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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅴ章:黒の皇子の価値を決める者。
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エてして皇子らしくないってコト。【前】(ハディラム視点)

 旅の初日から驚きだった。

出会った時から思っとたが、アルムは全っ然皇子らしくない!

俺様の中の皇子像は完全崩壊。

ありゃただの庶民だね、ちょっと金持ち程度の。

あんなの皇子だとか誰かに言われても信じねぇ。

いや、時折なんつーの?

気風っつーの?

そういうのは出てる気がするんだが・・・。

どちらかと言うと、違和感の方が強ぇな。

何を隠してんだか知んねぇケド。

ま、こういう小難しい事は、クラムが考えるだろ。

初日の明け方や二日目辺りはなんだっけ?

エスリーンとかいう姉ちゃんがうるさかったぐらいで、それ以降は順調過ぎるくらいだ。

「しまった・・・。」

「どしたアルム?」

「砂漠に入る前に、皆を水浴びさせてやれば良かった。」

「あ?そんなもん二日目に浴びたやろ?」

 全く変な事で大騒ぎするやっちゃな。

「アンタは構わないでしょうが、女性というのはそうもいかないのですよ。少しは気遣いの"き"くらいまでは学習したらどうです?」

 どうして、こう、クラムは俺様相手にこんななんだか。

「あぁ、女性って面倒な生きモンだな。」

「アンタが単純構造過ぎるんですよ。」

 どちらにしろ、もう砂漠地帯に入って二日経ってんだ、今更だろうが。

「ん?何だよ、アルム。まだ何かあんのか?」

「チッ!」

 ヲイヲイ、こんくらいで舌打ちなんかすなよ。

「エスリーンさん、ルチル!シルビィとクラムさんを!」

 唐突に叫び声を上げて、馬を猛然と走らせるアルム。

「アルム!」 「誰かの悲鳴だ!」

 悲鳴?

そんなの聞こえなかったぞ?

「て、ヲイ!一人で行くなや!待て!」

 護衛を置いて単騎で突っ込むなんて、全くどんな皇子や!

絶対アイツは皇子なんかじゃねぇ。

「仕方ない!」

 俺様がついて行ってやらぁ!

クラムに目配せをするとすぐさま追いかける。

大体、悲鳴なんてアルムしか聞いて・・・?!

「聞こえた!」

 嘘だろう?

砂山を二つ越えてた辺りで、その声が聞こえて、更にその先。

小規模な砂漠とはいえ、砂山があるせいで音が遠くまで響いてこない。

なんつー、聴力。

「アルム!」 「ハディ!杖を持っている老人の方を助ける!」

 一つ先の砂山を越えている最中のアルムから、そう声が発せられて降りて行くのはいいんやけど・・・。

「あのバカ!」

 単騎で突っ込むなっての!

全速力で後を追ってアルムに追いつくと、もうヤツは降馬して剣を抜いているところだった。

もう仕方ねぇなぁ!

俺様は槍だから、馬から降りねぇぞ。

面倒だし。

人数の上では、十人以上の差はある。

ま、数の問題じゃねぇケド。

格下相手っつーのは、性に合わん。

一突きであっさり倒せるってのがな、何か、こぅ、作業みたいなカンジで。

だからと言って、強い相手と戦って労力を使うのも嫌やけどな。

一人につき一撃という俺様の速さよりも早いのが、アルムの体捌き。

俺様の突きをかわし続けただけあって、その速さは本物だ。

斬る。

返す剣でもう一回。

次に蹴り。

その反動を生かして、もう一撃。

ここまでの流れが一つの行動に組み込まれているようなカンジ。

とても皇族や貴族の嗜みの剣技じゃねぇ。

・・・トドメを刺さないのも、なんつーか、な。

「やっぱ部下に欲しい・・・。」

「あ゛?」

「いや、何でもねぇ。それより、そのじぃさん大丈夫か?」

 あっという間に相手を蹴散らしたのはいいが、助けた相手も相当の重症に見える。

「周りがこの砂漠じゃ・・・。」

 やっぱりダメか。

「セイブラムの枢機卿でいらっしゃいますね?私はセイブラムに向かう途中の者で、ヴァンハイト第二皇子アルムと申します。」

 大声でじじぃに話かけるってコトは、意識もヤバそうってコトか・・・。

「っ・・・っぇ・・・。」

 杖?

アルムも言ってたな、そんなん。

「無事です。リディア枢機卿の時と違って。」

「リディアさ・・・ま・・・を?」

「えぇ、学舎で一緒でした。」

 リディアってのは、これから会いに行くヤツだったよな?学舎ってなんだ?

「つえを・・・"あの御方"・・・に・・・。」

 会話はそれだけ。

アルムは次の言葉を発しない。

つまりはそういうコトだ。

あーあ、何の得にもなりゃしねぇ。

「杖っつーと、アレか?」

 馬から降りて、じじぃの言っていた杖らしき物・・・本当に"らしき"物だな。

奇妙な形をした杖。

片端は杖のご多分に漏れず、やたらデッカイ薄緑の石が嵌ってるが、もう一端は山・谷型の複雑な形状。

どちらかと言えば、杖っつーより錠前の鍵みたいな。

「全く、ケッタイな。」 「あ、ハディ!待て!」

 杖に手を伸ばした俺様を止めようとした声より先に杖に・・・。

「あだッ!なんだコレ?!ビリッてキタぞ?!ビリッて!」

 冗談じゃねぇ、ケッタイどころか、露骨に怪しい杖じゃねぇかよ。

「だから止めたのに・・・。」

「あんなぁ、そういうのは警告としての意味を成さへんて!」

「ハディが無用心なんだろ?」

 何で俺様が呆れられなきゃなんねぇんだよ。

しかも、クラムみたいな目で見やがって。

「って、オマエ!」

 溜め息をつきながら、徐に杖に手を伸ばしそのまま掴み上げるアルム。

「何でや・・・。」

「オレは目に一度、同じヤツに触れた事があるから。多少、耐性がついてる。」

 いや、そうじゃない。

「おかしいやろ!」

 本当にコイツはヴァンハイトの皇子か?

"有り得なさ過ぎる"

 

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