サクソウするのは誰の想いってコト?【中】(ハディラム視点)
「成程な。」
欲しかった情報っちゅーのも、内容的にはそう驚く事はない。
相手の能力が知れた分、やり易くはなったな。
手の内が一つわかっているだけでも大分マシ。
ま、どの神器が相手だろうと、神器である限り俺様にとっては大した問題じゃねぇけど。
「逆に一つお聞きしていいですか?」
「あ?あぁ、答えられる事ならな。」
どうにも女の扱いの勝手がわかんねぇ。
故郷には一緒に育った姉ちゃんもいるが、同じように未だに扱いが慣れない。
アルムは逆に慣れている感じすっけどな。
「アルム皇子をどう思いますか?」
「どうってなぁ・・・。」
前にも同じ事を聞かれたんだが、胡散臭さが抜けないんだよなぁ。
部下に欲しいくらいだから、能力的な事は信頼出来んだけど。
「悪いヤツではない・・・とは思うな。」
「そうではなくて、神器使いとして。」
・・・神器使い?
あぁ、ヴァンハイトの皇子だもんな。
「いいんじゃね?ああいうのが神器使いでも面白ぇ。」
何より神器に対する考え方がいい。
「さっきも言ってやがったが、神器なんて所詮はモノだぜ?人が使わなきゃ、何の意味もねぇ。」
人がいるから神器がある。
それを履き違えちゃオシマイだ。
「人が神器を使って何かをするんであって、神器が人をどうこうするもんじゃねぇ。」
アイツなら神器という力に酔わない、神器に溺れない。
どちらかというと、嫌悪している節がある。
「ヴァンハイトに生まれ神器を持たず、セイブラムの複製神器を持てるという事に関しては?」
・・・困ってんのは、まさにソコ。
ソコなんやけど・・・でもなぁ・・・アルムを見ていると・・・。
「ま、長い世の中、そんな事があっても・・・。」 「いいわけありませんよね?」
人があっさり流して終わらせようと思ってんのに。
この姉ちゃんは、俺様に何を言わせようとしてんだ?
「俺様の神器は、血族で継承はしとらん。」
俺様の神器は、新生児が生まれる度に適正があるかどうか試されるからな。
「そうですね。ですが、複数の神器を継承出来る可能性はないでしょう?」
ニコニコと笑顔のまますげぇコトを言うな、この姉さん。
「そりゃそうだ。」
大体において、どの国でも神器は至宝だ。
そんな簡単に触れられん。
触って試す方法が出来るわきゃない。
「あんな、姉ちゃん。何を言いたいのか知らんがな、俺様はそういうもって回った言い方が嫌いだ。」
「彼ね、以前色んな事を調べてたわ。国の歴史、民話、神器、そして予言者に関する事。」
また面倒な。
「そこに彼の秘密があるのかも。」
「秘密ねぇ・・・。」
予言者、そんなのに興味あったんか。
俺様の故郷じゃ、誰でも知っている話なんだが。
「それと、件の盗難事件の犯人。彼と知り合いのようでしたよ?」
「初耳やな。」
俺様が聞かなかっただけかも知れんが。
アイツ、ある意味ひねくれてるしなぁ。
「それはそれで、俺様にも考えがある。」
・・・が。
「あぁ、面倒!神器使いとか、人の上に立つとか、どんだけ面倒なんだよ!」
やってられん。
大半をクラムに押し付けてもコレだぜ?
アルムってどんだけ普段から面倒な仕事してんだ?
「突然、大声上げんなよ、ハディ。」
「お?アルム。」
ようやく戻って来たか・・・ふむ。
「ほれ、アルムっ。」
試しに俺様の持っている神器をアルムに向かって投げてみる。
顔近くに投げられた槍を、反射的にアルムが手に取って・・・。
「痛ッ!何すんだ、この馬鹿ッ!」
案の定、拒絶反応の痛みに顔をしかめて槍を落とす。
「オマエ、神器を何だと思っとんだ?」
「それはオレの台詞だ馬鹿!そんな物を人に向かって投げるな!ただの槍でも危ないわっ!」
「だよな。」
「だよなって、わかっててやるな、この馬鹿ハディ!」
とりあえず、俺様の神器には拒絶反応が出たという事は、少なくても対なす神器にも拒絶反応が出るだろう。
それを確認する為に三回も馬鹿と言われたのは微妙やけど。
「て、アルム。どうしたんだ?ソレ。」
アルムに叩き落された神器を拾いながら、さっき別れる前の違いを指摘した。
「あ?あぁ、コレな・・・。」
露骨に目線を逸らすって事は言えない程ではないけど、聞かれたくないって事なワケだ。
「あの法皇様から貰ったって事か。似合ってるぞ。」
アルムの黒髪と黒い瞳に似合う"漆黒の鎧"
今まで手足はしっかりと防具を身につけてて、他は身につけてなかったから間の抜けた感じだった。
だが今はなんつーか、ぴったり部品がおさまったカンジ。
「褒められても、ちっとも嬉しくないんだよな・・・。」
遠い目をするアルムは、一体何があったんだ?
流れによっては、この後の事を考えなきゃならん。
あぁ、頭なんざ使いたくねぇ。
そういうのは、使いたいヤツが使えはいいんだ。