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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
最終章:黒の皇子は三度生まれる。
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其は皇子の剣。 (シュドニア→バルド視点)

ガリガリ減っていくお気に入りの数に、ガリガリ気力が削られていっている日々です。

「面倒・・・。」

 思わず口から出るくらいは勘弁して欲しいですねぇ。

「殿下。」

 目の前にいるシグルド様には、一応申し訳ないと思っていますが。

「この度、一身上の都合を以って、私事ですが拝命していた任・所属をお返し致します。」

「どういう事だ?」

「あーっと、説明すると長くなるので、師匠に聞いて頂きたいのですけどねぇ。」

 と、言っても無理な話・・・か。

「これから、私はセイブラムへ参ります。」

「セイブラムへ?戦場に行くのか?」

 思案されても無駄なんですけれどねぇ、殿下。

「国として動かないなら、尚のコト。」

 個人で動くしかないんですねぇ。

「恐らく、グランツ一門、全員が。ですねぇ。」

「グランツ一門単位で動くような事なのか?この戦は。」

 しかし、説明の一切を私に任せるというのもどうかと思うのですけれどねぇ。

「殿下。以前、私はグランツ一門は一人の例外を除き、全員この国の出身ではないと申しましたねぇ?」

「オマエ達はセイブラムの出身なのか?」

 実に惜しいですねぇ。

もっとも、今のは殿下が・・・殿下だからなのでしょう。

「いずれ殿下がこの国の皇王となった時に解りますよ。」

 嫌でも"視る"はずなんですねぇ。

「一つ申し上げるとすれば、私達はヴァンハイトではなく"世界に仕えている"という方がしっくりくるのかも知れませんねぇ。」

「・・・そうか。」

 ん~、たった一言ですか。

流石、殿下。

器が大きいですねぇ。

「それがオマエ達の使命だというのなら行くといい。ただ、この国もオマエ達が帰るべき故郷だからな。」

「ありがとうございます。殿下。」

 この国は本当に先が楽しみですねぇ・・・。

「あぁ、そうだ。先程、一人、例外と申しましたが・・・。」

 ヴァンハイトの良心、誇りは、この二方なのだろう。

「その例外も或いは、"世界に仕えている"というのかも知れませんねぇ。」

「シュドニア、ならば・・・弟を・・・頼む。」

 最初からそう言えばいいのに。

殿下も殿下で不器用ですねぇ。




「いいのか?こんな所でくつろいでて。」

「いいんだよ。どうせ"子供達"が頑張ってくれる。それより、アンタこそいいのか?」

 コイツと会うのも何十年振りだろうか。

「老いぼれが今更しゃしゃり出て何をする?」

「確かに。まだおっんでないのに驚いたぞ。」

 目の前の人間の皺一つ一つに過ぎた年月を感じる。

ワシもこの皺の分、年を取ったという事か。

「なぁに、直におっぬわ。"預かった物"も渡したしな。」

 机にある杯を呑み干す。

二人だけで差し向かいで座って酒を呑むのは・・・初めてか?

「しかし、あのコには驚いた。」

「ワシだって驚いた。」

 味わう事もせず酒を胃へと一気に流し込む。

「幼いあの子がワシに剣を教わりに来た時、あの大馬鹿共めと墓まで説教をしに行ったくらいだ。」

 初めて面と向かって話した時の事は、一生忘れん。

「何故、あの皇子は・・・ああも世界に優しく出来るのだろうか?」

 次の酒を杯に満たす。

「そんなモノ、ワシが指導したからじゃわい!」

「・・・オマエ、みえみえの嘘つくトコ、変わらんな。」

「だが、あの子は音を上げずについてきおったよ。」

 強い意志を持ったまま。

「だから、どんな事になっても生き残る事だけを教えた。あの子は先代や先々代の道具オモチャじゃないからな。必ず生き残って欲しかった。」

「彼には生きて世界を、国を変えて欲しいと・・・そう思うよ。」

 次の杯も空に。

「なぁ、信じられるか?また六つかそこいらだぞ?そんな子供に"世界の真実"を突きつけて丸投げするんだぞ?」

「よっぽどの外道だな。」

 酒はどんどん減り続ける。

「だが・・・それでも彼は今を生きてる。覚悟してな。いや、とっくの昔にそうしたのかもな。彼は誰にも止められないさ。」

「あぁ・・・ワシなんかを"選ばず"にアルム様を選んで当然だ。」

 ワシの長剣と強さだけに気を取られて、気づいておらんのは非常に心配じゃが。

「バルド、もし剣がオマエを選んでいたら、どうしてた?」

「決まっとるだろ?ヴァンハイトなんぞ滅ぼしてたよ。」

 腐りきった国なんぞ、何の希望もない。

蔓延しきる前に叩き潰す。

「だが、そんな考えも皇子と出会うまでか?」

「お偉いセイブラム法皇様にはわからんだろうが、アルム様はあの頃のワシ等と違う、新しい時代の人間だ。」

「そんなのオマエに言われんでもわかるよ。逆に彼が"世界を見捨てる"というのなら、喜んで従うさ。」

 とうとう酒が無くなった・・・か。

「オマエ、酔ってるだろ?」

「オマエより酔ってないさ。」

「何じゃと、このオイボレ!」

「うるさい、タコ頭!」

「これはワザとだ!"黒髪・黒い瞳"じゃ、聡いアルム様にすぐバレるだろう!」

「知っとるわ馬鹿者!とうとう冗談もわからんようになったか?耄碌したのぉ。」

 カチン。

「いいだろう、表へ出ろ死に損ない。」

「おぉおぉ、やってやろうじゃないか!」

 本当に・・・こんな事を出来るのは、何十年振りだろうか?

ディーン様の剣を求めて・・・世界を彷徨い出してから・・・。

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