1
俺は捨てられた。
なんと、その年齢わずか七歳。
この町ではそう珍しくなく、自分が捨てられたことが分かるぐらいは賢く聡明だ。
ある意味、生まれてすぐ捨てられなかっただけマシなところだと思う。
この町、ルーシャントはいつどうやって出来たのかも分からないダンジョン《迷宮》を中心に成り立っている。
ダンジョンの話をする前にまずこの世界のことを整理しよう。
この世界は、ある時代から前の文明、文化、歴史などが一切残っていない。
ある時代、1500年前に人類もといい世界の記録はそこで途切れている。
1500年以上前のことは何一つ分かっていなく、どうして文明が途切れたのかも分かっていない。
ただ、この世界には1500年以前も文明が存在し人類が生きていたことは確かなことだった。
なぜ、そんなことが分かっている? そう言われるとルーシャントのダンジョンの話に戻る。
人類が1500年以前の文明があると確信したのは、世界を見たからだった。
1200年前。人類の数が増え土地がたりなくなり住む村、街、国を広げようと一部の人類が世界の探索を始めた。
すると、驚くことがあった。
そう、ダンジョン“ら“だ。
絶対に1200年前の当時から300年前の時では作れるはずもなく歴史にも残っていない。
1200年前そして今でも再現出来ない建物や摩訶不思議な扉、読めない文字の本が詰まった書庫、色が抜け落ちたような白一色の神殿。
人類が創り上げたとは思えないものだらけだった。
今でも分かっていないことはたくさんあるが昔よりも分かっているものがある。
摩訶不思議な扉はダンジョンの入り口、読めない文字は古代文字、古代文字で書かれた本を古代本ということを。
1500年以前の“古代“と呼ばれている時代に何があって、どうして文明が途切れたのかは誰も分かっていない。
ただ、その答えの鍵がダンジョンや今でも何一つ分かっていない白一色の神殿、古代文字で書かれた古代本に隠されていると人類は考えている。
だけど、神殿や古代本の研究は何ひとつ進展がない。
神殿は白いという以外ほとんど分かっていないし、古代本については未知の言葉なので読み解く方法がないのである。
そこで、ダンジョンだ。
ダンジョンのことについてはだいぶ分かってきている。
ダンジョンは、古代に創られたと考えられる大きな扉のことだ。
ダンジョンの中には“魔物“と呼ばれる人間でもなく動物でもないものが存在している。
そして、扉の先に行くと、初めは暗い洞窟のようなところにでる。
初めという言葉通りにダンジョンには緑で埋め尽くされた森や一面真っ白の海のない砂浜、マグマが支配している火山、あたり一面氷の場所など様々な姿がある。
その様々な姿が変わるごとに人類は一階層、二階層と呼んだ。
ダンジョンの姿は、その階層の一番奥にある天使が持った水晶で区別される。
その水晶に触ると次の階層にいけ、一階層の水晶だけがダンジョンから出れる。
ダンジョンは一度足を踏み入れると一階層を“攻略“しないとダンジョンから出られない。
一定の階層に行くのは一階層の水晶から古代の魔法で移動が可能だが、ダンジョンから出るには一階層の天使が持った水晶ではないといけない。
そのため、ダンジョンに潜って帰ってこないのは日常茶飯事である。
だけど、わざわざそんなダンジョンに潜るのはダンジョンにしかいない魔物から取れる資源やダンジョン内の鉱石、宝物が高く売れるからである。
そうなると一攫千金を狙った腕っぷしにだけは自信がある強い人間が自然と集まってくる。
その腕っぷし達が稼いだ金を狙って酒場やギャンブル、娼館が集まる。
そうして、自然とダンジョンの街ルーシャントができた。
だけど、腕に自信がある人が集まるとよくないことが起きやすい。
そうしてダンジョンの街ルーシャントは別名、犯罪者の街とも呼ばれるようになった。
そして、俺はクズな親に捨てられた。
わずか七歳で。
俺みたいな奴はこの街にたくさん、溢れるほどいる。
そして、ほとんどが成人となる16まで生きれずに死んでいる。
ダンジョンで。ルーシャントで。
幸運なことにダンジョンに入るのは年齢制限などない。
俺は生きる意味も意義もないけど、とにかく生きたい。
だから、俺はそこらじゅうにある武器屋の使いやすそうな短剣一本を盗み、そして少しの水が入った水筒を両手に抱えながらダンジョンの扉をあけて、未知の場所に飛び込んだ。




