第36話 剣と剣の交差
「着いた…。魔界に来るのも久しぶりだな…」
魔界に訪れたのも、ここの世界で魔王を倒して以来だったからだろうけど、ついついこんなことを無意識のうちに呟いていた。
ここはミラの故郷であり、由紀の故郷でもある。だから今となっては俺には全く関係ない…ということではなくなった。むしろ、ここも守らなければいけない世界だ。
魔界も人間住んでいる世界と同様にとても広い。だけど、魔王城というのは名前の通り、城だ。だから見つけるのはとても簡単だろうし、1回行ったことあるのだから道は迷わない。まあ、問題があるというならば、城に行くまでの間で、魔王であるララが魔族の兵士を送ってきて、邪魔がどうせ入るってところだろう。魔王になったのなら、流石に俺が来たことぐらいは気づくはずだし、すんなり通してくれる事はないだろう。
空を見上げると、魔界の空は赤く染まってきて、嫌な空気が流れていた。
しばらく歩いて俺は街に足を踏み入れた。俺を見つけた街の人たちはひそひそ話をしている。
「また勇者が来たわよ」
「今度は何の用かしら。今度こそ私達の世界を潰しに来たとか!?」
「そんなわけないじゃない。つい最近なったばかりのララ様のところにでも行くんでしょう」
「ああ、あの人も可哀想に。ララ様にきっと殺されちゃうわね…」
「いや、むしろ倒してくれるんじゃない?」
「ああ、勇者だもんね。せいぜい頑張ってほしいわ」
…流石にそこまで評判は良くないようだ。俺が以前、魔王を倒して自由を手に入れたとはいえ、魔界の王を俺が倒したことには変わらない。
だけど、さっきの話を聞くからに、ララが魔王になって魔界を支配しているのは本当のようだ。
さて、どうしようか。普通に説得してもきっと戻ってきてはくれないだろう。戦うしかないか。
考えながら歩いていたところに、突然空から斬撃が飛んでくる。俺は咄嗟に剣を引き抜いて、それを受け流す。斬撃を撃ってきたそいつは羽をたたみ、俺の目の前に降り立つ。一呼吸をして、そいつは口を開いた。
「よう、久しぶりじゃねえか、勇者様よお。何年ぶりだろうな」
「・・・?お前は、あのときの!」
「はっ、よく覚えてたな、俺のことを。今度は前のようには行かないぜ。魔王様のとこには行かせねえぜ。魔王様はお前には会いたがっていないからな」
こいつは俺が以前に剣を交えた幹部クラスの魔族。そのときはほとんど一方的に倒せたが、今の俺はこっちに戻ってきたばかりで腕が鈍っているだろう。だが、あれから数年間こいつは腕を上げてきたのだろう。実力がどれくらい上がったか分からない以上、油断をするわけにはいかない。こちらも全力で戦おう。
「知るかよ、そんなこと。俺はララを連れ戻すためにこの世界に戻ってきたんだ。邪魔をするなら容赦はしないぞ」
「へ、以前の俺と同じだと思ったら大間違いだからな。この数年間、俺はお前に勝つために努力をし、腕を上げてきたんだ。・・・この勝負、負けてたまるかよ」
「来いよ、全力で相手になってやる」
お互いが剣を構える。タイミングを見計らって、様子を伺う。風が吹く。吹き終わると同時にお互いが地面を強く蹴る。
剣のぶつかり合う音が鈍く鳴り響く。お互いの実力はだいたい五分五分だった。
「腕が鈍ってるみたいだなあ、勇者様よお。前の方が圧倒的に強かったぜ」
「生憎、向こうの世界じゃ特訓のしようもないし、剣すら振ってなかったからな。にしてもだいぶ強くなったじゃねえの。面白くなってきたぜ」
「戦いはまだまだここからだぜ!」
相手が先ほど撃ってきた斬撃をまた放ってくる。俺はそれを先ほどと同じように剣で受け流し、顔を上げると、目の前から魔族の男が消えている。後ろを振り返るとそいつは既に剣を振りかぶっていた。俺はとっさに剣で受けようとするがタイミングが少し遅れたために少し肩にかすった。
「よくあの状態から直撃を防げたな」
「以前ならあれぐらい軽く流せるはずなんだけどな。俺もだいぶ腕が鈍ったもんだ」
戦っていて、こいつは予想以上に強くなっていた。本当に甘くみているとこっちがやられかねなかった。
・・・さて、ここからどうするかな。戦い方を考えなければ。




