76 シスコンの業
「さて、そろそろ夕方か」
ゲーム世界でも陽が暮れてきた。そろそろ夕食の時間だ。
パーティを解散させようとした時、パーティ情報に妙にテカテカと光る項目があることに気付いた。
「拾得レアアイテム?」
「あ、なにか出てたんだね、にーちゃ」
確か、レアアイテムだけは自動分配されずに、その場にドロップするとライムが言っていたはずだが……
どうやらドロップしたレアアイテムに気付かずに放置すると、パーティ項目にスタックされるようになっているらしい。
ちなみに、パーティから抜けようとすると、
〔パーティスタックに○○があります。このまま脱退すると、所有権を失いますがよろしいですか?〕
……という警告ダイアログが出て来るらしい。
その気になれば、パーティリーダーがメンバー全員を強制脱退して独占することも可能なようだが……
まぁ、そんなことをしたら掲示板で晒されるか、悪質プレイヤーとして運営に通報されるかだろう。
フレンド間だったら、二度と顔合わせ出来なくなるだろうな……。
また妙なところに爆弾をしこんでおくものだな、運営も。
とりあえず、そのアイテムを取り出してみる。
【ブルー・ライト・リーフ】:装飾品
:イヤリング型の装飾品
:魔法使用時のMP消費3%減
:INT + 16
「お、おおォ……」
と、アリダリンが呻きを漏らした。
「けっこう凄いの引いたね。にーちゃ」
「そうなのか?」
そこそこ良さそうなアイテムだとは思うが、INT16とMP消費3%減ぐらいじゃ、騒ぐほどのものでもなさそうな気もするんだが……。
「お、おおおォォ……」
「確かに杖とかだったら大したことない能力だけど、アクセサリーだからね。これプラス杖を装備すれば、その杖のワンランク上ぐらいの杖の効果ぐらいはあるよ、にーちゃ」
ワンランク上の武器の性能になって、さらにこのアイテム分はずっと買い替える必要がないわけだし、確かに凄いのかな?
「さらに消費MP軽減のついた武器はマジックダガーぐらいしか、いまのところ見つかってないしね」
……なるほど
「お……おぉぉぉぉぉおお…………」
「かなり使える装備なんだけどドロップするのがたぬ太郎で、さらにドロップ率が低いんだよね。南の森自体もある程度ステータスが上がったら行かなくなっちゃう場所だし、準廃ぐらいの人には垂涎のアイテムだよ、にーちゃ」
「へぇ……」
とはいっても、僕にとっては欲しいものでもないな。
イヤリングとかガラじゃないし、どう見てもこのアクセサリーは女性物にしか見えない。
ま、パーティプレイでの基本。まずは希望者を訊くか。
「じゃ、これ欲しいひ――」
「ハイハイハイハイハイッ!! 欲しいです! 立候補しますっ!!」
――と、全部言い切る前に、食い気味に手を挙げるアイダリン。
あまりの勢いに、少し怯んでしまった。
「りょ、了解。他は?」
「わたしは別に。ヒーラーだからINT上げてもあんまり意味ないし、MPもそんなに気にならない」
「ふっ……その程度の呪具。我が深淵の能力の前には玩具もいいところだ」
セイの言っていることの意味はよく解らんが、とりあえず不要ってことでいいんだろう。ライムも取り立てて欲しいようなものではないみたいだ。
「と、いうことみたいなので、このアイテムはアイダリ――――」
「うっひょおぉぉぉッ!!」
――ンに進呈しようと思ったんだが……
いきなり奇声を上げてどうした? アイダリン。
「本当ですかっ!? 私が貰っちゃって良いんですかっ!?」
「あ、あぁ……別に異論はないよな? みんな」
ライムとセイはこくりとうなづく。
――その瞬間に、アイダリンは目を輝かせて、僕に抱き着いてきた。
「や……ったぁぁぁっ!」
……そんなに嬉しかったのか? これ。
「んもー! ししょー! ししょー!!」
タコのように口を突き出したアイダリンが、僕の頬にキスをしようとしては、出て来るポップアップウインドウに弾かれていた。
「んー、んー、んー!」
「ちょっ! 落ち着け、アイダリン!」
べったりと引っ付いてきたアイダリンを無理やり引き剥がすと、アイダリンの標的はライムに変更された。
今度はライムに飛びつくと、その頬にキスの雨を降らせる。
「ライムさんもありがとうございます! むちゅー!」
アイダリンのキス攻撃は全てポップアップウインドウに弾かれているが、それでも構わずにライムの頬にキスをしようと繰り返すアイダリン――
……あ、妹さんの目が笑ってない。
「セイもありが――」
ガシィッ!!!!
やっと妹さんから離れ、次はセイの下に駆け寄ろうとしていたアイダリンの後頭部が、妹さんの手によって鷲掴みにされた。
――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……――
「ら、ライムさん……?」
「アイダリン、ちょっと向こうでおハナシしよっか?」
ひくりと頬を引きつらせたアイダリン。
それを、妹さんがいずこかへと引き摺ってゆく――。
って言っても、平原だから二人の姿は丸見えなんだが……。
あ、アイダリン。地面の上に正座させられた。
「ちくしょう、あと少しだったのに……あの女め」
この場に残されたのは僕と――それからさっきから何やらブツブツと呟いているセイの二人だけ。
「そりゃ、倫理規定で弾かれるのはわかってるけどさ。ここで大事なのはリン姉がオレにキスしようとしたって事実でさ。それにキスするってことは、顔がすぐ近くまで接近するってことでさ――」
なんだか分からんが、
妹さーん、はやく帰ってきてくれー。
さっきから、僕の隣にいる子が、なんだか怖いんだよー。
「まてよ? ってことは、こいつはさっきリン姉に――」
ギラリ、とセイの眼光が、ナイフのような鋭さで僕を射抜く。
やめてくれよー、僕に飛び火しないでくれよー。
さっき、拳を交えて和解したカンジになってたじゃんー!
「やっぱりお前は……オレの敵だッ!!」
くそっ、このシスコンめ!
やっぱりシスコンには救いがないな!
申し訳ありません、書き溜めが底を突きました……。
仕事も少し忙しくなってきて、これから毎日更新とはいかなくなると思います。
筆者にとって長編を書くのはこの作品が初めてとなるので、具体的にどのくらいのペースで投稿できるのかは未定ですが、出来ればこれからもよろしくお願いします。




