ミケンと未聞の関係ってコト。
オレ達が通されたのは街を囲む壁、その門の真正面に見えた遺跡のような宮殿(?)だった。
この白い岩って、特別強固なのか?どんな特徴があるんだろう?
案内される途中でずけずけ聞ける程、神経はズ太くないつもり。
鼻歌をるんるんと唄いながら、空から降ってきた女性に大きな広間まで連れてこられたのはいいが、この人、なんとも不思議なカンジのする人だ。
不思議っぷりでは、シルビアといい勝負なのは間違いないと思う。
空から降ってくる時点で、少なくともエスリーンさん並なのは言うまでもないだろう。
「いや、さっきは本当にすまんっ。」
さっきからハディラムの謝罪はゆうに十回はこえている。
その間も例の女性は気にもとめてないようだった。
「それはわかったから、さっさと紹介してくれ。」
正直、飽きたし。
別に怒ってもいないし、落ちて来た方も、オレも大した怪我をしなかったのだから。
でも、二度と同じ事は勘弁願いたい。
あぁ・・・三度とは、か。
しろ言われても出来ない気がする。
「あぁ、前に言ってた俺様の姉ちゃんで・・・。」
「アシュリーヌ・トライトンと申します、皇子。」
ほんわりとした笑顔で挨拶するアシュリーヌさん。
彼女が、ハディラムの言っていたシルビアと似ているという姉か。
「ハディ、似てるか?シルビィに。」
オレには似ているように見えない。
まず髪の色からして違うし、身長も全然違う。
頭二つ分はシルビアの方が高い。
雰囲気は確かに近いモノがあるが、何より大きさがもうぱっと見で違う。
何処とか言うまでもないだろう?
流石にシルビアの魔王に敵う者はそうそういない。
「どうぞ、アシュリーとお呼び下さい皇子。」
そして何より、彼女の"焦点を結ぶ事のない瞳"だ。
盲目のお姫様ねぇ・・・盲目、盲目。
「えぇと、アシュリーさん?」
何かもう聞くのも嫌になってくるなぁ。
「なんでしょう?」
「オレはまだ自分の名前どころか、身分すら言っていないのですが?というより、何でオレ達がここに来るとわかったんですか?」
オレとハディラムの区別すらわからない女性が何故、ハディラムが帰って来ると知ったのか?
何故、オレを皇子だと知っているのか?
「それは・・・。」
「それは?」
「貴女が"私の皇子様"だから。」
「はぁ?」
簡潔な回答は、オレの望むところではあるんだが・・・。
オレは彼女に向けていた視線をゆっくりとハディラムへ。
「・・・いや、本当、重ね重ねすまん。」
どうやら元々からしてこういう人物らしい。
とういか、謝られてもなぁ。
アシュリーヌさんに対しても、ハディラムに対してもどういう反応を返したらいいのか、皆目検討もつかない。
疑問として浮かぶ事は、他にも幾つもあるけれど、憶測がついているものもある。
「とりあえず、皆さんにお部屋を用意してあるから、一度荷物を置いてきなさいな。」
能天気に明るい声でそう促される。
「また後でお話できますか?」
第一、まだオレは自己紹介すらしていない。
「勿論、皇子様。」
「あの、オレの名前はアルムと言うのですが?」
話していて調子の狂う度合いが、半端じゃない。
「わかりました。ヴァンハイトの皇子様。」
ふむ。
更に公開していない情報が上乗せされたな。
これは試されたりとかしているのかな?
要点をまとめると、アシュリーヌさんは盲目で、ハディラムの姉。
別姓なのと容姿からして、血が繋がっていない可能性は高い。
疑問点は、帰還する時期をどうやって知ったか。
何故オレが皇子で、しかもヴァンハイトのだと知っているのか。
で、これに関する憶測だが・・・。
「ハディ。」
「ん~?」
完全に疲れ果てたハディラムが無気力に返事をする。
もう謝り疲れたようだ。
「ハディ、旅に出ている間、国に連絡とかした?オレさ、リッヒニドスとかに便り出そうと思って。」
「あ~、律儀やなぁ、俺様なんて手紙一つ書くのだって面倒だ。生憎、ここじゃ手紙なんぞ出さないし、届かんし。」
届かないね。
「そうか、じゃあ、また今度にするかな。」
これでとりあえず、ハディラムから情報が流れたという線は消えた。
樹海自体に便りを出す方法がないんじゃ、クラムも同様だろう。
人を使っても、そう都合よくセイブラムに樹海出身の者がいるだろうか?
となると、オレの推測がさっきよりは真実味を帯びる。
「はぁ、なんかオレ疲れた・・・。」
彼女は術使いに類する、そういう能力を持っている。
「俺様だって同じだ。」
じゃあ、何で案内したんだよ・・・。
「では、皆さん。一旦お部屋へ。」
クラムに案内されて、とりあえず席を外す事にした。