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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅴ章:黒の皇子の価値を決める者。
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メイワクセンバンというコト?

 徒歩行軍二日目。

さっきからずっとハディラムは、『あと少しで着くわ!』を繰り返して、クラム以外の皆の顰蹙を買っている。

昨夜の狩りから帰ってきた後、ルチルは何事もなかったかのようにオレに接して・・・むしろ、前より自分から声をかけてくるようになった。

一体、狩りの間にどんな心境の変化・整理をしたのだろうと、それとなく聞いてみても、彼女は微笑むばかりだった。

仕方なくハディラムに・・・本当に仕方なく聞いてみたのだが。

『日頃の行いや。』と、まぁ、こんな調子で・・・。

オレには何が何やら。

いや、結果的には良い方向なんだけど、釈然としないわけで。

「アルム様~、女の子は複雑なんですよ~。」

 シルビアからはそんな一言を満面の笑みで頂いたのだが・・・。

「何ら問題が解決していないんだけど?」

「大丈夫ですわ~。」

 ナニが?

恐らくこれ以上突っ込んでも何も変わらないだろう。

「アルム~、あと少しで着くでー。」

「それ、さっきから聞いてる。」

 なんだっけ、人の声を真似する鳥。

オウムだっけ?

「いや、今度は本当に本当。ホレ。」

 そうハディラムが言った途端、目の前の視界が開けてゆく。

「うわぁ。」

 ルチルの感嘆の声。

更に進むと、その全貌がわかる。

少し濁った色の岩が高く積み上げられた壁。

きっと街をぐるりと囲んで要塞の役目をしているのだろう。

そして大きな門が。

「あん?おかしいな。」

 ハディラムが呟く。

「確かに大門が開きっぱなしというのは、気になりますね。」

 開かれた門。

その奥には遺跡のような円球形の屋根をした白い・・・あれが王城だろうか?

距離が遠くて微かだが、それが見える。

「それは何かあったって事か?」

 大型の野生動物が群れで・・・って、大型は基本的には群れないか。

「わからん。」

 距離もあるしな。

その距離も詰めていいものだろうか。

「しかし、門が開いていても中の皆の姿は見えますから・・・。」

 確かに、門の向こう側の建物の前には人々が行き交っているのが見えるが・・・。

「あれ?なぁ、ルチル?」

 オレはルチルを手招きする。

「なんでしょう?」

「ルチル、目がいいよね?」

 ダークエルフが夜目が利くように、獣人・亜人は様々な感覚器官が発達している。

「あそこ、門の上辺りに人影があるように見えるんだけど・・・。」

「えぇと・・・。」

 人だよなぁ、どう見ても。

銀剣の力がまだ身体に残っているせいか、感覚が少し鋭敏だ。

「みたいです。えっと・・・女の人が一人と・・・あっ、こっちに手を振ってます。」

 手を振ってるって事は、敵ではないという事だろうか?

いや、危険を知らせているのかも。

安易な判断は良くない。

「すっごい笑顔です。」

 そこまで見えるのか、凄いな。

「薄紫色ですかね、そんな服の銀髪の・・・。」 「銀髪の女やて?!」

 突然叫び出すと、ハディラムが猛然と門に向かって走り出す。

「あ、オイ!ハディ!」

 よく理解出来ないまま、俺もハディラムの後を追って走り出す。

ハディラムの方が先に走り出したのだが、どうやらオレの方が足が速いようだ。

少しずつ距離を詰めていける。

「なさーいっ。」

 声?

「なにやってんだぁ・・・ッ!」

 走っている最中に叫ぶハディラム。

叫んだ分だけ更に開いていた距離が縮まり、ようやく横に並ぶ。

一体なんなんだ?

「ハディーッ!」 「いいから降りろー!」

 ん?

さっきから聞こえるのは、例の女性の声か。

オレにもはっきりと見える。

ルチルが言ってた通り、薄紫のヒラヒラした服を着た銀髪の女性が手を・・・あ、両手になった。

ぶんぶんとこちらに手を振りながら、ぴょんぴょんと跳ねている。

「だあぁぁーッ!」

 ハディラムが一際大きな声を上げた瞬間、女性の身体がグラリと傾く。

「くッ!」

 すぐさま大きく呼吸を吸い、止めて完全無呼吸状態でオレは更に加速する。

そのまま女性の身体を投げ出されたのを視認すると、あとは目標の落下地点へ。

強い衝撃で骨などを折らないように落下の力を、オレが飛びつく方向に転換する。

そのまま落ちてくる女性を抱え込み・・・ごろごろと。

そりゃもう盛大に。

その女性をなるべく傷つけない事だけを考えて・・・オレが痛いのは・・・人間、優先順位をつけると、こういう事もあると思考を放棄。

ひたすらぐるぐる。

呼吸を止めていた息苦しさと、回転する身体に伝わる痛みと、もうなにがなんだか・・・。

気を失わなかっただけ褒めてくれ・・・あと吐かなかった事も・・・いや、本当に。

「ぶはっ・・・。」

 たっぷり転がった勢いが止まると、すぐさま呼吸を再開。

「あはは、びっくり、落ちちゃった。」

 もぞもぞとオレの腕から這い出た女性の笑い声。

「ハディがいて助かっちゃわね、ありがとうハディ。」

「ぅぷ・・・そのハディ君なら、後ろにいますよ。」

 もうダメ、これで精一杯。

力尽きて大の字で倒れたオレに馬乗りになった女性。

ふと、彼女の瞳に光がない事に気づく。

・・・盲目なのか?

「いや、本当、何と言うか・・・すまん。」

 肩で息しながら、ハディラムがげんなりとして頭を下げる。

「全く女性が空から落ちてくるなんて馬鹿な事は人生ではじ・・・二度目か。」

 エスリーンさんという前例がアリマシタ。

「あら、皇子様に助けられちゃった♪」

 その女性は虚ろな気な瞳でそう言うと、可憐に破顔した。

またまたブッ飛んだ女性の登場・・・いや、多分、新キャラはこれで最後かと・・・多分・・・(トオイメ)

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