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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
最終章:黒の皇子は三度生まれる。
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対峙する運命は、皇子の影。

 鈍い金属音。

なんとか相手の一撃を盾で受け止める事が出来た。

円盾は作用している気配はない。

つまりは、この盾で神器は受け止められないかも知れない。

受けた一撃のせいで、右腕が痺れてる・・・相手の力は意外に強い。

でも、バルド程じゃあない、大丈夫だ。

瞬間でそれだけの事を考えて、男に剣を振るおうと試みる。

「チッ。」

 反対側、視界の左端にもう一人の外套姿が入っている。

勿論、その手にも剣が。

動作途中に攻撃されると人は誰でもその他の対処が困難になってしまう。

三対一。

相手に傷をつけられるこの状況を逃したくない!

「らぁッ!」

 最初に攻撃してきた奴に剣を突き立てて、具足をつけた左足の裏で次に来る人間の手元に全力で蹴りを放つ。

コイツの速さもザッシュやハディラム以下だ。

まず一人に致命傷。

一息つきたい気分だけれど、三人目。

神器がオレの目に映る。

オレの真正面。

神器での一撃を受け止められると言い切れる武具なんて、オレは所持していない。

何より右手は剣を突き立て、左足は蹴りを放っているという身体が伸び切った状態。

「えぇぃッ!」

 もう回避だけに切り替える。

残っていた軸足で地を蹴って、相手に突き刺した剣の柄を両手でしっかりと握ったまま、そこを軸に身体ごと横回転。

「惜しいなぁ・・・。」

 剣を突き立てた相手の身体を剣で抉り、血飛沫が飛んでいるというのに。

あのクソガキの発した言葉はそれだけだった。

一緒に回転している剣を引き抜きながら、床をごろごろと転がるオレの無様な姿は確かに楽しいだろうよ。

でも、命には代えられん。

と、言っても・・・。

「いや・・・充分じゃないか?」

 完全には回避出来なかった。

斬りつけられた辺りが熱い。

血の温度ってヤツだな。

・・・左眼をヤラれた。

「左眼一つと一人分の命か・・・。」

 割に合っているのか?

相手がまだ二人いるってのに。

呼吸よりも、心臓が圧迫されるように苦しい。

「まだ・・・まだ待ってくれ・・・。」

 オレは悩んだ末に、残ったほぼ無傷の外套の奴に向かって走る。

本音としては、さっさと親玉を倒すのがいいし、そうしたいのだが、神器相手には万全を期したい。

オレに向かって振られる剣の先を、しっかりと見て身体を懐へと掻い潜らせる。

速度は全く緩めないまま、半身になって左の肩口から相手にぶつかる。

半減した視界、その左側に体当たりした身体をかぶせるように少年に向かう。

死角をつかれないように・・・と、いっても瞬間移動出来るなら徒労か・・・。

「はぁッ!」 「フッ!」

 振り下ろされる相手の剣を刃側ではなく、なるべく剣の腹を叩くように打ちつけ合う。

付加付きの剣だから、出来る芸当だ。

並みの剣なら、あっさりへし折られているだろう。

いや、斬られているな刃が。

擬似的な一対一。

たとえ神器を二振りも持っていても・・・オレにだって、剣と盾と鎧。

そして、経験がある。

纏わせるようにしていた外套姿の奴を突き飛ばし、息を吸う、そして再動、最も効率良く隙の少ない呼吸法をずっと研究してきた。

目の前の奴が復讐を考えてきた年月と同じくらい、オレは自分の在り方について考えてきたんだ!

「消える、暇は与えない!」

 絶対、無理矢理にでも隙を作らさせてもらうと考えていた矢先、奴の胸元に小さな隙間が。

今なら最低刺し違えられる!

オレは奴の胸元へと剣を。

そして、奴もオレに向かって剣を。

「ッ?!」

 刃が届く寸前、オレと奴の間に割り入る影。

外套がはだけ、覗いた顔は・・・オレの良く知った・・・。



「シルビィ・・・。」



 ピクリと彼女の表情が動く。

その瞬間、"知った顔に酷似している"という、ちょっとした人間の情で剣に込めた力や速度が弱まる。

致命的な失敗だ。

「あが・・・。」

 目の前の女性の吐いた血がオレの胸元から首筋にかかる。

彼女の胸から突き出た黒い刃は、そのままオレの胸の鎧を砕き、速度をまるで緩めず胸に埋まってゆく。

「このクサレ外道ォッ!」

 オレの突き出した剣は空を切る。

そして、そのままオレ達から剣が引き抜かれ、ズルリと彼女の身体が傾いた刹那、再び黒い刃がオレの胸に突き刺さる。

タダで・・・ヤラれて・・・たまるかっ!

もう一度、肺に残った最後の息を吐きながら、剣を奴の左足に突き刺してオレはその場に崩れ落ちた。

予想したとおり、さっきの呼吸で最後みたいだ・・・肺に血が入ったか・・・。

悪ィ、ハディラム・・・二人とちょいしか無理だった。

アト、頼むわ・・・。

しかし、意外と・・・悔しいけれど、冷静だな・・・。

身体の感覚が、流れる血と引き換えに抜けていくのがわかる。

視界は完全に無くて、胸に刺さったままのディーンの剣を必死に掴んでいるつもりでも・・・ゆっくりと何処かへ落ちていく・・・。

ごめん、トウマ・・・オレはここまでみたいだ・・・折角・・・繋いでもらった生命いのちなのに・・・本当、ごめん。

でも、さ・・・でも、沢山、沢山・・・色んな事があったんだ。

本当に沢山。

落ちてゆく感覚の中で、誰かがオレに触れてくれたような気がする・・・。

・・・うん・・・ほんとうに・・・たのしくて・・・さ・・・。

戦闘描写・・・下手ですみません。

勉強してきます。


ゆっくりと意識を手放し、虚無の闇へと落ちて逝く皇子。

それでも、彼は自分の人生が楽しいものだったと・・・。


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