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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
最終章:黒の皇子は三度生まれる。
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-アルム。-

「これで・・・これで・・・お終いだ。あは、あはは・・・世界はこれであるべき姿になるんだ!」

 広間に響き渡る声。

全く・・・。

「・・・ガキがギャアギャアとうるせぇんだよ・・・。」

 完全に闇の中に沈む前に掴んだ。

魂を、"オレ達"の魂を・・・。

「どうして?!神器で完全に急所を突いたのに!」

「ばぁか、テメェに・・・何が、コイツの・・・"アルム"の何が解んだよ。」

 アルムがどれだけ苦しんだか・・・。

足に力を込めて、立ち上がる。

久し振りだが、大丈夫だ。

「オマエがギャアギャア騒いでる間、どれだけアルムが必死だったか・・・テメェの絶望?復讐?なんだそりゃ。それでもアルムは前ぇ向いてんだよ。歯ァ食いしばってなぁッ!」

 だから、オレはここに居る。

ずっとアルムが心の中で語りかけてくれたから。

だから、"オレは消えずにここにいる。"

ずっとずっとアルムの声は聞こえていた。

憎しみと絶望の嗚咽も。諦めない力強さも。他者への愛情も。

それに比べ、目の前のヤツは・・・。

「ちっせぇんだよ、テメェの器はよォッ!」

 身体から生えるように出ている剣に手をかける。

大丈夫だ。

"コイツ"はオレ達を害さない。

オレのソンザイがそう教える。

「ぐぬぅ・・・あ゛・・・がぁぁーッ!」

 渾身の力籠めて身体から剣を引き抜く。

恐らく、心臓は止まったままだろう。

ドバドバと血が流れ出ているのもわかる。

ヤベェ、ヤベェが・・・。

オレはまだ存在している。

アルムが不安定なオレの名を呼び、存在させ続けてくれたから。

人の本当の死は忘れられた時ってのは、ホントみてぇだ。

「なんなんだ?!なんだんだよ、オマエ!」

「あ゛?」

 自分の思い通りにならねぇ、理解の範疇を越えると、すぐコレだ。

全くガキだな。

「オマエが、一生手に入んねぇもんだよ、オレは・・・。」

 視界が霞む。

ん?

目も片方ヤラレてんのか・・・このままだと・・・。

「オイ、アルム、起きろや。得物は取り戻してやったゼ?あとはあそこのクソガキをブチのめすだけだ。」

 この偶然が重なりまくって出来た奇跡とやらは、そう長くはもたねぇだろう。

でも、逃すわけにはいかない。

どういう仕組みかはわからねぇ、神っていうヤツの仕業ってんなら、粋な事をしてくれんじゃねぇかと、今だけなら信じてやってもいいとさえ思う。

「何時まで寝てんだよ、コイツはオマエの物語じんせいだろ?」

 オレにとってはオマケの物語じんせいだ。

ただの延長戦。

ロスタイムでもいい。

それなりに楽しくはあったけどよ・・・。

知ってたか?

アルムの声どころか、見ているものまで解ってたんだぜ?

辛い事も嬉しい事も全部、オマエと一緒だったんだ。

「だから、これからもずっと一緒だ・・・もう立てねぇってんなら、アルム!オレのソンザイ丸ごと、全部オマエにくれてやらぁ!護るんだろ!大事なモンを!」

 なぁに、悲しむ事はねぇよ。

オレはコレでアルム、本当にオマエと完全に一つになるんだからな。

変な罪悪感とか感じる必要もねぇ、そうすればきっともう二度と身体に変調ガタなんて起きねぇからよ。

手にした剣が一層輝きを増す。

アルムを、剣の主人を守護するように。

あぁ、そうか・・・アルム、オレは何なのか解ったぜ、オレ達の魂がなんなのかをさ。

「なぁ、アルム・・・オレの、"トウマ"ってヤツの人生は、きっと満更じゃなかったゼ。またな、"相棒"。」

 次に、オレ達が会う時はアルム、オマエが"寿命"で死んだ時な?絶対だぞ?

じゃねぇとまた怒鳴ってやっからな?

・・・頼むゼ。

オマエも・・・オレ・・・の生きた・・・証・・・。






「・・・・・・あぁ。絶対だ・・・。」






 誰よりずっと一緒にいたんだ。

これからも・・・。

「オレは・・・同じようにこの世界は間違っていると思う・・・思ってた。」

 何も、何も、もう感じない。

ずっと一緒にいてくれた存在がオレの中に還って逝って。

悲しみも何もかもが麻痺してしまって・・・。

ただ、これだけは言える。

もう充分だ。

これで完璧。

「でも、"無かった"コトなんて出来ないよ。」

 皆、生きているから。

無かった事で終わらせるなんて出来ない。

・・・この罪でさえも。

それを否定してしまったら、オレはもう二度とトウマには逢えないから。

「だから・・・オレはオマエを止める。殺してでも。」

 それがオレの"アルム・ディス・ヴァンハイト"の贖罪みち

この間違った世界の皆に胸を張れるように、大好きな人達へ笑いかけられるように。

「だから・・・今だけでいい。」

 手の中の黒剣が鳴っている・・・いや、告げている。

「そんなのはただの偽善だ!詭弁だ!」

「あぁ、そうだよ?だから何だ?嘘つきでも悪でもいいさ、そんなのとっくに解ってる。それでも、オレはオマエを止める。」

 信じろ、前を向け!

そんな言葉が何処からか聞こえたような気がした。

身体の傷は塞がっている。

何時の間にか目まで見える。

苦しさも全然ない。

心臓から伝わる脈動が、剣先にまで届いている感覚。

オレはまだ戦える、大丈夫。

腰を落とし、目の前の敵に向かって全力で突進した。

ようやく会えた。

そして永遠に別れた。

いや、還っていった。

大切な相棒の物語を完結させる為に。


さぁ、アルムよ、再び立ち向かえ!


・・・タグ通りの真価を発揮した回でした。

というか、この回の為にこの話は始まったんだよね、きっと。

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