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ツンデレなメインヒロインとヤンデレな幼なじみはお好きですか?  作者: 芳香サクト
第一章『ツンデレな彼女はヤンデレな幼なじみに牙を剥かない…』
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ツンデレVSヤンデレの戦い(前編)

 美吉野高等学校に入学してから今日で一週間が経過した。

 僕の思い出としては約一週間前に雨が降ったり、銭湯とか行かなかったりのことや、キャミソールの話が一番なのだが、基本、面白くもない、ましてや発生すらしていないそういうイベントは翌週になれば大体の奴は忘れるものなのだ。そう、この僕だって一週間のことを聞かれたら『え?そんなのあったかなぁ?』と言い切れる自信がある。それは絶対だ。

 そもそも、そんなことを聞いてくる物好きな奴なんていないと思うけどな。ほかには特に何もない。ただ、クラス内に友人を作ろうとしない僕とは非対称で先生とかに悪目立ちをしている人がいるとかいないとか。


 それにしてもあちぃな、昨日、約一週間ぶりに雨降ったのに、その雨が通り雨で今日はほとんどのところで晴天とか聞いたことないぞ。

 ちなみに、今朝、親父からの電報で来月にロシアに行くことが決定している。親父、母さん、ジャーナリストとしての半面、世界一周旅行とかやっているのではないでしょうね?


「おはよー、晴馬くん、先週と昨日は大変だったね。」

「え?そんなのあったかなぁ?」


 訂正、物好きな奴もいたし、それを言わせるやつもいた。やれやれ、朝から疲れる。


「冗談だ。雨のことか?ああ、まぁそうだな。」

「またまたー、そうやってとぼけちゃってー。ホントは、ボクの濡れ姿が見たかっただけじゃないの?」

「そんなことはない。断じてだ。それに、僕はそんなことを見るためにわざわざ、外に出たりしない。」

「ちぇー、ところでどう?この学校に入学して約一週間が経過したけど。」

「全員が悪い人間じゃないことが分かった。それに、恐ろしくぬるい学校だ。」

「そっかー、ま、でも、あそこよりは楽しいと思うよ。ボクや、理恵ちゃんや晴馬くんにとっても。」

「どうだか、僕は二度とあんな奴らをクラスメイトとは呼ばないけどな。」


 美奈子は僕の中学のことを思い出したのだろうか、胸に手を当てて言う。


「これでも、あの時、ボクは反省しているのだよ。晴馬くんを一人にしたことを。」

「今更、謝られていてもどうしようもないさ、もう、過ぎたことだ。」

「でもっ、あの時、ボクをかばったりしなければ……。」

「美奈子っ!」

「ヒィッ……。」

「それ以上はいうな。理恵に聞こえる。」

「……うん。ごめんなさい。」


 頼むから、それ以上言わないでくれ。現在進行形で僕だって抑えているのはしんどいのだから。

 僕に何を言っても無駄と判断したのか美奈子は話題を変えようと僕に話しかけた。


「晴馬くん、理恵ちゃんならもうじき来ると思うよ。」


 美奈子はわざとらしく言った。僕は特に関係ないとでも言えるような表情をする。

 だが、正直気分を変えることができてありがたいと思っている。

 それにしても、濡れ姿を見ても何も変わらないと思うけど……ましてや美奈子だしな、ときめくことなんかあり得ない。うん、そうだと思うね。


「はいよ、それじゃ、少し待って来たら行こうぜ。」

「うん。」


 そんな会話があったとは露知らず、理恵はというと……。


「理恵―、そろそろ晴馬くんたちがいつもの場所で待っていると思うわよ。早くしなよー。」


 着替えに戸惑っていた。


「はーい。全く、この制服着るのにどれだけの準備が必要だと思っているのよ。お母さんってば!よし、できた。」

「理恵、晴馬くんにあったらこの前のお菓子のお礼ちゃんとしときなさいよ。ただでさえ、いつもお世話になっているのだから。それにしても、いい子を婿にとったわね。将来有望な彼氏は持っておいて損はないわよ。うちのお父さんみたいに。」

「まだ婿とかじゃないからね。あ、お菓子のお礼は言っておくよ。」


 私は急いで階段を降り、ドアを開けた。


「行ってきまーす。」

「行ってらっしゃい。」


 母親からの返答をきちんと聞いて私は愛すべき人のもとへと向かった。

 って私のバカ!そんなわけないでしょ!いや、そんなことあるか。



「ごめーん、お待たせ、待った?」


 やっと来た。もう少し遅かったら置いて行くところだった。まあ、それは僕の名義に反するから断じてしないけど。


「大丈夫だ、僕も美奈子も来たばっかりだ。」

「うん、大丈夫だよ。」


 遅れたやつにはこう言っておくと『ああ、良かった。結局、みんなも変わっていないのだな。』的な風に思う。

 ただ、言う方はメチャクチャな嘘を言うことになる。それが正直、心に残って結構つらい。


「よし、理恵も来たことだし、学校行くか。」

「うん。」

「ええ。」


 そしてさりげなく、それでいて、いつものように僕を真ん中にしていく二人であった。

 やれやれこれでいいか。


「ふぃー何とか学校につくことができたな。」


 僕がそう言ったのは理由がある。別に学校に来るのに、何とかという言葉は使わない。だが、周囲にいる男性の目線を気にしていれば別の話になる。

 理恵が完璧美人さんであることは中学校からの付き合いでもわかるし、美奈子も告白されるほどの美人さんということ。つまり、あれだけの美人二人を僕が従えているという状況になる。変に注目されて当然だと思う。

