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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅴ章:黒の皇子の価値を決める者。
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ユウクを覚悟に変えてってコト。【後】(ルチル視点)

 狩りの為に移動の最中、私の頭にはさっきの皇子の言葉が離れなかった。

どうして皇子は、あんな事を言ったんだろう?

「気にすんな。」

「え?」

 前触れなく一緒にいたハディラムさんが声をかけてくる。

「いや、あー、気にすんあっちゅーのは無理か。でもな、多分アルムは嬢ちゃんだから言ったんだと俺様は思うで。」

 チラッと彼を見ると視線は前に向いたまま。

何て返したらいいのか、私にはわからなかった。

「アルムは本当に馬鹿正直で律儀やろ?だから自分のした事の全部に責任を取ろうとする。そうしないとやっていけんのやろ。」

 亜人を殺してしまった事への償いの為に、あんな事を私に言ったのだろうか?

だとしたら私は・・・。

「どうしたらいいんだろう・・・。」

「どうしたら?」

 ぴたりと歩みを止めて、ハディラムさんは私を見る。

「そんなん、アンタの勝手やろ?好きにしたらいい。」

 そう言い切った後、頭を掻いてから。

「あー、ただな。アルムの言葉・行動見てて何も思わへんか?」

 下を向き、つま先で草を蹴り、私をじーっと見つめてくる。

「俺様は会ってからそんな日が経っているわけやないから、アレやけどな。あの皇子らしくないアルムが、何の理由もなく誰かを傷つけるような奴に見えるか?少なくとも俺様には見えんし、思えん。」

 皇子との時間は、私もハディラムさんも大して変わらない。

ううん、ほとんど同じと言っても構わない。

「私にも・・・見えません。」

 初めて挨拶した時の抱擁、喜び。

ことあるごとに私を撫でる手。

「それにな、アルムに出会ったヤツ、アルムの事を知ってたり理解しようとする皆、笑うんや。皆、笑顔やった。」

 そう言われてみると、皇子と会う人、皆笑顔だ。

私も含めて。

「誰かて・・・秘密の一つや二つあるもんや。人に言えない事がな。それでも嬢ちゃんの顔を真正面から見たかったんやろ。ちゃぁんと向き合いたいから、アルムはそうしたんだと思うで。」

 皇子は常に分け隔てなく優しい。

ダークエルフも、亜人も関係なく。

「皇子は・・・。」

「ん?」

「一体、何を目指しているのでしょうか?」

 皇子の求める理想は?

「ん~、俺様はアルムじゃないからわからん。でもきっと、何かを皆で目指したとしてな、痛みを誰かが受けなきゃならんとしたら、それは先頭に立つ自分ってコトなんじゃねぇの?そういうトコは皇子やな。」

「私はそれをお手伝い出来るのでしょうか?」

 膝枕された時、とても驚いたけど嬉しかった。

「は?嬢ちゃん、頭、大丈夫か?もうとっくに手伝っとるぞ?アルムの騎士団なんやし。」

「あ・・・。」

「そのままで居りゃ、嫌でもアルムの為になる。」

 そうだった。

私が出来る事は、皇子の騎士団の一員でいる事。

「あ~、あとな、出来るだけアルムに笑いかけてやるこったな。」

「笑う・・・。」

 皇子は周りの笑顔を見るのが好き・・・。

「ハディラムさんは意外と優しいんですね?」

「い・・・意外って・・・まぁ、外見がキツそうに見えるっつーのは否定できん。」

 言い方が悪かったかな?

「俺様だって、アルムの秘密は気になるし、信じられん部分もある。でも、アルムが悪い奴じゃないってのもわかるからな。」

 結局、そこなのかも知れない。

皇子の優しさは色んなモノの裏返しなのかも。

でも皇子の考えが、政策が、私達亜人の選択肢を増やした事には変わりないし、私が今こんな所まで旅をして、色んなモノを見られるのもそのお陰。

「さてと、さっさと狩りをすませんと。二人で五人分は大変やし。」

 屈伸運動をし始めながら、ハディラムさんは私に片目をつぶってみせる。

「ですね!あ、でも、大物だったら一匹で済むカモ。」

 私の発言に一瞬首を傾げ、おぉっと小さな声が上がる。

「そのテがあったな。労力の問題はあるが・・・その方向で、いっちょ行こか!」

 そう言うとハディラムさんが突然走り出したので、私も慌てて後を追った。

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