ケッシテ変わらぬ想いがあるというコト。 ~エピローグⅡ~【皆の歩みと。】(ホリン視点)
「ねぇ、アルム様?」
宿に待機している皆と合流する為の移動中。
私はこっそりとアルム様に声をかけた。
「どうした?」
「ちゃんと帰ってきますよね?」
アルム皇子は、何時もの心配そうな表情で私を見る。
何時だって、この人は一生懸命だ。
「何を言ってるんだ?ちゃんと土産は買ってくるぞ?」
「そうじゃなくて・・・。」
だから凄い心配。
必死だから、自分を顧みない。
この皇子は本当に鈍感で、全力で愛を注がないと、自分が愛されているとは思ってくれない。
ずっとずっと周りでうんざりする程騒がしくしないと、どんどん考え込んで、底無し沼に沈んじゃうんだ。
「むぅ。愛情がないなァ。」
「は?何を言ってんだか。」
なんかつまんない。
つまんないよ。
「本当は皆、アルム様について行きたいんだからね!」
そう何処までだって。
「ホリン・・・。」
「でも、そりゃあ、アルム様が大変だってわかってる。だから、自分に出来る事をやってアルム様を待ってるの。」
だから、ラミア様だって、サァラ様だって、エルフの森に戻ったんだ。
レイアさんもザッシュさんも今頃騎士団の仕事を頑張ってると思う。
「愛情はあるよ。だから、オレは前だけ見ていられる。」
「わかってなぁーいっ。」
私はずかずかとアルム様に近づく。
「アルム様、コレ、何かわかります?」
私は自分の首をアルム様に見せつける。
「これは・・・。」
私の首にはずっと紅玉のついた黒の首輪がついている。
出会って、リッヒニドスに着いてから買ってもらった物。
「私だけじゃなくて、私達はもうアルム様がいないと生きていけないんですよ?迷子と同じになっちゃうんだから。」
もうアルム様は私達だけの皇子様じゃなくなっちゃったかも知れないけれど・・・。
だからって、無理されるのも嫌なんだよね。
「迷子か・・・。」
アルム様の寂しそうな目、時折するこの目が大嫌い。
「だって、もう私達、アルム様に出会っちゃったもん。もう無かった事になんて出来ないんだから。」
「そうだよな・・・。」
「うひゃぁっ。」
黙り込んだアルム様が突然、私の腰を持って抱え上げる。
「沢山、お土産買って帰らないとな。今度は皆の分。」
そうそう、皇子様は何時も余裕を持ってこうじゃないと。
「あはは。視点高ーい。」
「ホリン、悪かったな。」
「いえいえ。」
私はアルム様の首に手を回す。
・・・う~ん、やっぱりアルム様のコト、大好きなんだなぁ、私。
今まで、自分がダークエルフ良かったと思えた事すら一度もない私に色んなモノをくれた。
そのままで、このままの自分で傍にいていいと教えてくれた人。
「アルム様、言ったじゃないですか。"私達から離れていかない限り"は一緒にいるって。」
目をじーっと見つめる。
まだ後ろ向きな感じがするなぁ。
「ちゃんと私を飼ってくれるんでしょう?」
ペロリとアルム様の唇を舐める。
唇が意外とぷにぷにしてて柔らかいんだよねぇ。
「あ゛ーっ!アル君達、何やってんの!」
もう、折角久し振りにイチャイチャしてたのに~。
「エスリーン様、気にしないで下さい。私とアルム様の儀式みたいなもんですから。」
「ぎ、儀式?!そんな儀式聞いた事ない!」
この人もアルム様に手を差し伸べられたクチなんだろうなぁ。
「だって、ダークエルフの儀式とかじゃないもの、ねー?アルム様♪」
「儀式だったのか・・・。」
呆れたように、でも、少し微笑んで。
何時もの良く見る表情。
「私とアルム様だけの・・・・・・愛の儀式?」
首を傾げて、とりあえず聞いてみる。
「あ、あ、あいの儀式って・・・。」
「正しくはないが、間違いでもないか。」
完全に否定しないアルム様。
なんか、可愛いなぁ。
あ、そういえば年下なんだっけ。
そう考えるとますます凄いなぁ。
「だって、私はアルム様のモノだもん。」
勢いをつけて、アルム様の唇に自分の唇を重ねる。
んふふ~、役得、役得。
最近、ずっとお留守番だったからね~。
これくらい、いいよね?
「あ、あ、あ・・・。」
横で硬直しているエスリーン様には悪いけれど。
「アルム様のお傍にいる女性だけの特権なんですよん♪」
「・・・あのなぁ、ホリン。」
ちょっと自慢しちゃった。
てへっ♪
私はそのまま、アルム様の耳元に口を近づけて・・・。
「皆、大好きですよ。"私達の皇子様"の事が。」
そう呟いた。
彼の無事を心から祈って・・・。
北を目指す皇子一行。
リディアを救う為に、神器の盗難の真相を確かめる為に。
一方、皇子の記憶の混濁が始まり、ついに・・・。
果たして皇子は帰りを待つ愛すべき者達の所へ帰れるのか?!
以上、Ⅳ章全44話、ご愛読ありがとうございました。
以降の連載は、何時も通り皆様の反応次第というコトで。