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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅴ章:黒の皇子の価値を決める者。
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サクソウするのは誰の想いってコト?【前】

「まさか、貴方が私をそんな風に想っていてくれたなんて、感激ッ。」

 査問会の正式な判決が出た後にオレを待っていたのは、熱烈な抱擁だった。

こういう実にわざとらしい事は、面倒なだけなので、本当に遠慮願いたい。

「はいはい。オレだって借りばかり作るのは嫌だし、こんな事で貴女が理不尽なメに合うのは嫌なんですよ。」

「借り・・・ですか?」

 首を傾げるリディア先生。

「貴重な資料をお借りしましたから。とても役立ちました。」

 現在、リッヒニドスにて鋭意推進中。

「俺様への借りは別かよ。」

「それは別口で返す。」

 その為にここまでついて来てもらったってのも、あるんだしな。

「リディア先生、ハディは神器の盗難事件を追っているそうです。すみませんが事の次第を彼に。」

 既に一件。

ハディラムは盗難事件に遭遇している。

例の砂賊も盗難事件の一部だろう。

「私でよければ。」

「ほれ、ハディ。お待ちかねの情報だぞ。」

「それでは、アルム皇子のお相手は余がする事にしよう。」

 "余"?

この世で一番短い一人称・・・いや、そうじゃなくて、こういう言い方をするって事は、国で一番偉い人。

「えぇと・・・法皇様?」

 そういえば、さっきの査問の席でも一番高い所にいたような・・・。

「余では不満かね?」

「不満というか、国の偉い人と一緒にいるとロクなメに合わない確率が高いというか・・・。」

 考えてもみろ?

今まで王子とか姫とか、大貴族とか、そういう人間(一部他種族)と出会って、騒動とかそういう類いに巻き込まれなかった事なんてあったか?

いや、ナイ。

「成る程。それは一理ある。余も若かりし頃、同じ事を思った事があったものだ。」

 一国の代表になるってのは、面倒なんだろうな、やっぱり。

あ~、ヤだヤだ。

なんで、皆権力を欲しがるのかね。

「同じ事を考えた者同士、見せたい物なんかもある。」

「それもロクなモノじゃない気が・・・。」

 疑心暗鬼にだってなるさ。

「そう言わず、二人が話している間だけでもな。」

「はぁ、まぁ、確かに暇だし・・・あ、部下が外の宿にいますので、呼んで頂けますか?」

 どうか、変な事になりませんように。

渋々、法皇様について部屋を出る。

ここに来て、オレの目的は達せられたわけだから、あとはリディア先生をリッヒニドスに連れて行くだけだ。

なるべく早く。

ここに残っていては、それこそロクな事にならない。

「あの、法皇様?」

「なにかね?」

「数年したら、追放処分を解いて頂けますかね?」

 数年、そうだなあと三から五年もあれば、こっちの施設は安定してくるだろう。

「出来れば、余もそうしたいと考えておる。」

「なら良かった。」

 一生追放というのも穏やかじゃないからな。

別に用が済んだら必要ないというわけじゃない。

それでも、先生はセイブラムの人で、そこで過ごしていた時間があるから・・・。

「またあんな手段で脅されても困るのでね。」

「あはは・・・。」

 やり過ぎだったかな?

「でも、神器といってありがたがっても所詮は物でしょう?命には代えられないし、比べる事自体が間違いだ。神器はオレ達に何もしてはくれない。」

 これに関しては、オレの中できっちりと結論が出ている。

シルビアの時の事をオレは後悔してはない。

神器は決して"万能ではない"から。

どうしてヴァンハイトはそれをわからなかったのだろう・・・。

「それがアルム皇子の神器に対する考え方か・・・。」

 ぽつりと呟いた横顔は、ただの老人にしか見えなかった。

法皇であっても、人は人・・・か。

「ところで。」

「はい。」

「皇子は常にその格好なのかの?余から見ると非常に不自然に感じるんじゃが・・・。」

 ん?オレの格好?

何時もの戦闘用の格好なんだけれど。

確かに騎士とか、一国の皇子とかの装備としては変なのかも知れない。

具足と篭手だけとか身体の先端になると強固で、身体の中心になると防備が弱くなるってんだから、不自然かも。

個人的には、身体の中心は無意識に注意はいくけれど、末端は打ち合ったり、攻防せわしなく使うから、一番傷つき易いとい認識と経験則に基づいた理に適った装備だと思ってる。

「たまに身につけたりするんですけどね。どうにも重く感じてしまって。なんと言うか、自分の戦いの型に合わないというか・・・。」

 謁見の時にも着たけれど、動きを阻害するだけの邪魔な物としか思えないんだよ。

「・・・逆に言えば、現状が一番馴染むという事かの。」

「まぁ、そんな感じなのかな・・・。」

「皇子は・・・自分にはあるべき場所や物があると感じる事は、なかったかね?」

「は?」

 話が掴めない。

「さて、着いた。この部屋だ。」

 ほとんど会話が成立していないような気もしながら、案内された部屋の扉はドデカかった。

しかも、豪勢かつ、きめ細やかな彫刻が全面に施されている。

・・・ダメだ。

こういう豪奢な趣にはついていけない。

寧ろ、拒否反応が・・・。

あぁ、オレの貧乏性もここまできたら病気なんじゃないだろうか?

コンコン。

目の前でその豪華な扉を法皇のじぃさんが杖で叩く。

あの杖って・・・複製じゃないんだよな?

ここ最近、立て続けに神器を見てるから、感覚麻痺してきそうだ。

「さぁ、どうぞ。」

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