10.そうね、ならば肉も足りないわ
他の備品庫から見つかったバスタオルやバスローブ等を抱えて私達がリビングにもどると元気な3人がバーカウンターに集まり、散らかしていた。
「何やってんの?」
「隣の台所に食材が色々置いてあったから何か作ろうと思ってさ」
羽黒の問いに神倉が答える。
「料理出来るの?」
「お粥なら鍋に入れて煮るだけだろう、多分何とかなるよ」
確かゲーム内でも料理イベントがあった気がする。ただし、もっぱら料理をするのは主人公だけで他のメンバーは食べるだけなのだが、ゲームと同じようにやはりこのメンバーはあまり料理が出来ないらしい。その証拠にぞろぞろ材料を出しているが誰も何もしようとしない。何から始めて良いか分からないのだろう。
実家暮らしの高校生なんてそんなものだ、私も学校の実習でしか料理をしたことがない。
「お粥って何が入ってる?」
カウンターの上に置いてあった人参をいじりながら東大が聞く。神倉、一乗、羽黒が順番に答える。
「ご飯」
「ノリ…?」
「お茶」
「それじゃ、お茶漬けじゃないの」
私は持ってきた荷物をソファーの一つに置くとその中から着替えになるような物を取りだし神倉に声を掛けた。
「制服も半乾きだし彼女を着替えさせた方が良いわ。手伝って頂戴」
「私と…貴方で?」
神倉がすいと目を細める、あまり好意的ではない視線だ。
「男子に手伝わせる訳には行かないでしょう」
「お粥はどうすんの?」
私と神倉の間にある微妙な空気を気にもせずに羽黒が声を掛けた。
「みんな料理出来ないなら誰が作っても同じよ。お米煮て塩でも降れば食べられないことは無いでしょう」
私の言葉に男子が一斉に顔をしかめた。容易に味が想像できるそれは育ち盛りの男子には物足りないものだろう。
「分かった、なら私が未輪を着替えさせて来るから繕林さんは食事の用意をしてくれないか」
「一人でするの?」
「別に未輪を着替えさせるぐらい私一人で十分だ」
どうやら神倉は大神未輪を私に触れさせる事に抵抗があるようだ。別に私が何かを彼女にする気はないが、神倉にとって私は大神未輪をいじめている主犯のようなものなので、警戒するのは当然かもしれない。
「分かった。着替えはお風呂場ですれば良いと思うわ」
私は手に持っていた着替えを神倉に渡しながら言った。
「お風呂場?」
「コインランドリーが隣にあるのよ、電気が来てるから乾燥機ぐらいは使えるでしょう」
私はカウンターの前に立ち、そこに置かれた食材に目をやる。そのまま姿勢で左右に立つ羽黒、と一乗に「ここに足りないものは何だと思う?」と問い掛けた。
ジャガイモ、人参、玉ねぎ、お米…
「カレールゥ」
羽黒が即答する。
「お粥を作るんじゃなかったの…?」
「そうね、ならば肉も足りないわ」
「…」
男子生徒Aこと一乗は口を開けたまま私と羽黒の間で視線をうろうろと漂わせ、何も言わずその口を閉じた。どうも私はこの小動物のような男子に怯えられているような気がする。
一乗御影
一見小学生と見紛う様な容姿の男の子。怖がりで人見知り気味。誰に対しても一線引いた態度をとるが主人公には好意的。
要するにおねショタ要員な訳である。そもそも同級生なのだからおねもショタも無いのだが、外見さえそれっぽければ良いのだろう。何処かの誰かも人間見た目が9割と公言している訳であるし。
因みに大神未輪の誕生日は4月末なので、確かに彼女の方が年上ではある、他の全員にも当てはまるが。ついでにいえば私は3月の半ばが誕生日なので作中一番年下なのである。
どうでも良い話だった。
「取りあえず、何か他に材料になる物が無いか探しましょう。台所はこっちの扉だったわね。」
私は廊下とは反対のドアを開けて固定する。開け放っておけば東大も、戻ってきた時に私達がどこにいるか分かりやすいだろう。何故今東大が居ないのかというと大神未輪をお風呂場まで運ぶのに駆り出されたからだ。運び終わればすぐに追い出されるだろうからもうじき戻ってくるはずだ。




