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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅴ章:黒の皇子の価値を決める者。
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コエイに寄り添うというコト。

 一眠りして、シルビアの応急処置(?)のお陰で頭がスッキリした気がする。

日はまだ出ていない。

もうそろそろだろう。

服装を整えて、シルビアに掛け布をして外に出る。

「ルチル?」

 幕屋の外にある丸い物体。

色合いがでっかい岩にも見えなくもないが、どう考えてもルチル。

「おーい。ルチル?」

 寝てるのか?

反応がない。

まぁ、いいか。

どのみち見張りを代わろうと思って早く起きたんだし。

「あふっ。」

 欠伸を噛み殺し、涙目になりながらルチルの横に腰掛ける。

勿論、なるべくすぐ立ち上がれる態勢で。

「・・・これから・・・か。」

 セイブラムに乗り込んで、出来れば穏便にリディア先生を解放してもらう。

リッヒニドスの施設の事もあるから、こっちに来てもらうのがオレとしては一番なんだが・・・果たしてそううまくいくか。

暗殺事件もあったが、神器盗難の件もあるし・・・。

もし、あれが各地で騒動を起こしているのなら、発端はオレかも知れない。

「ハディもなんか隠しているカンジだしな。」

 そもそも神器の使い道もわからないしな。

きっとそこら辺の事を知っているのだろう。

と、あたりをつけているのだが。

ついでにオレの身体を診てもらえたりすると・・・いいなぁ・・・なんて。

まぁ、世の中、そんなうまくいくわけないか。

最悪の場合も想定しないと。

「・・・・・・結局、無茶するしかないのか。」

 オレの人生、無茶しなかった事なんてほとんど無かったもんな。

そう考えると、よくオレ今まで生きてられてんな。

生きられている事に感謝だ。

相変わらず、どこまでもつかわからないけどな。

「うにゃーっ!」 「ぬぉっ?!」

 びっくりした!

横にいたルチルが叫び声をあげて寄りかかってきた。

つか、『うにゃーって!』ってオマエは猫か?!

猫型獣人との混血か?!

あれかな、やっぱり好物は魚なんだろうか?

亜人の食生活とかもよく知らない事に今更ながら気づいたぞ。

うわっ、オレ、意外と大雑把?

待望の亜人の部下の可愛さに完全に心を奪われていた。

いや、能力とかそういうのは厳しく審査されているから、そういう方面の問題は全く無いんだけど。

「ひたらきまふぅ。」

「へ?」

 横を見るとルチルがオレに向かって大口を開けている。

・・・嘘・・・猫って肉食だっけ?

人肉喰うのか?

「じゃないっ、落ち着け!」

 オレは必死に彼女のこめかみ辺りを両手でがっしりと掴む。

流石、亜人、力強い。

何だ?この光景。

仕方がないなッ!

「ぎゃんっ。」

「っ・・・起きたか?全く無駄な労力使わせやがって。」

 ルチルは額を押さえたまま硬直している。

オレが頭突きを炸裂させたからだ。

「あぅ~、星が飛びました。」 「まだ夜だからな、星も見るさ、そりゃ。」

 オレだって痛いんだからな、コレ。

「はれぇ?皇子のそっくりさんが・・・。」「違う。」

「じゃ、分身?」 「増殖した覚えも、分裂した覚えもない。」

 一瞬の静止。

しかる後の再起動。

「・・・はぅ・・・は?!すみません!私!」

 ルチルは寝起きが悪いと覚えておこう。

「全く・・・折角、人が交代してやろうと思って早起きしたってのに。」

 まさか頭から丸齧りされるとは思わなかったさ。

「ほれ。」 「あっ。」

 無理矢理、彼女の頭を膝の上に乗せる。

「さっさと寝直せ、交代だ。」

「えっ?えっ?!」

「交代。但し、寝ぼけて齧ったり、爪立てたりするなよ。」

「でも・・・。」

 面倒だな。

ルチルはオレの部下のなりたてだしな。

「あぁ、もう面倒。オレの部下になるってコトはこういう事なの。はい、説明終了。はい、寝る。」

「うぅ・・・。」

 それでも抵抗があるのだろうか?

「いいから、少し横になってろ。多少は休んだ方がいい。幕屋の中に入れてやりけど、その物音でシルビィが起きても困るしな。」

 少し大人しくなったかな。

オレはそのまま、彼女の瞼に軽く手を置く。

昔よくこういう風にミランダに膝枕されて寝た事があったな。

オレが倒れる前か。

やっぱり倒れる以前の記憶はしっかりとある。

それにミランダとの思い出は忘れてはいない。

オレという存在の起点というか、自己を認識する為の他者はミランダなんだな、きっと。

「ルチル。オレは君達が胸を張れるような"人間"にならないとな。」

 目を隠してしまったが、耳がピクッと細かく動いている。

寝てはいないのかな?

「皇子・・・私も、自慢できるよな、部下になりまひゅ・・・。」

 最後が締まらないカンジだけれども、そう言ってもらえると嬉しい。

共に高みというか、そういう風に競っていけるような気がする。

「ありがとう、おやすみ。」

 言った後に、ルチルの身体が弛緩していく。

心なしか、耳もしゅんと力なくなって・・・う~ん、やっぱり可愛いな亜人。

でも、あれか、寝起きは悪いんだよな?

で、コレは後で当然、起こす、ないし起きるわけだ。

次はどんな事になるのやら。

・・・・・・もう一回頭突き・・・かな?

起こす時の労力を考えながら、オレは空が白んで日が木々の隙間から射し込んでくる様をぼんやりと眺める事にした。

ビバ!猫耳。

ちなみに厳密には、ルチルは猫型亜人じゃないという設定。

アルムの勝手な思い込みというか妄想萌えです。(ヲイ)

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