1:覚えましたよ固有スキル
「おはよう、母さん」
「おはよう、カナメ。今日は絶好の固定日和ね!」
うん、固定日和かどうかはともかく、折角スキルを得られる訳だし、雨降ってるよりかは晴れてる方がいいのは確かだわ。
今日十八歳の誕生日を迎えた俺は己の内に有る【概念】を【固有スキル】として固定してもらうべく神殿へと赴く。
異世界人である祖父ちゃんや祖父ちゃんの血を引く父さんが強力なスキルで固定されてるから俺のスキルがどうなるかかなり楽しみだ。
「父さんは?」
「あの人ならお祖父ちゃんと一緒に工房にいるわよ」
ってことは【創造】中か。
十八年間の生活が基となる固有には色々な種類がある。
祖父ちゃんの固有は【創造:異】ってスキルで[自身の記憶に存在している対象を、魔力を消費することにより最高品質で創造出来る。消費魔力は質量によって上下する]というもの。よく切れる包丁だの、焦げ付きにくいフライパンだのはこの街でも評判の一品だ。何せ最高品質。勿論母さんも使っている。
因みに名前の後ろに付いてる【異】って部分は『異世界の異』って事になっている。そうとしか説明出来んらしい。
父さんの固有は【異世界憧憬】ってスキルで[消費魔力に応じて異世界での身体能力を飛躍的に高めることが出来る]って効果だ。
父さんは、現地人っていうのか?この世界の人、なんだけど半分異世界人みたいなもんだから、問題なく発動できるんだよ。
じゃあどれくらい高める事が出来るのかって話なんだけど、父さんが言うには「五割あれば国滅ぼせる」って物騒な事言ってた。怖い。
二人そろって工房で何を作ってるのやら……。
この間は「浪漫だ!」って言って巨大なドリル作ってたっけ。
「遂にこの日がやってきたのねぇ。カナメはどんなスキルに固定されるのかしら?やっぱり異世界に関係してるスキルかしらね?」
当然ながら母さんは、祖父ちゃんが異世界人、地球という世界の日本人であることを知っている。というよりこの国の人たちは殆どが知っている。
嘘でないことは国に依って然るべき手段できちんと証明されているからだ。
そうでなくてもこの世界に存在しない物をホイホイ創造してるからそうでないと説明出来ないんだけど。
「そうだと嬉しいけどさ。父さんと祖父ちゃんのスキルって固有スキルの中でも群を抜いて希少みたいだし」
祖父ちゃんはそもそも創造系統のスキルって時点で希少。その上で生命以外なら創造出来るし、それでいて最高品質。
父さんは一見地味に見えるかもだけど強化率が文字通りに桁違いだし、反動も無い。さらに消費した魔力はスキル解除後に元通り。
余談ではあるのだが母さんの固有は【水中呼吸】。そのものずばり水中で呼吸が出来るというスキルだ。
「私の固有は微妙よね」
「それ自分で言いますか」
確かに微妙だけども。
「十八年間が基になってるっていうのにどうしてピンポイントでそのスキルになるかな。溺れた事がそんなにトラウマだったの?」
「あの感覚は溺れた事が無いとわからないわよ。死ぬかと思ったってああいう事を言うんだわ」
そりゃそうだ。俺は溺れた事がないからわからない。死ぬかと思ったって事は何回かあるけど。
と、そろそろ行くか。
「じゃ、母さん、行ってくるね」
「いってらっしゃい。報告楽しみにしとくわね」
母さんに見送られ外に出てみると雲一つない晴天だった。実に固定日和。というやつなのだろう。きっと。
さて、いっちょ神殿に行ってきますか。
◆神殿◆
「おはようございます。神官様」
「おはようございます。カナメさん」
担当してくれる神官様は、少し大きめの神官服を着こなすエルフの女性。名前はリアさん。
「じゃ、さっ!とやっちゃいましょうか。さっ!と」
こんな感じの適当味溢れる神官様である。
その内に神様に怒られても知らんぞ。
「えっと、この石に魔力を流せばいいんですよね?」
この石。台座の上に鎮座している人の頭程の大きさの石だ。魔道具の一種で、神殿やギルドに必ずあるもの。名前は……忘れたな。スキル石でいいか。
このスキル石に魔力を流した状態で神官様に固定の魔法を唱えてもらう。そうして固定されたスキルが魔力を通してこの石に記録され、共有される。
で、そのスキル石に魔力を流せば本人の証明が出来るから、各ギルドや、街の出入り口にも本人証明やらの為にスキル石が置いてあるって訳だ。
お、情報出てきたな。
「はい、確認できました。じゃ、固定にはいりますねー」
……お?
おぉっ!?
何か不思議な感覚だな。こう、ギュッ!とされてる感じ。何処が?って訳じゃないんだけど、ギュッ!て感じだ。
固定されてる感あるわ。
「ハイ、終わりましたー。これでステータスに【固有】が表示されているハズなので、早速確認と参りましょうか」
あ。もう終わりですか?そうですか。
「では、確認。」
俺はそう唱えて固有の確認をする。
そこにはこう表示されていた。
【固有】
[コピーキャット:異]Lv.1
タイプ:サポート
最大魔力の5割を消費することで使用可能。使用中に見た固有、汎用スキルをコピーすることが出来る。
コピーキャット使用中に限りコピーしたスキルを使う事が出来るが、オリジナルスキルより多くの魔力を必要とする。
コピー出来る数に制限は無く、何度でも使用可能。
スキル解除をすると消費していた5割分の魔力は元に戻る。
「「ん?」」