キドアイラクも愛情のウチというコト【前】
「アル君、大丈夫?!」
全ての話を終えて、城内の一室で皆と合流した時、真っ先にエスリーンさんが駆け寄って・・・。
「良かったですわぁ~。」
に、割り込んで、シルビアが抱きついて来た。
あれ?
シルビアってそんなに素早く動けたんだ。
そっちに驚き。
「・・・なぁ、シルビィ。」
「はぃ~。」
・・・やっぱ聞かなきゃダメだよな。
「この具足をシルビィが薦めたのは、必要だったと思ったから?」
見つめ合うオレとシルビア。
「・・・全てはアルム様の御為に。」
ふむ。
「そっか、ありがとう。じゃあ、これも?」
オレは先程、貰った鎧を指さす。
「はい。」
「シルビィが言うなら、そうなんだろうね。」
法皇様の折り紙つきなだけあって、この鎧は薄くて軽い。
その重量と薄さに対して強固だ。
これならあまり邪魔と感じる事もないだろう。
「で、アルム、これからどうする?そっちの姉ちゃん含めて。」
そっちの姉ちゃんというのは、リディア先生の事だ。
「先生にはリッヒニドスへ来てもらって、そっちの政策を手伝ってもらう。」
そこまでが当初からの目的だ。
「う~ん・・・。」
「なんだよ?」
どっかりと椅子に座ったまま、腕を組んで考え込むハディラム。
すまないが、どう見ても真面目に考えているようには見えない。
いや、もう全然。
「なぁ、それって急がんといけないもんか?」
「は?あ、まぁ、急ぐに越した事はないが、どうしたんだ?」
歯切れ悪いなぁ。
ハディラムらしくない。
「何かあるのか?」
「アルム、樹海に興味ないか?」
「樹海?ハディ達の住んでいる所へか?」
興味ないわけじゃない。
寧ろ、興味がある。
あるんだが・・・。
行くとなると人員を分ける必要がある。
リディア先生とリッヒニドスに帰る人間と、オレと樹海に行く人間。
で、戦闘要員はエスリーンさんとルチルしかいないというね・・・。
オレ一人で樹海に行ってもいいんだけれど・・・?
「アルム様~、めっ、ですよ~。」
こうも優しくシルビアに窘められてしまうと・・・。
かと言ってセイブラムの人員を出してもらうわけにはいかないうえに、信用出来ない。
問題としてはエスリーンさんがどうするかだ。
彼女はオレの部下でも何でもないから、命令権がオレにはないんだよなぁ、実は。
「ハディ、樹海からセイブラムまで往復だとどれくらいかかる?」
「あ?あ~、クラム、どんなもんだと思う?」
何故、クラムに聞く。
「"常人"の足なら四日あれば。」
・・・クラムの中では、既に常人の範囲外なのは計算内らしい。
「四日か・・・。」
流石に四日もこの国に留め置く事なんて出来ない。
一応、先生は罪人扱いだからなぁ。
「エスリーンさん。」
えぇいっ、聞くだけはタダだ。
「お願いがあるんですけれど・・・?」 「ナニナニ~?アル君のお願いって。」
早い!近い!
「リディア先生をヴァンハイト・・・最悪、リッヒニドスまで護衛してもらえないですか?首都までの場合、兄上にリッヒニドスまでの護衛を手配してもらうので・・・。」
ルチルでもいいんだが、女性二人旅なら、グランツであるエスリーンさんの方が安全だ。
「ん~、いいよっ。」
「本当ですか?!」
「私のお願いも聞いてくれるなら。」
えーと・・・。
「・・・内容を聞いてみてからで。」
そうだ、彼女は"グランツ"なんだった・・・およそ、常識というか、基本、常人じゃないんだ。
オレ、迂闊過ぎないか?
「今日は、もう遅いから出発は明日でしょう?」
確かに、査問会と法皇様との話で、治療ときて大分時間を使った。
ついでにオレの体調も、今のところ良好。
チラリと視線をクラムに向けると軽く頷かれる。
「そうなりますね。」
「んじゃ、今晩はずっと一緒にいよ♪」
「え゛・・・ずっと?」 「ずっと。」
即答。
「二人で?」 「二人っきりで!」
またもや即答。
えぇと・・・オレ、今、色んなイミで危険?
あぁ、何か変な汗が吹き出てきそう。
そうまでして樹海に行く必要性あるのかな?
「ハディ、オレを樹海に連れて行って何があるんだ?」
ハディラムの利は何があるんだろう?
「ちょっとな、色々見せたいもんがあって。」
その展開は、もうさっきやった。
「見せたいモノ?」
「きっとアルムの為になると思うで。」
う~ん・・・あ。
エスリーンさんが涙目になってる。
「じゃあ、その条件で。その代わりきちんと送り届けて下さいよ?」
「うん!勿論!」
「ルチルとシルビィはそのまま同行してくれ。」
シルビアは、どちらに振り分けても同じだが、一人で二人をエスリーンさんに守らせるよりはいいだろう。
「リディア先生、そういう事なんで。」
「わかりました。ただ・・・。」
「ただ?」
「私はもう先生じゃないんですよ?」
「はぃ?」
何が言いたいのでしょうかねぇ?
「先生はいりません。」
「あぁ・・・えと、リディアさん。」
「さんもです。」
なんだろう・・・なんか、セイブラムに来てからオレ、理不尽なメばっかり会ってないか?
よくよく考えたら、理不尽だったり、落胆や侮蔑・嘲笑の視線だったりって、オレの日常の出来事じゃないか・・・。
何を今更、この程度。
そう考えてみると、リッヒニドスに行ってから、本当に恵まれてるよなぁ。
「それでは、リディア、行きましょう。」
一応、年上なので丁寧に話しかけてみると、リディア先生はにっこりと微笑んだ。