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ツンデレなメインヒロインとヤンデレな幼なじみはお好きですか?  作者: 芳香サクト
第一章『ツンデレな彼女はヤンデレな幼なじみに牙を剥かない…』
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ツンデレVSヤンデレの戦い(中編)

 編集していたら、なんと中編ができてしまいましたので追加します。

 僕が用を済ませ、教室に戻るとまだにぎやかな教室を前にして、二人の熱気は完全に冷めていた。どうやら勝者と敗者が決定したようだ。


「それで?一応聞いておくけどどっちが勝ったことになった?」

「私!」


 理恵の表情には笑顔でVサインを出す。

 一方、敗れた美奈子の表情は落ちぶれた侍のようになっていた。


「ううう……卑怯だよ、いくら何でもあんまりだよ。」

「ふん、負け犬はさっさと消えなさい。」


 完全に勝者と敗者の状態だ。確かに、ものすごく調子乗ってやるぜ。こいつ。


「それで、何で勝負を決めたんだ?」

「「晴馬くんのいいところ」」


 二人が同時に言った。


「は?」


 は?意味わかんない。なんでそのルールにした?っといけない。思っていることがポロっと出てしまったようだ。


「どういうことか、詳しく説明よろしく。」

「えっとね、勝負の内容は今言った通り、『晴馬のいいところ』で相手より魅力的なことを言った人が勝ちという隣に座る人間についてどのくらい知っているのか知識対決をしていたのよ。」


 まあ、知識対決ならどっちが勝っていても間違いなく問題はないだろう。だが、僕が聞きたいのはそこじゃない。


「聞きたいのは、その条件にして圧倒的有利ポジションにいる美奈子が負けているっていう事だよ。」


 そう、僕と一緒にいた期間は美奈子の方が理恵より長い、だから有利なのは美奈子のはずなのに負けているということだ。


「理恵ちゃんが、『私の彼氏』って言ったから心が痛くなって降参した。うう……くそー。」


 何で降参したし、もう少し頑張ればそれに対抗できる武器あっただろ……いや、ないな。

 今更だが、僕は別にどっちが隣になろうと関係ない。だってすでに隣と後ろは確保できているからどっちを選んでも変わらないはずだ。

 なのに、こういうことが起きてしまった。


「その前にあんたが『ボクの幼なじみ』って先手獲ったのが原因でしょ。」


 なんだ、自業自得か、ならしょうがない。


「ぐぬぬ……。」


 美奈子が獣のような眼で僕と理恵を見ていた。


「あきらめろ、今のお前だと理恵なんかに勝てるわけがない。」

「さらっと、私をディスっていくことはやめてくれるかしら?」


 やかましいわ、この自意識過剰女め。


「とりあえず、横が理恵、前が美奈子ってことでいいかな。勝負は決まったことだし。」


 僕は自分の机を動かし始めた。その最中、ぶつぶつとつぶやいている美奈子がいた。


「でも、ボク、納得できないよ。ボクだって晴馬くんの隣がいい!何でダメなの?晴馬くんは理恵ちゃんの隣が良いの?」

「あきらめろ、もともとお前が先手を取ったのが悪い。」

「でも……。」


 お前は駄々をこねる子供か!やれやれ、最終奥義を使いやがったなぁ。こいつ。


「あのな……。」

「そんなの、私が晴馬と付き合っているからに決まっているでしょ!」


 瞬間、今までにぎわっていた教室が理恵の大声で静寂になった。


「おまっ、声でけぇよ。」


 あ、やべ……と僕は思った。しかし、時すでに遅し、こうなった理恵は誰にも止められないことはよく知っている。


「そんなの……そんなのは、見せかけの恋愛だよ!晴馬くんは本当に理恵ちゃんの事が好きなの?」


 やれやれ、何でこういう時だけ僕に振るのかなぁ。こういう時に慣れていないのはボッチが原因なのは重々分かっているはずだと思っていたけど。

 周囲がざわ…ざわ…し始めたがお構い無しに進めていく二人。


「当たり前よ、晴馬が好きなのは私。ただ一人よ。私以外の女の子にはデレデレとかしないよね?ねえ!」


 僕に回答権はないのですかね、それとまた僕に振るのはやめてくれませんかね。


「アーハイハイソーデスネ。」


 僕がはたから見てもわかるような棒読みで返答をすると見かねた先生が「コホン」と大きな咳払いをした。全員の視線が僕たちから担任に移り変わる。


「なら、今から決めようか、石倉の隣に相応しいのが釘瀬か白井か。」


 は?何を言っている?この先生、ついに頭吹っ切れたか?

