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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅴ章:黒の皇子の価値を決める者。
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サクソウするのは誰の想いってコト?【後】

「・・・法皇様?」

 何かおかしくないか?

「何かね?」

 オレだからか?

ハディラムは何とも思ってなかったみたいだし。

「法皇様の杖、本当に"セイブラムの神器"ですか?」

 以前、リディア先生が言っていた。

複製された神器の原型は、法皇様が持っていると。

じゃあ、オレが今見ているアレが、本物の神器?

「どうしてそう思ったのかね?」

「理由・・・直感ですかね。オレにはどうもそれがそうだと思えなくて。」

 どう見ても・・・今まで見た神器と違う。

相対する時の存在感というか・・・。

神器それぞれに受ける印象も違うんだ。

圧迫感だったり、存在感だったり。

でも、これは。

「ただの他の複製された杖と同じ物にしか。」

「多くの神器と触れてきた皇子の勘か・・・。」

 触れてはいないけれど。

だって痛いの嫌だし。

「いえ。」

「先程の査問会、皇子は平然と杖を持っておったしの。」

 マズいかなとは思ったんだけれどな。

ハディラムは槍を持たなきゃいけなかったし、拒絶反応もあるから、あの役割分担は仕方ない。

「そんな皇子にちょっとした贈り物をしたくての。」

 そう言って部屋の中へ歩みを進める。

オレの質問に答えはない、か。

「余も少し老いたかの・・・皇子、君の言った通り、これも複製神器だ。この国には"神器など存在せん"。」

 嫌な予感が、汗となってオレの背を流れる。

「盗難という事ですか?」

 まさか、アイツは既にここまで・・・。

「元来、ここにはないのだよ。だからの複製神器だ。そして、これを君に贈りたい。」

 神器の話はここで終わりという事らしい。

彼はオレを促す。

部屋の中央を囲むように立つ四本の燭台。

「さぁ、奥に入って"アレ"を見てみるといい。」

 確かに明かりが暗くて、奥に入らないとしっかりと見られない。

仕方なく部屋の奥へ行って、目を凝らすと・・・。

「鎧?」

 ぽつんと置かれている物体の正体は鎧。

漆黒の鎧の胴体部分だけがそこにある。

「これって・・・。」

 相当の年代物であろう事は、オレにも理解出来る。

けれど・・・これは・・・。

思わず自分の足元を見る。

色といい、形状といい・・・オレの具足と意匠がそっくりだ。

どちらがどちらを真似たのか。

或いは、どちらも同じ者が作ったのか。

「何故、これだけがこんな所に・・・。」

 普通、鎧なんて部位ごとに分解しておくなんてないだろう?

売るにしたって部位より一式の方が高く売れる。

この状態で保管されるなんて・・・。

「皇子には・・・今の世界はどう見えるかね?」

 驚いていたオレの背後から問いかけられる。

いきなり世界と問われてもな・・・。

「どうでしょうね。オレだって世界の全てを見て回ったわけじゃないから。」

 世界は広いという事だけは理解しているけれど。

「結局、世界を面白くするのも、腐った世界にするのも自分次第でしょう?オレはその為の努力だけは惜しまない事にしたんで。」

 奴隷、人種差別。

オレにはそんなのは通用しないし、認めない。

そうする事が出来るかも知れないと、今はそう思えさえする。

「皇子には・・・アルムという人間、それ自身に力を貸して、支えてくれる者達がいるという事なのだろうな。皇子という地位には関係なく。」

 優し気な瞳をしてオレに笑いかける姿は、ただの老人にしか見えない。

生憎オレの記憶に祖父という存在はないが、いたとしたらこんな感じだったのだろうか?

「誰かに支えられ、必要とされ、そしてそれに応えるべく前に進む。"皇王"としては十分じゃな。」

 は?

「法皇様、失礼ですが、オレは第二皇子です。神器の双剣も継承出来ませんでした。」

 そんな人間が皇王になれるものか。

兄上は全ての要件を満たしているというのに。

それにただでさえ、オレは・・・。

「試してみたのかな?例え、後の世にどのように言われようとも、己のやるべき事を成す。それがヴァンハイトの血というものだ。」

「まるで会った事がおありのようですね。」

 あるんだろうな、コレはきっと。

そういえば、具足はリッヒニドスで手に入れたんだっけ。

スクラトニーの私物だったのかも知れないけれど、リッヒニドスの城は元々、皇族の居城だった。

もしかしたら、そこに関係があるのかも知れない。

「少しでも皇子のこれからの旅、その前途が良きモノであるよう、降りかかる災厄から自身の安全を願って・・・使ってやってくれ。」

 性能は保証すると法皇様は言葉を続ける。

そりゃあ、この具足と同等の物なら、良い物に違いないだろう。

「・・・ありがたく使わせて頂きます。」

 裏にどういった事情があるとしても。

「うむ。では・・・。」

 法皇様は自分のゆったりとした服の袖を捲くる。

「さて・・・"治療"をしようかの。」

 何もかも視透す微笑みに対して、オレはゆっくりと頷いた。 

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