 ちなみに、一週間たったが周囲からの目線は消える気配はない、やれやれ、しょうがない奴らだなぁ。

 僕の発言を読み取ったのか美奈子が軽く笑う。


「アハハ、そうだねー。」

「きゃぁぁぁ!!」

「理恵ちゃん!?」

「あっ……(察し)」


 僕たちはそれぞれ、自分の下駄箱を開けた。美奈子の驚きは理恵の下駄箱にあった。同級生からのラブレターがたくさん入っていて雪崩のようになっていたのだった。それで、理恵は悲鳴を上げていたのであった。


「もう!今年もこれがあるの!?晴馬を彼氏にしたから終わったと思ったのに。」


 理恵よ、僕を彼氏としてもてくれるのはありがたいのだが。

 また、この季節がやってきたかと、不意にそんなことを思った。

 四月に理恵がラブレターをもらうとああ、春が来たな。という風に思うのは僕だけですかね?おそらく、理恵にラブレターを渡したことのある奴ならわかるはずだ。


「まあまあ、ほら。」


 僕は雪崩に埋もれている理恵に手を出して、救う。そして、僕は一枚のラブレターを見る。そこにはこう書かれてあった。


『釘瀬さん、一目見た時から好きになりました。今の彼氏と別れて、俺と付き合ってください。』


 よっし、この手紙、燃やそう。そして、差出人は死ね。うん、別にいいだろ?

 僕は手紙をびりびりと破くと、理恵に聞く。


「えっと……お前、どうする気だ?それ。」

「どうするもこうするもないでしょ?答えは決まっているのだから。」


 そういって、理恵は近くにあったゴミ箱にラブレターの束を一気に捨てた。その時、近くにいた男子高校生たちが一斉にしょんぼりしているのを僕は見逃さなかった。

 ご苦労だった、楽しいエンターテイメントの提供をどうも。とでも言っておくか。と思ったが、こいつらには二度と僕の彼女にラブレターを出すことはないだろう。

 え?なんで断言できるかって?いやだなぁ。あったら理恵に見つかる前に僕が処分するから。


「アハハ、理恵ちゃんはそういう所、思い切りがあるよね。その点、ボクはそこまでそういうものに興味はないし、もじもじしちゃってはっきりと言えないところがあるから。羨ましいな。」


 美奈子が理恵の行動を絶賛している。正直なところホントに僕って幸運かもしない。


「大丈夫だって、美奈子もちゃんと物事を言えているよ。」


 僕は軽くフォローに入っておく。これで、美奈子のほうはOKだろう。

 理恵は手をパンパンと叩くと僕たちに向けて言う。


「さ、行くわよ。朝の面倒ごとは終わったことだし。」


 男子高校生の一途なラブレターを面倒ごとと題して捨てる行為はやめましょう。後、ものすごく、ものすごーく、手馴れている感がすごいのだけれど……中学は知っているが、まさか、小学校の時からそうなのか?

 薄っすら浮かんだそんな考えは誰にも言うことができない。僕はその考えをすぐに消した。その消したタイミングと理恵が僕に聞いてきたタイミングがたまたま一致した。


「晴馬、今日の内容は?」

「うえっ!?」

「どうしたの?そんなに驚くこと?」

「いや、何でもないよ。それで今日の内容ね……。」


 僕は肩にかけたバッグから紙を取り出し、読み上げる。


「えっと、ショートがあって、授業は明日からで、今日は席替えだって。」


 やれやれ、人を召使いのようにしないでくれませんか。ドMじゃあるまいし……と思ったが、理恵のことだ。きっと答えなかったら面倒なことになる事も知っている。

 そして、今、理恵と美奈子の目が変わったことも。ああ、あれはやばい、この目は獲物を捕る眼だ。もちろん、今この状況にいる獲物は僕だ。


「ふーん、席替えねぇ……。」

「席替え…ですか。ふふふ……今日の楽しみが出来ましたね。」


 二人の間にはその場にいた人が目を疑うような火花が散っていた。

 うわぁ……僕、今日一日過ごせるかな、不安になってきた。


 教室につくとすでにたくさんの人がクラスにいた。

 しかし、それぞれに会話はなく机に向かって黙々とケータイをいじっているだけだった。

 まぁ、一週間で交友関係がどうこうなるようなものではないだろう。それと、教室内にいる男子の数が圧倒的に少ないのは多分、理恵玉砕組にうちのクラスも含まれているからだろう。