 先生はほくほく顔で言う。


「勝った方には先生がケーキを奢る。そして釘瀬と白井には勝者の特賞として石倉の隣という権限を与える。ただし、石倉はどちらにも手出しはできない。どや?これでええやろ?」

「ええ、これでけりをつけるから覚悟しなさい!」

「ボクだってずっとやられっぱなしじゃない!当然、負けないよ。」


 おお、盛り上がっているな……って僕は何もできないって!?ええーそりゃあり得ないっすわー。


「それで、勝負はどうやって決めるのですか?」


 クラスの中から声がする。そういえば、勝負の内容を教えてもらってないな。正直、僕が参加できないと分かった途端、どうでも良くなってしまったのは事実だが……。


「勝負の内容は『ドッヂボール』や。それもただのドッヂボールじゃない。『校内を舞台にしたドッヂボール』や。チームは二チーム、釘瀬チームと白井チーム。勝敗は互いのチームの全滅。そしてここからが重要なポイント。」


 全員がゴクリとつばを飲み込む。

 良い子のみんなは、ゴクリとかいう唾を一気に飲みこんじゃだめだからね。

 先生は青いカードを三枚ずつ、計六枚を僕たちに見せた。


「これは『コンティニューカード』と言って、一回だけ当たったやつの復活ができるというカードや。誰に使うかは釘瀬と白井に任せる。チーム分けは石倉を除いて……えっと、クラスメイトが二十九名だが石倉を除いて二十八名、じゃあ、十四名ずつに分かれてもらう。チーム分けについては当日のくじ引きで決定する。んで、勝ったほうには負けたほうにこれから一週間命令を下せる。もちろん、先生のケーキ付きでな。どうや?やる気が出てきただろ?」


 先生の一言でクラス内が「うぉぉぉぉぉー」と歓声に包まれた。

 いや、盛り上がるのは大いに結構なのだけどそこに僕が入ってこられないのが残念極まりない。でも、入っても何もできないし意味ないか。そして一ついいですか?一人のための席に全員が協力するとかアホじゃね?このクラス。


「それじゃ、今日は金曜日だから明日の朝八時に学校集合で、ほな、解散。」


 先生はそう言って教室内から出て行った。

 さあ、大変なことになったぞ。

 僕は追いかけるようにして夢野先生に話しかける。


「あの、先生。」

「ん、どないしたんや?石倉。」

「もしかして、こうなることを予想していたのですか?」


 僕が言うと先生は出席簿で自分の頭をコツコツと叩き、関西弁の口調から教師としての口調に変わった。


「私がお前らの関係に気付いていないとでも思っていたのか?あんな見え見えのことまで行って。」


 デスヨネー。アレだけ目立つようなことをやっていたらさすがに教師もわかってしまうか。


「先生、僕は二人にできるだけ穏便に。と言いました。なので今回の件は大ごとにならないようにしてほしいです。」


 それが僕の願い。二人に傷ついてほしくないからだ。


「分かったよ。お前の意見も一応取り入れておく。どうなるかは知らないがな。」

「お願いします。」


 僕はそれだけ言うと教室へもどり、一人、賑わっている教室を背に自宅へと帰った。美奈子と理恵に声をかけたが「勝負の最中だから」と言って僕と一緒に帰ることはなく、別々に家に帰っていった。

 しっかし、一人で帰るのはいつぶりだろうか……。


「………ということがあった。僕はどうすればいい?」


 帰宅して早々、「お帰り、お兄ちゃん」と出迎えてくれた優実が次に発した言葉は「なんかあったの?」だった。やれやれ、本当に僕は妹にすべてを読まれているようだ。しぶしぶ、僕は今日あった事を優実に説明した。


