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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
最終章:黒の皇子は三度生まれる。
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其は皇子か創り上げた世界。 (アイシャ視点)

「怯むな!我等の身体は盾なり!堅牢なる城壁也!」

 などと叱咤激励したとしても、気力や根性で埋められる差の限界はとうに超えている。

超えているが、諦めるわけにはいかんのだ。

私を信じてついて来てくれる皆の前で、私が諦めるわけにはいかない。

「状況は?!」

「は!現在、敵の第一波は引きました。」

「そんなのは見ればわかる、損害はどうだ?」

「幸いこちらは軽微です。何人かは馬に蹴られましたが、脳震盪程度です。姫のご指導の賜物です。」

「世辞はいい。」

 アルムとの訓練の成果だ。

しかし、守備に一長があっても攻撃に移れないのでは・・・。

現状はどんどんこちらが疲弊してゆくだけ。

「敵の様子はどうだ?」

「再編成中です。どうやら、兵をいくつかに分けて波状攻撃を仕掛けてくる模様。」

 重装兵は長時間戦闘に秀でていないからな。

その弱点を解消すべく日夜の体力作りは欠かさない。

でも、それでも限界はある。

「・・・アルム。」

 どうしても今はここにいないあの人を思い出す、呼んでしまう。

アルムならどうする?

攻めに出るか?それとも・・・。

水に落とした油のようにアルムは、私という水を全部包み込んでしまった。

大丈夫。

私は、アルムの言っている事が、アルムの生き方が間違っていると思えないから。

「敵の波が引いたと同時に前進して少しずつ戦線を上げるぞ!」

 私もアルムに恥じない生き方をするの!

だから、この戦いは負けない。

他国だろうと何だろうと、こんな侵略戦争は認めない。

アルムだってそう言う。

彼は国家間の争いを最後まで回避しようとしていた。

奪いたくもない命すら、自らの手で奪ってまで。

「敵!来ます!」

「大盾構えーッ!」 「構えーッ!」

 私の号令の復唱があちらこちらで聞こえる。

「斧槍起こせぇーッ!」 「起こせーッ!」

 土煙を上げて迫る敵の一陣の影を見ると私も戦列に加わり、鉄仮面の面部分を下ろす。

段々と近づいてくる影と馬の蹄の音・・・が、二方向?

後ろ?!挟撃された?!

「手槍放て!」

 その声と共に我が軍の頭上を槍が飛び越えて、前面の敵軍の進路上に降っていく。

後ろからきた馬群は、槍を携えて私達の集団の迂回して、そのままセルブ軍に突撃していく。

「アイシャ様!アイシャ様!」

 聞いた事のある声だ。

「ここだ!」

 面を上げ、声のする方向に叫ぶ。

「アルム様の侍女のミランダです!援軍に参りました!」

「ミランダさん?!援軍て・・・でも、この軍は?」

 使っているのは双剣じゃなくて槍だし、旗印も緑地に槍に絡み合う双頭の蛇。

「クロアート帝国のアイシャ・エル・クロアートさまですね。私、今は亡き国の樹海王の補佐役、クラムと申します。いにしえの姉弟の盟約に従い、我等"姉であるクロアート姫"を助けに参りました。」

 どういう事だ?

「国は無くとも、名を失おうとも、神器に籠められた誓いは永遠に消える事はないのです。」

 それって・・・英雄の・・・?

「と、ともかく次の陣が来る前に態勢を・・・。」

「あッ!」

 視界にはためく軍旗。

「白地に勝利の杯と五つ星に剣・・・。」

 敵の第二陣に横合いから突撃する騎馬隊。

「あの旗印は・・・ラスロー王子の・・・どうして・・・。」

 これは反乱では?

「わかっているのですよ、アイシャ様。誰の目にも、このいくさは間違っていると。」

「そうか・・・。」

 もっと増えればいいのに・・・戦力の事じゃない。

戦争なんて間違っているという人間が、アルムのように他者の痛みが解る人間が、もっともっと増えればいいのに・・・。

アルムの考えが、彼の存在が世界に認められていく気がして、私は涙が出そうになる。

「ははっ!アレは何処の軍か私にも解るぞ!」

 ラスロー王子の軍と反対の横合いから流れ込む軍の旗。

それを見たのも初めてだし、情報の欠片すら持っていないが、一目でそれが誰の軍か私達には解る。

蒼地に黒と白の二本の長剣を背景に、黒い鳥が口にくわえるのは小さな赤い林檎の実がついた木の枝。

蒼はヴァンハイトの国色。

彼の腰にある二本の長剣と特徴的な黒という色。

そして、林檎はリッヒニドスの特産品だ。

何処をどう見ても、あれは間違いなくアルムの軍。

それ以外に考えられない!

「ザッシュさんたら、面白い図案ね。」

「でも、アレがアルムらしくていいだろう?」

「えぇ。」

 戦場には全く似つかわしくない笑顔が咲き誇る。

全くアルムの優しさは凄いな。

軍の中には人間も亜人も獣人もいて、ダークエルフもいる。

国の垣根を超えれば、種族も超える。

アルムの生き方は、全てを考え直させる。

流石は、私の・・・"私達の皇子様"だ!

「全軍前へ!我等は他の同盟軍の盾となる!」

 高らかな私の声が戦場にこだまする。

この戦いは・・・きっとすぐに終わるだろう。

皇子の存在は確実に、皆の心に・・・。


旗のデザインはコレしかないでしょう?

林檎、最後まで引っ張りますぜぇ(苦笑)

ザッシュ君もいいセンスで。

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