32:続・オーダー
案内された工房で(と言っても店舗に隣接しているんだけど)いよいよ魔銃のオーダーメイドが始まった。
「まずはこれを」
ヤゲンさんが取り出したのは四種類のグリップ。
見た目には何も変わらない風に見えるんだけどまさかそんな事はないだろう。
「この四種類のグリップは数ミリ程度ですがそれぞれ大きさが微妙に違います。グリップを握っていただいて、トリガーに問題無く指が掛かる物をお選び下さい」
そう言われてアルマは一つ一つを手に取り、握り、感覚を確かめていく。
「お店に置いてあったウラエヌスはどの大きさになるんですか?」
アルマが選んでいる間、ヤゲンさんに既存のウラエヌスについて尋ねてみる。
「あれはもう一つ大きいサイズです。以前見た限りではアルマさんには少々大きかったので、それより小さいサイズをご用意しました」
「へぇー。見ただけで大きさってわかるもんなんですね」
「とは言っても何となくですよ。正確な数値はわからないですし、持つのはアルマさん自身ですから」
ヤゲンさんは謙遜するけど、それでも凄いんじゃないの?
アルマがウラエヌス持ってるの見たって俺にはそれが大きいなんてわからなかったぞ。
それとも武器屋の人って皆分かるもんなのかな。
それもまた技術?
「これにします」
どうやらアルマの方もグリップサイズが決まった様で、四種類の内の一つを手に取り、それをヤゲンさんに手渡した。
「わかりました。グリップはこちらの大きさで決定ですね。装弾数はどういたしましょう?」
「何か変わってくるんですか?」
「単純に一度に撃てる弾数の違いと、弾に込められる魔力量が変わってきますので威力に影響が出ます。とは言っても威力に関しては弾の素材と組み込む術式の方が影響は大きいのでそこまで気にされなくても大丈夫ですよ」
そういえばウラエヌスには加速の術式が込められてるってリクが言ってたな。
あれは弾速と貫通力が増してるんだっけか?
「んー、カナはどれくらいが良いと思う?」
「そうね、何となくでいいなら、個人的には六発かな? 見栄えが良い気がする」
バランスっていうのかね。
リコッタでも注視して見たことは無かったけど、八発のを見て微妙な感じがしたのは何か覚えてるんだよな。
「そっか。うん、じゃあ六発で。」
「はい。装弾数は六発ですね。では、術式ですね。ダンジョン産の素材でさらに質も良いので高い効果が望めると思いますよ」
感情を抑えてはいるけど、やっぱりどこかワクワクしてる感じだなヤゲンさん。
自分で言うのもなんだけど、良い素材を扱えるってのは職人からしたら高揚感を覚える物なのかね。
「術式ってどんな種類があるんですか?」
「私が付与できる術式ですと【加重】【加速】【毒】【反発】【効果】の五種類です。職人によって付与できる種類が違ってきますので他にも沢山ありますよ。魔銃でしたら【炸裂】や【加撃】と言った術式が相性が良いですね」
炸裂は着弾時に弾を炸裂させ殺傷能力を高める術式で、加撃は弾を魔力で複製し二発ワンセットで撃ち込む術式らしい。
ただ、ヤゲンさんは付与出来ない術式らしく、ウルスラの街でも付与出来る職人さんは居ないので、付与を望むなら他の街じゃないと無理だそうだ。
術式って後付け出来たんだな。
それと気になる術式が一つ。
「効果、ってなんですか?」
そう、それ。
加重と加速それから毒はリクに説明してもらったからわかるし、反発もまぁ分かる。衝撃を減らす防具用の術式なんだろうと思う。
じゃあ効果って何よって話。
だって術式がそもそも効果な訳だしさ。
「効果というのはですね、例えば剣を振り下ろした際に光の軌跡を表現したり、魔銃で言えば風切り音を鋭いモノにしてみたりと、お遊びみたいな術式です。それが仇となる場合もありますのであまり実用的ではないのですが、剣に光の軌跡を発生させる効果は人気ですね」
そういう事らしい。
威力に直接の影響を及ぼす事は無いし、それが原因で魔物に気付かれたりと、言ってしまえば役に立つ処か状況を不利にする可能性だってある術式らしいのだけど、それでも一定の需要はあるとの事だ。
確かにその話を聞いて光の軌跡を描く効果術式はカッコイイかもと思ってしまった自分がいる。
俺みたいな人が結構いるんだろう。
尤も、この手の術式を施すのは殆どが男性で、女性人気はイマイチらしく、当のアルマ本人も微妙な顔をしているのでウラエヌスにこの術式が組み込まれる事はないと思う。
術式の説明を受けた後は、銃身の長さを決め、グリップに刻むエンブレム…模様?のデザインを決めた。
銃身の長さは三種類から選ぶ形で中間の物を選び、エンブレムのデザインはクロエ。
流石に全身は入りきらないので、頭部のみをグリップに彫金してもらう形だ。
「こんな所ですね」
三十分くらいか?
思ってたよりすんなり終わったね。
「では内容の確認を致します。グリップはこちらのサイズの物で、装弾数は六発のシリンダー、組み込む術式は【加速】、銃身の長さは中間サイズ、グリップに刻むエンブレムはクロエさんを題材にしたもの、使う素材は持ち込みのアイアンファングの牙と、ガンロックの魔核で――」
サンプルのパーツと素材を一つ一つ手に取り確認をしていくアルマとヤゲンさん。
「それを二丁でよろしいですか?」
「はい。それでお願いします」
特に食い違いも無く、最終確認も滞りなく終わる。
「畏まりました。それではこちらの内容でオーダーを承ります。料金は以前ご説明しました通り二丁で金貨六枚となります」
相変わらず聞いてるこっちが心配になるくらい安いな。
素材が全部持ち込みとは言え一丁金貨三枚だよ?
既製のウラエヌスが一丁金貨二枚って考えると、オーダーメイド代って金貨一枚な訳じゃん。
もうちょっと値段設定上げても文句は言われないと思うんだけど。
とは言いつつ消費者側からすれば安いのは大歓迎な訳でして、麻袋から金貨六枚を取り出し支払いを済ませる。
「それとオーダーの期間ですが、一週間程度を目安に考えておいてください。街に滞在されてのお待ちでしたら宿までお届けいたしますが、どうされますか?」
アルマがちらりとこちらを見る。
あれは「どうしよっか?」の顔だ。
一週間か。
ウルスラの外に出るっても特に目的は無いし、まだウルスラの街だって碌に周れてないからな。
ここは滞在択一でしょう。
「えっと、じゃあ滞在して待ちます」
「でしたら完成した品は宿までお届け致しますね。どちらの宿にご宿泊でしょうか?」
「あ、それがですね」
宿は取っておらず、牧舎に預けている馬車で寝泊まりしている事をヤゲンさんに伝えたところ「やはりあの馬車はカナメさん達だったんですね」と言われてしまった。
ユニコーンのゴーレムが牽いているゴツイ馬車がある。
と街中で噂になっているそうな。
そんな中同じくユニコーンのゴーレムを率いて店に現れるもんだから絶対にこの人達だと思っていたらしい。
そりゃ噂にならない方が可笑しいよね。
ともあれこれでオーダーメイドは終わって後は出来上がりを待つだけだ。
「因みになんですけど、これらの素材が持ち込みじゃなかった場合ってお値段いくらくらいなんですか?」
「そうですね。ここまで質の良い素材ですと……一丁金貨二十枚といったところでしょうか」
高っ。