「まず、先に聞くことがある。お兄ちゃんはどうしたいの?」


 すべての話を聞いた優実が僕に聞いた。


「そうだな、どっちも勝ってほしいけど、負けてほしくない。」


 我ながら言ったが、矛盾している。これは勝負なのだからどちらかが勝てば一方は負けになるのだ。


「うん、あたしもこれが原因で喧嘩とかなったら嫌だもん。」


 優実も同じ意見なようだ、しかし、状況は変わらない。


「でも、お兄ちゃん。どうやってこの勝負の決着をつけるの?」


 結局、そこが敵になる。今までの僕なら間違いなく敵の大将、つまりは美奈子と理恵の二人を倒すという選択肢が生まれる。しかし、今回の僕は一切の手出しができない。恐らく監視か何かがついているだろう。やれやれ、どうしたものか。


「お兄ちゃん、こういう状況ってよくネトゲで見るけど、もしかして作戦とか考えてないで衝動的に言った的な?」

「うるせぇ、分かりきっていること言うなよ。」


 僕は頭を抱えて、考える。

 どうする?監視がある以上、僕は二人を同時に倒すなんてことはできない。相手の力を利用するとしても、二人は性格上、そういう手には通用しない。どうする?考えろ、考えるんだ。石倉晴馬。今までお前はやってきただろう。どうやって乗り切った?思いだせ。


「ねぇ、お兄ちゃん。」

「優実、考え事をしているから静かにしていて。」

「分かったけど、一言だけいいかな。」

「どうぞ。」


 優実は僕からの了承を受けると口を開く。


「気づいてないから言うけど、この勝負って意味ないと思う。」

「?」


 どういう……ことだ?


「よく考えてよ、お兄ちゃん。お兄ちゃんが戦いとか勝負とかそういうジャンルで勝った経験ある?」

「ない。あったとしても引き分け程度だ。」

「でしょ?断言しようか。『今回もお兄ちゃんの思う通りにはならない。』」

「……その通りかもな。」


 僕は軽くうなだれるように言った。それを見て優実が呆れるように言う。


「だぁかぁらぁ!お兄ちゃん、あたしにいつも言っているでしょ?『視点を変えろ』って。一ができないならゼロから始めればいい。っていつも言っているじゃん。そのまま返して言うよ。人に偉そうに言う前に自分ができていないじゃん!あたしならこう考えるね。『一ができないならゼロをクリアすればいい。』って。」


 一ができないならゼロを……クリアできないならクリアの現況をクリアする。

 ああ、そういうことか、やれやれ、うちの妹は天才だな。


「………なる。理解できた。」

「でしょ?よく考えれば、簡単な話だったでしょ?」

「ああ、確かにお前の言う通りかもしれないな。」

「さて、お兄ちゃん。実行するのは決まったとして、具体的にはどうするの?」


 もしかすると、ここまで考えるように優実自身が誘導してくれていたのかもしれない。もし、本当にそうなら……優実、お前は僕より戦術を立てやすいのかもしれない。


「大丈夫、今、考えた。うん、それで行こう。ただ、デメリットがたくさんあるから実行できるのは最後ってことくらいだね。」

「やれやれ、お兄ちゃんも頭を使おうね。」


 優実が僕に向けて言った。

 全く持ってその通りである。

 そして、優実は続けて言う。


「でも、最悪なのは勝負の最後、美奈子ちゃんと理恵さんの二人がお兄ちゃんに構わなくなる。これがあるね。」

「ああ、だが、穏便に済ますならこの作戦が一番だ。やってやるよ、僕の培ってきたボッチ技術を使ってお前たちのけんかを止める。フラグなんて起こさせてたまるか!僕はやるぞぉ!」

「お兄ちゃん。それ死亡フラグ……。」

「なんとっ!?」


 見ていろよな。僕は地雷を踏み過ぎたお前たち二人を絶対に許しはしない。

 僕はそう思って天を仰いだ。


「あ……ここ室内だわ。」


 そして、当日へと物語は続くのであった。

 決戦前夜…

 評価、感想などお待ちしております。

 ※誤字報告がございましたので適用させていただきました。ありがとうございました。


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