している場合じゃない!


 とにかくあいつを連れて、人目に付かない所に行かなければ。



 速足で神様の元に向かえば、向こうも俺に気付いたようだ。

 眩しいくらいの笑顔で、手を振っている。


 だあから、目立つからやめろっ!!



 「何やってんだよ」


 神様を見下ろしつつ出した声は、自分でも驚くくらい不機嫌だった。それなのに神様は


 「君を待ってました」


 必殺上目使いでウルウル光線をお見舞いしてくる。


 くっそー!!反則だろ、この可愛さ!!ほら見ろ、横からお前を盗み見した奴が林檎みたいに真っ赤だぞ!!


 思わず「見んな」という視線をそいつに向けてしまう。そんな俺を見て、神様が不思議そうな顔をする。

 いやいや、お前が原因だかんな。


 「何も校門で待たなくたっていいだろ?すげー目立ってるぞ」


 尚も辺りを警戒していると、神様は何を思ったか、俺の顔を覗きこむようにしてくる。


 「少しでも早く、君に会いたかったんです。ここなら、すぐに君を見つけることができるでしょう?」


 っ!!

 そんな恥ずかしい台詞をそんな可愛い顔して言うな!!


 「恥ずかしいヤツ」


 心の中での呟きが、どうやら口からも出てしまったようだ。神様は大きな目をさらに見開いて、俺に詰め寄ってきた。


 「わ、私、恥ずかしいですか?!どこが恥ずかしいですか?!言ってくれれば直します!」


 神様は俺の肩くらいしか身長がないから、必然的にいつも見上げられる体勢になるのだが、こう胸にすがりつかれるようになると、それがますます顕著になる。に加えて……胸が当たってんだよっ!!


 慌てて神様の頭を掴んで体を引き離す。

 これ以上は、心臓がもたん!!


 「……行くぞ!」


 とにかくその場から逃げたくて、神様の手を掴んで歩き出す。


 自分でも顔が赤いのが分かる。心臓があっちこっちに飛び跳ねていて、音が外に漏れてやしないかと心配になる。いやいや、こいつは、自分のことを神様だと思ってるイタイ女だ。見た目に騙されてはいけない。


 うん、大丈夫。大丈夫。

 俺は神様のことなんかこれっぽっちも好きじゃない。心臓がドキドキするのも、ただの整理現象だ。そうだ。そうに決まってる!




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