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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
最終章:黒の皇子は三度生まれる。
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其は皇子の盾。 (ラミア→カーライル視点)

「お婆様!」

 私自身、お婆様の治める集落に来るのは何時以来だろう?

「騒々しいな。」

 昔からこの人は、何を考えているのか解らない。

私達の会話を微笑んで聞いているかと思えば、次の瞬間はもう遠い何処かを眺めていたり。

「騒々しいのは何時もの事。」

 子供の頃から妹のサァラと違って、私は我が強かったから。

「・・・まぁ、そうかの。」

 優雅に微笑むお婆様の姿は、子供の頃から全く変わらない。

「で、何の用じゃ?」

「私はセイブラムへ参ります。」

「・・・皇子のもとへか?」

 第一は確かにそう。

「お婆様。私達ダークエルフは何時までこうしていれば良いのでしょうか?」

 長命なダークエルフ。

人間の何倍も・・・。

だが、ただ長く生きれば良いものではない。

「森を守りながら生きるのは不服か?」

 澄んだ声に対して、視線はかなり鋭い。

「いいえ。」

「なら何故?」

「伝統を守る、誇りを守るのは大事です。それは意味がある。生き永らえる為、安らかに暮らし、繁栄する為。」

 そして、"何も変わらぬ"為。

長大な寿命を変わらぬ事に費やす。

「しかし・・・他の選択肢がある事も決して悪くない。」

 別に全員がソレを選ぶ必要はない。

変わらぬ事も大切だろう。

「選ぶ選ばないに関わらず、そういう選択肢が存在する事、そう思える事も大切なのです!」

「それが、オマエが皇子の下で学んできた事か?」

 ・・・学べたのだろうか?

アルムの周りは、ハチャメチャで・・・ただ楽しくて・・・温かかった。

「わかりません。ただアルムは馬鹿正直に受け入れてました。まず目の前の事を受け入れるだけ。」

「今、この時か?今、この時でなければならぬか?」

「私が後悔します。」

 きっとそうなのだろう。

私は彼から種族として何かを学び、ラミアとして彼を好きになった。

「皇子はこれからのダークエルフと人間の為になくてはならぬ存在です。そして、"アルム"は私に必要な存在です。」

 小さな溜め息。

呆れてるな、これは。

だが、仕方ない。

これが私の偽らざる想いなのだから。

「昔も・・・昔もそう思ったんじゃが・・・あの時は少し早かった。」

「お婆様?」

 何時の時の話だろう?

無駄に寿命が長いと察しにくくて困るな。

「だからわらわは待った。円盾を預かり、あの皇子が再び来るまで。」

 全く話が見えない。

だが、盾の話をしているという事は、あの皇子とはアルムの事だ。

では・・・"再び"というのは・・・?

「・・・わらわの集落にもオマエのようにアルム皇子の力になりたいと言っている者がおる。連れて行け。」

「お婆様!」

 意外だ。

もっと頭ごなしに否定されて、長々と説教されるとばかり思っていた。

「どうも、我が一族は思い込んだら一途な面があるからの。ラミア、ちゃんと帰って来るじゃぞ?わらわの可愛い孫娘。」

 そして、またお婆様は優雅に微笑んだ。




「まぁ、そうでしょうね。」

 目の前の一枚の紙切れ。

それを机に投げ出す。

「やはり、ヴァンハイトは動かずっスか?」

 扉にもたれている男。

「声くらいかけてから入ったらどうなんですか?」

「親戚を訪ねるのにっスか?面倒っス。」

 そう言うとザッシュは机に投げ出されたままの紙を拾い上げ、目を通す。

「あ~、ヤダヤダ。自分達に被害が及ばないなら、皇子くらいは見殺しっスか。」

 大袈裟に首を振る。

「国の方が圧倒的に大事ですからね。」

 本当、吐き気がしますね。

「これが皇太子殿下なら、目の色変えるクセに。こんなのぽいっス。」

 クシャクシャに丸めた紙が放物線を描いた後、乾いた音を立てて床に転がる。

「自分、ほんっっとうに皇子の騎士団に入って良かったっス。管轄違うっスからね。さぁ~て、皇子の所へ行くっスかね。」

 それはそれで大事オオゴトなのだが・・・少し羨ましくもある。

「たとえ、本国が皇子を見捨てても自分達が皇子を見捨てない。」

「というか、アソコにいる貴族共は、本当に皇子の価値を解ってないっスねぇ。自国より他国の方が圧倒的に評価の高い皇子って聞いた事ないっス。」

 呆れたように苦笑する。

したくもなるな。

「皇子が他国に亡命でもしたら、この国も大変ですねぇ。」

他人事ヒトゴトっスか?!太守代理のクセに?!」

「皇子がこのリッヒニドスで行っている政策を見れば、議論すら差し挟む余地すらないと解る事なのに?」

 あらかじめ用意しておいた紙の束をザッシュ前に投げる。

「おっと。何スか?コレ。」

「困った事に、現在城の警備隊を皇子の騎士団に出向させる辞令が出てましてね。皇子が帰ってくるまで撤回の処理も完了の処理も出来ないのですよ。」

 ・・・三流役者だな、コレは。

いや、役者に失礼か。

「相変わらず、抜け目ないというか・・・悪ドイっスね。」

「何とでも言いなさい。」

 政治なんてやった者勝ちなのですよ。

最速かつ最上の一手が一番最初に出せればいい。

「それに家内から、皇子をお食事に誘いたいと、こう言われましてね。」

「私事混在?!・・・まぁ、自分もあの人には逆らえないっスけどね。んじゃ、騎士団長様の所へ行って再編するっスかね。規模も規模っスから。」

「そこまでの数にはならないのでは?」

 精々、百人を多少超える程度のはず・・・。

「ん?だって騎馬隊にー、ダークエルフの軽装歩兵・弓兵隊に、獣人重装歩兵、亜人槍兵隊・・・三百・・・超えるっスかね。」

「他国どころか他種族の評価も高いのでしたね、我等の皇子は。」

「そうっスねぇ。」

 何処に呆れて、何処に感心したら良いのやら・・・。

「早速出来たばかりの団章・団旗のお披露目っス。」

「セイブラムと皇子の意志を守る為に。」

「リッヒニドス統皇騎士団出陣っス!」

 ・・・その名前、なんとかならないものですかね・・・。

なんだろ、意外とザッシュとカーライル好きなんだよねぇ・・・。

何気にいいオトコじゃないですか?

ただ、名前も姿も出てきていない奥さんが最強説(苦笑)

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