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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
最終章:黒の皇子は三度生まれる。
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前門の神器、後門の神器。

 槍の刃に絡まっていた蔦のような部分から、四つの光が漏れる。

紅い二つの眼、それが槍の左右に二対。

刃の根元にソレ、"蛇"が咬みつく。

尻尾にあたる部分はぐんぐんと伸び、今や槍の全長より長い。

「な?まだまだイケるやろ?」

 何よりその威圧感だ。

今まで付加持ちに始まって、いくつか神器を見てきて、神器にはそれぞれちょっとした差異というか個性があるのがわかってきた。

目の前の槍には威圧感がある。

それこそ息が詰まるくらいの。

「行けよ、アルム。オマエは"今も"独りじゃないで。」

「あぁ。」

 オレはくるりとハディラムに背を向ける。

彼の呼気が本当は乱れたままなのを無理に取り繕っているのがわかっていても。

「それじゃ、後でな。」 「オゥ。」

 それだけを言うと、オレは階段を駆け上がった。

背後ではもう剣戟が聞こえる。

「オラァ!絞め殺されるか、刺し殺されるか選ばせてやらァッ!」

 何時か・・・彼の口から、そんな言葉すら出てこないような退屈な日々を。

そんな事を考えながら階段を上り、眼前に現れた石扉を蹴り飛ばして中に入る。

「やぁ。」

 金髪、金眼の見た事もない子供。

だが、気配は知っている。

知っているぞ。

「それがディアナ姫の神器か?」

 その手に握られた剣は懐かしいディーンの剣と、ほんのりと金色がかっている剣。

片刃で剣の中央には鏡のように輝く円、そしてその両端に囲むようにして枝みたいな角みたいなヤツがついている。

「へぇ、よく知ってるね。」

「アレから勉強したんでな。」

 少年の少し後ろに気配。

二人の人間が立っている。

いや、すっぽりと全身を目元まで覆える外套を着ているから、性別どころか種族すらわらかんが。

「勉強した割には"邪魔"するんだ。これだからヴァンハイトは・・・。」

 何とでも言え。

「セルブにいくさをけしかけさせたヤツの言う台詞か?」

 確証はないが、オレは強い口調でそう言い放つ。

「いいじゃない、どうせ・・・。」

 チラリと自分を後ろを見て、オレにもそこを見る事を促す。

十二分に警戒をして・・・立っている人物の更に後ろを見ると・・・。

「成る程な。」

 そこに小さな黒い球が浮かんでいる。

紫電が時折走る、オレの拳より小さな・・・"穴"。

「大変だったよ。いくら次元の歪みが起こし易い地でも、神器と更にそれを複製神器を大量に使って二重で封印されちゃあね。」

 北の民は、例の術使いの子孫だったな。

「全く、同じ事を馬鹿みたく繰り返しやがって。」

「同じじゃないよ、全然。」

 ニヤリといびつに笑う少年。

「今回は、大それた野望なんてないもの。歴史を歪め、誰かの勝手な都合で理不尽に造られた世界をやり直すだけさ。」

 どう返したらいいものやら。

「充分に大それてるよ。特に手段が。」

「ヴァンハイトのアンタに言われたくないね。」

 だろうな。

少年の瞳には殺意だけが宿る。

「でも、ま、それももうすぐ終わるけどね。前回と違って、"英雄なんてもういない。"この世界の何処にも。」

「あぁ、そうだな。」

 でもさ、知っているか?

世界が平和になったら、英雄なんて元からいらないんだぜ?

「英雄がいる世界のがいびつな気がするな、オレは・・・。」

 さて、息も整った事だし、多分これ以上の時間もかけていられないしな。

「んで、どうやったら、アレ、止められるんだ?」

 "次元の穴"であろう黒い球をオレは指さす。

「教えると思う?」

「いいや。特にオレには教えたくないだろうな。」

 ヴァンハイトだし。

そもそも話し合いの席に着く理由が向こうにないしな。

しかし・・・三対一か。

しかも、神器が相手側に二つ。

自分の側近(?)のようにいるんだから、相当の手練れなんだろうな。

「このまま、時間稼ぎを互いにしててもいいんだけど・・・アンタ、ヴァンハイトなんだよね。」

 好きで生まれついたワケじゃないけれどね。

「ヴァンハイトはやり直した世界でも要らないんだ。だから、死んで。」

「と、言って。はい、そーですかと言うわけにはいかないな。」

 もう既に死に体状態なのだけれども。

それはそれ、これはこれ。

死に体でも、やるだけやってからじゃないと死んでも死に切れない。

「だよね。ま、自分がヴァンハイトになんか生まれたっていう不遇を嘆いてよ。」

「弱ったな・・・。」

 確かにヴァンハイトに生まれた事を呪った時期はあった。

今だって、ヴァンハイトを許せないと思うし、怒りを感じる。

でもなぁ・・・悪い事だけじゃなくて・・・最近の出来事は良い事もあったりするんだ。

オレがヴァンハイトだから出会えたっていうの?

そういうのとかさ。

そう思っちゃったりなんかすると・・・。

「よしっ。」

 三対一でもやってやろうじゃないかと思うんだよな、コレが。

「ちゃんと斬り刻んであげるね!」

 神器にさえ気をつけていれば何とかなる!

動き出す三人。

オレは受けて返す構えで動かない。

向かって来る三人の中で、特に神器を持った少年にだけは気をつけて・・・。

「?!」

 そう思った瞬間、こちらに向かって来る三人の姿が掻き消える。

そんな能力チカラがあるのは、少年だけだと思っていた。

まさか、三人共なんて!

自分の銀剣を強く握り締め、拡大した感覚を最大限に使い気配を探る。

もう姿を現した瞬間、瞬間で対応するしかない。

オレがそう腹を括った時、視界の右端に揺らぎが。

「くッ!」

 少年じゃない!

外套の人影。

神器じゃない一撃。

しかし、食らったら確実にオレの命が無くなるであろうその一撃が、オレに振り下ろされる。

お約束でしょう?

『俺の屍を越えてゆけぇッ!』

・・・いや、死んでいませんけどね(苦笑)

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