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亡き皇帝のためのパヴァーヌ  作者: 五十鈴 りく
第1部✤亡き皇帝のためのパヴァーヌ✤

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21/49

21◆面会を

 ブランシュがバルテスを急かして帝都へ到着した頃、すでに判決は出ていたのだ。


「将軍位を剥奪の上、極刑……」


 帝都はその話で持ちきりだった。立ち寄った食堂でそれを耳にしたバルテスが青ざめ、卒倒しかけた。ブランシュはとっさに彼を支え、椅子に座らせる。


「わたしたちがここへ来たのはなんのためですか? ノア様に諦めないでいてほしいからです。わたしたちが諦めては駄目ですよ」


 田舎で暮らしていたブランシュが、騒がしい都に臆することなく振舞えたのは、喧騒が耳に入らなかったからだ。この時は本当にノアのことしか頭になかった。


「ですが、一体どうすればよいのか……」


 目頭を押さえて弱々しくかぶりを振るバルテスの背をブランシュは何度も摩った。


「とにかく、ノア様に会いましょう!」


 口調を強くすれば願いが叶うということでもないが、そうしていないとブランシュの方がへこたれそうだった。

 本当に、力を抜くと足元からくずおれそうになる。


 もしノアが死んでしまったら、心に穴が空いてしまう。その言い方も適切ではなくて、心そのものが死んでしまうような――。

 だから、まだどうしても諦めることはしたくない。


 失意のバルテスを励ましながらブランシュは伝手を探す。


「拘留されているのなら、面会を申し出るしかありません。ただ、通るかどうか……」

「軍の施設ですよね? それって王宮のそばですか?」

「ええ。歩いてでは遠いので辻馬車を使いましょう」




 軍部施設は犯罪者を収容している監獄も兼ねている。そして、その前の広場が処刑場なのだと知ってゾッとした。

 ノアの判決が出た際に撒かれたらしき号外の切れ端が、まだ残って壁に引っかかっている。


 武骨な灰色の建物を前に、ブランシュはバルテスと共に立ち尽くし、それから思いきって踏み込んだ。

 ざわざわと騒がしい内部は、まったくと言っていいほど女っけがなく、ブランシュはひどく場違いだった。手続きのために前に進む。

 そこでバルテスが受付に申し出た。


「私はノア・オルグ様のお屋敷の家令のバルテスと申します。主に面会を願いたく参りました」


 それを聞くと、職員らしき青年は視線をさまよわせた。


「少々お待ちください」


 裏の方でボソボソと話している。そして、そのうちの一人が奥へと消えた。

 かなり長く待たされたような気がしたけれど、本当はそう長くなかったのかもしれない。


 戻ってきた職員は沈痛な面持ちで告げた。


「残念ですが、オルグ様は誰にもお会いにならないとのことでした」

「えっ?」


 ブランシュは声を上げて職員に詰め寄った。


「ご本人がそう仰ったのですか? それとも、会わせてはいけないという命令ですかっ?」

「ご、ご本人が仰った通りにお伝えしました」


 嘘だと言いたかった。

 けれど、言えなかった。

 多分、嘘ではないから。


 死を覚悟したノアはもう、誰にも会いたくないのだ。


「……すみません、もう一度お願いします」


 ブランシュが頼み込むと、職員はかぶりを振った。


「何度も確認したのですが、ご本人にそのご意思がないようでした」

「そんな……」


 絶望に打ちひしがれるブランシュに、職員の方が居たたまれなくなったのかもしれない。


「あの、余計なことかもしれませんが、早くここを離れた方がよいかと思います」

「どうしてですか?」

「その、刑が執行される日が近いからです。その様子は公開されます。ですから、近親者の方にはとても耐えられたものではないかと……」


 ペタン、とブランシュはその場にへたり込んだ。

 足の力が一気に抜けてしまったのだ。


 この世にはなんの救いも用意されていないのだな、と。


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