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異世界霊力技師の日常  作者: 咲


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透過破砕と極光が穿つ空

――やがて一行は渓谷の検問所に差し掛かり、厳重な警備に就く番人たちに先ほど取得したばかりのDランクおよびBランクの許可証を提示した。


「よし、通れ。ここから先は魔物の活性が一段と上がる。気を引き締めていけ」

番人たちの許可が下りてさらに奥へ進むと、周囲の地形は急激に険しさを増していった。岩肌が入り組み、上下左右に複雑に入り組んだ狭隘な洞窟や崖路が連続する区間へと突入したのだ。


「ここからは足場が狭すぎるな。一度エアーボードを降りるぞ」

レイジの合図に従い、一同はボードを停止させた。この区間では、レイジたちが使っていたエアーボードはもちろん、キールの自慢の魔導フリスビーすらも展開するスペースがなく、全員が足場に鍵を掛けてロックし、他の者が勝手に使用できないよう確実に固定してから徒歩で進まざるを得なかった。キールもまた、フリスビーを腰に収め、足場の悪い岩場を自分の足で慎重に登っていく。


狭く入り組んだ岩場を抜けてしばらく進むと、視界が一気に開けた。

眼下に広がるのは、巨大な地底大空洞――明らかに、再び空中移動を行った方が圧倒的に効率が良い空間だった。


「よし、ここから先はまた飛ぶぞ」

レイジの掛け声とともに、レイジをはじめ、エレナ、リリアーナ、シオン、そしてクロエの面々は、取り出した魔導フリスビーを軽やかに展開し、難なく空中へと飛び立った。


「……って、お姉ちゃん!」

「わかっています、ルカ。仕方ありません、研究の先行投資です!」

カノンとルカも、この開けた空間を効率よく移動するため、空間固定用の「消耗式の擬似霊力再現装置」を起動させた。デバイスから迸る擬似霊力の絶対軸を、二人の手元にある魔導フリスビーに無理やり纏わせ、レイジたちと同様の浮遊状態を作り出す。カノンとルカは、本来なら温存したかった貴重な消耗式デバイスをここで使わざるを得なかったことに、ちょっと不満げな顔をしながらも、見事にフリスビーを乗りこなして空へと浮上した。


だが、快適な空中移動は長くは続かなかった。

巨大な翼を持つ渓谷固有の魔物――ワイバーン・サブ種が数体、鋭い咆哮を上げながら猛烈な勢いで襲いかかってきたのだ。


「っと、早速お出ましだな!」

レイジが身構えるより早く、エレナが前方に進み出て両手を構えた。

「私に任せてください!」

エレナが放ったのは、魔力を極限まで圧縮・収束させた「共鳴式のレーザー」だった。眩い光の奔流が一直線に走り、先頭を飛んでいた魔物の硬い鱗をものの見事に穿ち抜く。


さらに、その隣でリリアーナがフンと鼻を鳴らした。

「ふはは! 私の出番だな!」

リリアーナ自身からは魔力の気配は微塵も感じられない。彼女がその小さな身体から解き放ったのは、魔力の常識など完全に超越した、未知の圧倒的かつ超高密度なエネルギーの奔流だった。彼女がそれを一気に解放して放った「リリアーナフルバースト」は、先ほどエレナが放った共鳴式レーザーの威力に限りなく匹敵するほどの凄まじい衝撃波と熱量を伴い、周囲の空間ごと複数の魔物をまとめて吹き飛ばしてしまった。


圧倒的な光景を真後ろのフリスビーから目撃したキールは、文字通り開いた口が塞がらなかった。


(なっ……!? あの小柄な商会の奴から、あんな化け物じみた威力の……魔力すら感じられないのに……)


ヒナのデタラメなバグ魔法に続き、リリアーナの常軌を逸したフルバーストまで目の当たりにしたキールは、冷や汗をダラダラと流しながら、頭の中で激しく絶叫していた。


「くそっ、俺だって……!」


キールは冷や汗を拭う暇もなく、自慢の2枚の魔導フリスビーを足元で激しく交錯させながら宙を駆け、自身へと迫り来る別のワイバーン・サブ種に向かって鋭い風刃の魔法を叩き込み、鮮やかに撃ち倒してみせた。


(そうだ、俺はBランクのプロの冒険者だ! あんな化物連中がおかしいだけで、自分の実力でちゃんと戦える……!)


そう自分に言い聞かせながら周囲を見渡すと、少し離れた位置でシオンとクロエのコンビが連携して魔物と対峙しているのが目に入った。

クロエは洗練された軽鎧を纏い、上質な細剣(レイピア)で華麗な突きを繰り出して確実に急所を捉え、シオンは周囲の大気エネルギーと自身の気を緻密に共鳴させながら、無駄のない体捌きで敵の隙を突いている。派手な爆発や規格外のエネルギーこそないものの、二人の立ち回りは極めて理にかなった、熟練のそれであった。


(はあぁよかった……! ああ、あの二人だけは、ちゃんとしている……! 剣術と魔法の基礎を積み上げた、まともな実力者だ……! よかった、このパーティーにもまともな感覚の人間がいた……!)


ようやく「普通の基準」を見つけて安堵したキールだったが、その安息はほんの数分で打ち砕かれることになった。


渓谷の奥から、さらなる怒涛の群れ――一回りも二回りも巨大な特異個体のワイバーンたちが雪崩れ込んできたのだ。群れの圧倒的な圧力と濃密な魔力嵐の前に、周囲の空間が歪み始める。


「……っ、流石に数が多すぎますねぇ」

シオンが初めて真剣な表情を浮かべ、構えを低くした。

「ええ、一筋縄ではいかないわね。……シオン君、ここで一気に押し切るわよ!」

クロエも凛とした表情で細剣を構え、その瞳に鋭い闘志を宿す。


次の瞬間、二人の全身から桁違いの闘気が噴き上がった。

クロエは体内の魔力と気を完全に一つに練り合わせ、眩い純白の極光を放つ切り札――『魔力と気の融合』**を展開。その瞬間、彼女の戦闘力は一気にBランク上位の領域へと跳ね上がった。

さらにシオンは、リリアーナの雑談から超解釈によって導き出した奥義**『透過破砕』の構えを取り、練り上げた共鳴エネルギーをミクロン単位の超微粒子へと極限まで細分化させる。


「――いきます!」


クロエの鋭い突きの先端から放たれた極光のエネルギーは、シオンの超精密な共鳴制御によってさらに加速・増幅され、敵の硬質な外殻や魔力防壁の「分子構造の隙間」を完璧にすり抜けた。

外側からは何事もないように見えた瞬間、ワイバーンたちの体内でエネルギーが一斉に再結合し、内側から激しい爆発と破砕を引き起こした。


ドカァァンッ!!


数体の巨体が、外傷をほとんど残さぬまま内部組織を完全に粉砕され、音を立てて次々と地面へと墜落していく。それは先ほどのリリアーナのフルバーストとはまた異なる、技術と精密制御の極致が生み出した、あまりにも鮮烈で異次元の殲滅劇だった。

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