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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅲ章:黒の皇子は世界を見る。
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Possibility! 皇子の思考は加速する。【前】

ゴールデンウィークの更新は如何いたしましょうかねぇ?

 身体を支配する無駄な緊張感。

女性の住む部屋とか、家に入るのなんてアイシャ姫の時で慣れているだろうに。

ましてや彼女だって一応お貴族のお嬢様なんだし。

そんなオレの心の動揺を当然知らない目の前の女性は、つかつかと自分の部屋へ向かって廊下を歩いている。

勢いで実はとんでもない事になってしまったよ、本当に。

仕方ないといっちゃあ仕方ない。

「トウマじゃないか、何処へ行くんだ?」

 ふいに名前を呼ばれ、そちらを振り向くと先程名前を思い浮かべたアイシャ姫がいた。

医務室で会った時に着ていた真紅の服は、同色の鎧に変わり、手には長い金属棒の先端に斧。

例の斧槍を持っている。

「武器を持つと本当に口調まで変わるんだ・・・。」

 そういう傾向があるとは、今まで多少垣間見てはいたが、まさかこれほどはっきりと変わるとは。

知らない人間が見たら、同一人物かと疑うくらい凛々しい。

「あ、先生の部屋へ参考になる本を借りに・・・。」

 オレの顔を見た後、チラリと一緒にいる女性を見る。

つか、睨む?

「・・・二人きりでか?」

 言うな。

なるべく考えないようにここまで来たんだから。

「本、借りるだけですし。アイシャ姫はこれから訓練ですか?」

 忘れる所だった。

今は二人きりではないのだ。

オレは平民、相手は大貴族。

「うむ。トウマに教えてもらった間合いの取り方に関しての訓練だ。無手になった時も想定してな。」

 思い出したくもない事を・・・しかも、人前で。

というか、無手になったら姫は普段の姫に戻るのだろうか?

ちょっと興味を引かれる。

「皆もまたトウマに教えを乞いたいそうだ。また来てくれないか?」

「・・・考えておきます。」

 何だろうか、オレが男だからかな?

どうもあの女性特有の集団心理?現象?というのが理解出来ないし、馴染めない、慣れない。

うん、無理。

「そ、それとだな・・・。」

 またチラリと廊下の先を待っている先生を見る。

「うん?」

 何をそんなに気にするんだ?

まぁ、確かに美人ではあるが。

「こ、今夜は、そ、その空いているか?」

 今夜?

「特に何があるというわけではないですけれど?」

 毎日、特にこれと言って何かがあるわけではない。

夜はここんとこ出来なかった鍛錬に使って、他は読書して書写するくらいだ。

この作業というべき名のものを予定と呼ぶなら別だが。

「ならば、今夜一緒に夕食はどうだ?」

 夕食の誘いかぁ。

イイモノ食べてるのかなぁ、お貴族様。

ミリィとオリエ、喜ぶかな?

「ミリィとオリエが行きたいと申して、二人も一緒で宜しいのならば参ります。それで宜しいですか?」

 言葉遣いが間違っている気もするが。

まさか、こんな風な展開で社交性(?)の低さを露呈する事になるとは・・・。

「あぁ、わかった。"待っている"。」

 ヲイヲイ。

待っているなどと言われたら、必ず行かなければならないじゃないか。

あれほど、身分の差を考えろと言っているのに。

「いや、あ、ちょっと・・・。」

 うぅむ・・・言うだけ言ったら行っちまいやがんの。

「なんだかな・・・すみません、先生、お待たせして。」

 肩を竦めながら、待っていてくれた先生に礼を述べる。

「いえ、いいのですよ。先程の方は、クロアートの方ですね?仲が良いのですか?」

 仲?

アイシャ姫との?

「う~ん・・・セルブ国のラスロー王子からすると、オレが彼女に執着している様に見え・・・オレとしては・・・。」

「としては?」

「血統書付きのドデカい犬が尻尾振っているようにしか・・・。」

 しかも、大変な美犬で力持ち。

「あら、まぁ。ラスロー王子とも。異文化交流、大いに結構ですよ。」

 あ、そういえばこの人は、こんな感じだった最初から。

この施設の理念だったんだよな。

実際の中身は別としても。

「確かに得られるモノは多そうですよね。」

 クロアートの技も、セルブの技も少しだけ見られたし。

歴史の事も水車の事も。

水車と言えば、オリガさん詳しかったな。

セルブ国は水車が多いのか?

後で聞ける機会があれば、聞いてみよう。

同じ授業なんだしな。

「あの、先生。セルブ王国の方は術使いが多いんですかね?」

 そもそも彼女は何故あの講義を受けていたのだろう?

「どうでしょう?私も自分の出身国以外には余り詳しくないので・・・。」

 あぁ、そうだった。

この人はセイブラム法王国の出身だっけ。

「でも、隣国でしょう?」

「そう言われたらそうなのですけれど、それだったら、貴方のお国もお隣よ?」

 地理的には、ヴァンハイトの北、クロアートの東、セルブの南東だったっけか、セイブラムは。

「お隣の国なのに貴方のような、ヴァンハイト一押しの若者なんて噂聞いた事ありませんよ?」

 うわっ!

非常に際どい。

なんだ?

女の勘をオレに見せつけようと、誰かが画策しているのか?

そんなワケないか。

「一押しではないデス。」

 かろうじてコレだけは言えた。

「そうですか。先程の質問ですが、セルブ王国は各国から優秀な人間を探して引き抜く部隊があると聞きますから。」

 う~んっと唸る先生。

「術使いの人間がいてもおかしくはないとは思いますよ。」

 あの王子がオレに言ったような引き抜き作戦を各国にいる人間に展開しているってワケか。

本気で戦争でも始めなきゃいいがな。

「さぁ、着きましたよ。」

 クスリと笑って、先生はオレの部屋の中へと招き入れた。

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