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俺が彼女に告る理由  作者: 本間 甲介
その理由の裏側
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35/39

その理由の始まり

 その日はとても特別で、大事なものがいっぱいできた一日だった。


 暖かい日差しを体全身に受け、僕はこれから三年間お世話になる学び舎へと向かっていた。

「少し、遅くなっちゃったな」

 昨日興奮してなかなか寝つけなかったこともあり、僕は家を出るのが少し遅くなってしまった。

「仲間夏彦です。趣味はスポーツ観戦・映画鑑賞・ゲームです……」

 何事も最初が肝心だ。僕は自己紹介のシミュレートをしながら、少し足早に歩き出す。

 そうして歩く内に、学校が見えてきた。時間を確認すると、まだ余裕があった。

 ここからはペースを落とそう。僕は焦らずゆっくりと交差点を渡った。


「うおおおおおっ!」


 その途中、僕の背後から絶叫が聞こえてきた。瞬時に僕は振り返る。するとそこには、自転車に絡まり倒れた男子と、尻もちついた女子がいた。

「――大丈夫ですか!」

 すでに半分以上渡り、赤に変わろうとしていた。僕はダッシュで交差点を戻った。

「あ……あ……!」

 彼女は動揺して、ガクガクと体を震わせた。

「だ、大丈夫ですか!」

 しかし怪我は無さそうだったので、僕は彼の方を心配した。

「あ、ああへいきへいき……!」

 彼はなんとか応えるものの、その声はか細く、今すぐにでも気を失いそうだった。

「し、しっかりしてください!」

 彼女はようやく口を開き、ペシペシと彼の頬を叩き始めた。

「だ、ダメだよそんなことしちゃ!」

 錯乱状態に陥っている彼女を見るうちに、僕も何をすればいいのか分からなくなった。


「死ぬな! しっかり!」


 その叫びに、僕の意識は正常に戻った。

「一将、一将!」

 ショートカットの女子は、必死に彼を呼びかける。

「…………」

「ねえそこの!」

「は、はい!」

 急に声をかけられる。彼女は自転車を指差した。

「外して! 急いで!」

「え、でも……」

「このままにしとくわけにもいかないでしょ。大丈夫、救急車はもう呼んだから」

「――分かったよ」

 すでに彼の意識は無さそうだ。僕は覚悟を決め、自転車のホイールに絡まった彼の足を、外すことにした。

「ありがとう!」

 見た目に反し、すぐに取り外すことができた。僕はほっと息をついた。

 それからすぐにサイレンを鳴らした救急車がやって来た。

「あたしとこの娘も一緒に行きます!」

 彼女はおどおどしている女の子の手を掴み、懇願した。救急隊員はその願いを受け入れ、二人を救急車に乗せた。

「あたしは小坂優希。あなたは?」

 発車直前、彼女は自分の名前を口にし、僕に訊く。

「あ、仲間夏彦……」

「夏彦くん、ありがとね! また学校で会いましょう!」

 すべてを無かったことにするような、まぶしい笑顔だった。車は発車し、僕一人が残される。

「……同じクラスになれますように」

 僕は彼、皆見一将の怪我のことを忘れ、それだけを願った。


 そして、その願いは叶うことになった。  

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