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10 一通の手紙

手紙には、こんな内容が書かれていた。


[占い部屋の鍵は預かった。返して欲しければ明日の午前十時に、一人で屋敷まで来い。話がしたい]


「……行かねーよこの野郎!!」


読み終わった瞬間、美羅はすぐさま手紙をくしゃくしゃにして、


「何で私が行かなくちゃ い・け・な・い・のっ!!」


丸めた手紙を思い切り壁に投げつける。

美羅は大きなため息をつき、両手で頭を抱えた。


(明日は休みなのに……、家でごろごろしたいのに…… )


美羅の明日の予定が大きく狂ってしまった。

とは言っても、家でのんびりするだけなのだが。

そして美羅は何を思いついたのか手紙を拾い上げて丁寧にしわを伸ばし、勉強机に手紙を置き、その上に重い本をのせて、


「……手芸の材料に使えるかも……」


と、かなりどうでもいいことを思いついたのであった。


***


さて、話を戻そうか。


しばらくして落ち着いた後、美羅はベッドの上でごろごろしながらもう一度、手紙を読み返す。


「……絶対行きたくないなぁ」


行ったら最後、何をされるか分からない。

だが、占い部屋の鍵が回収できないと活動が出来なくなる。

そして明日行かなかった場合、さらに悪い条件を追加されそうな気がする。

その上、彼は学校にあまり来ないため学校で捕まえるのは難しい。

あと別の意味で彼と学校で話すのは不可能になるだろう。

なぜなら、久ファンの人達がいるからだ。

きっと近づくことさえできないだろう。

万が一、話せたとしても、その後が怖すぎる……。

ねえ、ちょっと話があるんだけど、とか言われてどこかに連れて行かれるのだろうか……。

あまり行きたくはないが、明日行った方がましに思えてきた。


「でもやっぱり行きたくないな……」


どうしよう、と考えていると、ふとある事に気がついた。


「この手紙の内容からすると、誰かが一人で取りに行けばいいんだよね? それなら……」


しばらく何か一人でブツブツ呟いたあとベッドの上で立ち上がり、


「オーホッホッホッ!! 今に見てなさい!! こっちにも策があるんだから……」


浮かべた笑みが、凶悪犯の面構えになっているのは気のせいだろうか。

というか完全に人格が崩壊している。

もはや誰にも止めることは出来ないだろう。

そうして美羅は自分の部屋から出たのであった。


***


美羅は隣の部屋に向かうと、やはり目的の人物がいた。


「ねえねえ。お兄ちゃん、今暇?」


「おう美羅、どうした?」


「あのね、ちょっと相談があるんだけど」


そう言って美羅は何の説明も無く、さっきの手紙を見せる。

手紙を読み終えると俊治は、


「美羅……これ、脅迫状か?」


真剣な表情でこちらを見つめる。

事情を知らない人からすれば、確かにそう思うだろう。

俊治の反応が面白いので、とりあえず怯えた表情で、


「うん……。私、どうしたらいいか分からなくて……」


「マジか……お前どうするつもりだよ」


「私の代わりにお兄ちゃんに行って来て欲しいの……」


「えっ!? 何、俺が行くの!? そいつをボコボコにして来いと? まあ、俺結構鍛えてるから、出来なくは無いけどな……」


兄が乗り気になって来たところで、美羅は詳しい事情を説明することにした。


***


「そういうことか……」


俊治は納得し、しばらくの間沈黙が続いた。

そして彼は今まで誰にも打ち明けたことのない、予想外の秘密を美羅に明かした。


「俺、実はな……透明人間になれるんだよ」


「えっ急にどうしたのお兄ちゃん? 病院行く? 精神科は確か、あそこに……」


美羅は本気で彼の心配をする。

兄は普段あまり冗談を言うタイプではなかったので、なおさら不安になる。


「嘘じゃないんだ、本当だ!! ほら、見ろ!!」


そういうと、突然目の前で姿が消えてしまった!!

そしてまた同じ場所にすぐに俊治は現れた。


「……知らなかったよ」


「だろうな。誰にも言って無かったからな。それだけじゃなくてな、物も人も見えなくすることが出来るみたいだ」


そう言って俊治は近くにあった本に視線を向け、心の中で(消えろ)と念じると、本を消した。

もちろん戻すことも出来る。


「いいな~それ!! お兄ちゃんて今まであんまり取り柄が無いと思っていたから……」


「おいおい!! 今なんて言った?」


「お兄ちゃんすごいよ!! (いろいろ使えそうで)」


「そうだろ?」


「うん!! 協力してくれたら安全に鍵を取り戻せるかも……」


「まあ、俺、明日暇だから付きあっても構わないが」


「本当? やった!! ありがとうお兄ちゃん! 後でお兄ちゃんが前から欲しがっていたフィギア、買ってくるよ!!」


「えええ!! 何でお前知ってるんだ!?」


「まあ……(透視で視たからだけど)」


こうして美羅は心強い助っ人と共に明日の作戦を練るのであった。




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