 僕は理恵と美奈子に軽く言葉を交わして、自分の席に座り、ケータイをいじる。

 そして、しばらくたった後、例えるなら、僕のケータイの充電が100%から90%くらいになったタイミングでガラッと教室のドアが開き、担任の夢野先生が入ってきた。


「あーい、今日は名簿番号になっているこの席の席替えをしてもらいます。席替えはまずは、名簿番号順に希望を取って被ったらじゃんけん。まぁ、基本的に自由と言ったができるだけケンカのないように、それじゃ、始めてくれ。」


 担任がやってきたところでみんなケータイをしまい、回ってきた紙に自分が座りたい席を記入し、後ろの人に回す。

 僕が選んだのは当然、窓際の一番後ろ。あそこはクラスの人数的に一人余る。まさか、堂々と真ん中を開けるわけにはいかないが、すみっこなら問題ないだろう。自己紹介の時も言ったが僕はクラスメイトに友人を作るつもりはない。それには、この唐突に始まった席替えも例外ではない。隣の席になった奴は面倒なことになる。だから、関わりたくないし、関わらせるつもりもない。だから比較的目立たないここを選んだ。

 やれやれ、それにしても、名簿番号順か、自己紹介の時も思ったが、僕の後に控える人って結構な人数いるよね。あーあ、願わくは、クラス内に十人くらい『あ行』の奴がいればいいのに。そうすれば名簿番号遅くて快適だと思うんだけど。


 そして、一週間前の自己紹介だが、もちろん、途中で理恵と美奈子の自己紹介もあったらしいけど、僕が眠ってしまって二人が何を言ったのか僕にはわからない。

 まぁ、今更聞くつもりもないけど。


「それじゃ、希望の席は取ったな。席替えを始めてくれ。」


 先生の一言が一つの戦いを始めた。

 題するなら『桜散る戦い~席替えを添えて~』的な感じだな。まぁ、別にそんなことはどうでもいいが。

 そんなことを考えている僕の前に二つの影が現れる。


「さあ、晴馬くん、覚悟は良いですか?」

「晴馬、逃れられると思っていたら大間違いよ。」


 来た、やれやれ、やっぱりねらい目は僕か……。だが、まあいい、策はいくつか取ってある。


「お前ら、選んだ席はどこなの?」


 僕は冷静に質問をする。まずは、希望がどこか確認するためだ。


「「あそこでしょ?」」


 二人はまるで僕の心が読めて行動しているのか同時に僕の隣の席を指さす。


「フッ、美奈子。やはり、あんたはそこを狙っていたね。」

「理恵ちゃんこそ。でも、あそこを取るのはボクですよ。」


 やれやれ、敵の大将同士が一人の男性を巡って争っている。こういう光景の時に僕はなんていえばいいんだろうか、できるだけビシッと言えるような言葉をかけたいところだ。


「なるたけ、穏便に済ませてね。」


 うん、前言撤回、僕がビシッと言えるような言葉を言えるか。ましてや『僕の為に争わないで』とかそんな臭いセリフが言えるか。自分でキモイって思うわ。


「大丈夫よ、一瞬で決めて見せるわ、そして私が晴馬の隣をゲットするのは私よ!」

「それはどうでしょうか。彼女の座は渡しましたが今回の晴馬くんの隣はボクが取りますよ。」


 ほかのクラスメイトが仲良くワイワイとやっている中、僕は修羅場にいた。

 やれやれ、二人とも目つきがやばいのだけれど。例えるなら、なんか後ろからスタ〇ドみたいなのが出てきそうな感じがする、ジョ〇ョ好きなら伝わるはず。


「さあ、今日こそ決着をつけますよ。どちらが晴馬くんの隣に相応しいか」

「面白い、いいわ、やってあげる。」


 美奈子も理恵もやる気満々だ、僕は二人の熱気に着いて行くことができず、「ちょっと、トイレへ……。」と言って抜け出してきた。


「はぁ……ホントにどうしたものかな。」

「おやおや~?幼気な少年が一人でため息をついとるなぁ~」


 僕の独り言に反応したのは今の時刻が授業終わりなのだろうか。能天気で大阪弁の人が僕の横から現れた。


「どないしてんかな?少年、ほれほれ、お姉さんに話してみぃや?」


 怪しい……メチャクチャ怪しい。関わると面倒なことになることは瞬時に察知することができた。

 そんな、僕の行動がおかしかったのか、先輩は笑った。


「あはは、そう身構ええんでもええがな。可愛い新入生の悩みなんぞ先輩であるこのうちに聞いてみたらすぐに解決できんで。」

「結構です、他人に話せるような内容じゃないですから。」

「なんや、連れないなぁ~。ま、今回は自分で解決できるって自分で言うとるからうちは手を出さへんわ~。でも、これだけは覚えておくとええよ。」


 瞬間、先輩の目が変わった。何だろう、何かを感じ取られているような気分になる。


「君ぃ、このままでいくと近い未来、奈落の底に落ちることになんで。()()()()()()のは本当らしいな。ほな、おおきにな。」


 先輩は言うだけ言って去っていった。


「一体、何が起こった?今のは……。」


 なぜ、僕が感情を捨てたことを知っている?

 僕は一人、先輩の最後の言葉だけがぐるぐると頭の中を駆け巡っていた。

 さて、この先輩、何者なんでしょうか?

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