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第十話 交差点

 同時刻、渋谷スクランブル交差点にて


『震源は全世界の活火山との事で、マグニチュードは10.5、ですが津波の心配はないようです。しかし、海岸近くにいくのはおやめください。引き続き報道します…』

「心呂ちゃん、こりゃどうなってんだ。幸友とあんたのさっきの行動から見るに、これは夢なのか?」

「大丈夫なの?心呂さん」

「ここに集めた理由を聞きたいね。」

「お生憎。夢じゃないですよ。皆さんにはすべてを話した方が良いかもですね。」

 そうして私は時雨おばさんと雨友さめともおばちゃん、おさなかあちゃんに、私のこと、能力事件のこと、全て洗いざらい話した。

「…なるほど。つまり心呂ちゃんは私の姪っこなのか。」

「…!信じてくれるんですか!」

「信じられるかボケェ!」

「おねぇちゃぁん!やめて!」

 地面に向かって拳を振り下ろす時雨おばさん。拳をゆっくり上げた跡にはヘコみとヒビが目立っていた。

「コホン、心呂さん、この状況だとあなたを信じる他無さそうね…」

「ありがとう!かぁちゃん!」

「かぁちゃんは止めてくれない?ちょっとむずむずするし…」

 さすが幼かあちゃん…

 言い忘れていたが、幼かあちゃんは私のお母さんだ。

「未来の私に夫は居るのか?」

「時雨おばさんには居ないよ、私より強くないと認めないとか言ってたっけ。」

「…そうか」

 そう呟き悲しそうに下を見る時雨おばさん。

「心呂さん、その能力ってやつで個々にいる人達を助けられないのかな?」

「もちろん、そのつもりですよ。人間の大多数は『二〇二五年九月十五日午前十時二十四分五十八秒を経験する』と能力を手に入れられるとか言ったかな?」

「ちょっと質問があるんだが。」

 手を挙げる時雨おばさんは続けて、

「お前はどうやって手に入れたんだ?」

「今は、ほとんどレベル十五になると手に入るよ?」

「レベルってのはなんだ?」

「モンスターとか倒すと、レベルが上っていくの。未来だと授業内でレベル上げの授業があってね。」

「そうなのかぁ。虫を殺すのは?」

「上がらないかな。この世界にもともと居なかった生物じゃないと。」

「あのゴブリンとかか?」

「そうそう」

 そう聞き遠くを見る時雨おばさん。

「…おい、あれなんだ?」

 急いで視線をそっちに向けると、そこに居たのは、単なる泣いている子供だった。

「なにって、ただの子供じゃないの?」

 不思議そうに時雨おばさんの顔を覗き込む雨友おばちゃん。

「いや、あ、あれ?いまなんかスッゲー怖い顔してた気がするんだが」

「気のせいじゃないの?」

 この時気づいていればあんな大事にはならなかったのかもしれないが、もうしょうがない。


 同時刻、明治神宮 境内けいだいにて


「攻撃全く効いてなくない!?」

 俺の雪融刀ゆきどけとうの斬撃も二者のショットガン攻撃も全くと行っていいほど効いていない。挙句の果てには俺の能力すら弾かれる始末。

「どうしたら良いんだ…?」

 二者がくぐもった声を漏らす。

 そんな時だった。目の前の鬼が急に静かになったと思い見ると、目の光を失っていた。

「…は?

 あ、あれ…死んでる…!?」

 俺が言葉にした途端、鬼が肩口から反対の鼠径部にかけて上下に真っ二つになった。

 ズルっと上半身が落ち、もともとあった場所に普通の人間サイズの人影があった。

「だ、誰?」

 二者が呟き、俺は目を凝らす。

 ――そこに立っていたのは、片方しか角が生えていない、鬼だった。


 日本三大妖怪の一種、鬼。皆はどんな姿を想像するだろうか。

 全身が真っ赤や真っ青、牙が剥き出しで血管が浮き出ている?確かに、有名な鬼と言ったらそうだろう。何より、先程までのゴブリンや大鬼はその見た目だった。しかし、俺達の前に今立ちはだかっている鬼は、そんな姿はしていない。

 腰まである青いロングヘア、片目が隠れ、目が出ている方の側頭部からは角。体のラインがはっきりし、ザ・和な服に腰には想像よりも細い金棒を携え、大人な感じのタレ目。かわいいではなく、美しいが似合う女性の鬼。そんな、美人鬼が宙に浮いていた。

「そこの二人、なんかようかい?」

 透き通っているのに重厚感のある声に腹が震える。

「あんたの手下のゴブリンに困ってんだ!どうにかできないか?!」

 美人鬼は艶やかな笑い声を聞かせ、ニッと笑い

「それなら良かった、ここらへんの人間は滅ぼし鬼の国を作るつもりであったからな。」

「そうか、なら戦いは避けられないかもな、おい、名前は?」

「自分から名乗ったらどうだ?」

「…俺は友少友希ともしょうゆき。隣のは曽木二者そきにもの。これでい」

 これでいいかと俺が言いかけた時、

「私は、二者ではない」

「…は?」

 二者はそう否定してきた。

「私は、二者ではない。」

「それは聞いたが、じゃあ何者なにものなんだ?」

 一応言っておくがしょうもないダジャレではない。

「私は、一者いっさ曽木一者そきいっさ。」

「一者、とにかく今は戦うぞ、二者がどこ行ったかはこの際良い。あいつを討伐するのが重要事項だ。」

「分かった。」

 先程の陽がにじみ出ていたときとは見違えるように、無表情で声の抑揚もなくなっている一者。何者なにものなんだろうか。


 渋谷スクランブル交差点


「皆さん落ち着いて!今この交差点にはゴブリンは侵入できないようになっています!」

「しかし、驚いたなぁ、まさか未来の幸友の相棒となる人がすぐ近くにいるなんて。」

「え、えと、ど、どういうことなんですか?」

 私が交差点に張ったエネルギーシールドはここに連れてきた【乱打らんだ卯果うか】さんの能力のおかげだ。

 乱打さんは喜怒哀楽きどあいらく本部長のスーパーエリートにして、本部きってのアニメオタク。メガネを掛け、ボブの紫がかったサラサラの髪は触ると癒やされるのが特徴だ。

「乱打さん、力を貸していただき、ありがとうございます!」

「力を貸したもなにも、私はただあなたと友達になって髪をナデナデされただけですけど…」

 うーん、おかしいな、未来あっちの乱打さんは髪を撫でただけでハァハァ顔を赤くしてよだれを垂らす人だったのに…なにがトリガーになったんだろうか…

「とにかく、もう少しここに―」

「す、すみません!実は妹を探していて、まだ見つかっていないんですよ」

 珍しく大声を出した乱打さんの目は本気だった。

 っと、待てよ?乱打さんの妹って、ゴブリンに殺されたとかなんとかって…

「ら、乱打さん!私も探します!一人より二人の方が助かる確率は上がりますもんね!」

「え?で、でも申し訳ないし…」

「いいんですよ、そんな硬いこと言わずに〜、と・も・だ・ちでしょ?」

 そう甘い声で乱打さんの耳元でささやく。

「は、はわわ〜と、友達ぃ…」

「お、堕ちた…」

「時雨おばさん、雨友おばちゃん、かぁちゃん、ここは任せた!」

「ちょ、待って!あとかぁちゃんはやめろ!」

 そうして私は乱打さんと手分けして彼女の妹を探すことにした。

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