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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅳ章:黒の皇子は革新する。
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マツロがそこにあろうともってコト。 ~エピローグⅠ~【皇子の旅立ちと、】

「ぶはぁっ、重い・・・やってられん。」

 オレは自分から身につけていた鎧をさっさと脱いでいた。

「この重さはオレには無理だな。カーライル、これ、ヒルダに返しておいてくれ。」

 やっぱり、急に思いついて借りた物はダメだな。

他の装備に合わせて借りただけだし、仕方が無いか。

実はホリンの装備も、ルチルの装備も見栄え重視の借り物だ。

「さて、ここにずっと居ても、貴族様方に囲まれそうだし、さっさと撤収するか。」

 あれだけ高圧的に出ても空気の読めない貴族はいるだろうからなぁ。

もう意外と末期なんじゃないだろうか、この国。

「あぁ、エスリーンさん、先程はありがとうございました。」

 流石、グランツ姓。

向かうトコ、敵無しだ。

「どう致しまして。」

「何かお礼したいトコなんだけど・・・。」

 生憎、そんな時間的余裕も気力もない。

「先を急ぐもので。あ、ホリンもルチルも何時もの服装に戻っていいぞ。カーライル荷物の整理を。」

「急ぐってリッヒニドスに?」

「あぁ、城下の宿に部下と知り合いを待たせているんで。」

 なんか、やりにくいんだよな、この人の雰囲気。

何が原因なんだろう?

「その後は?」

「ホリンとカーライルはリッヒニドスに帰します。」

 別にホリンは、本当はオレの騎士でもなんでもないしな。

「アル君は?」

「オレは・・・。」

「姉さん!全く、貴女って人は・・・シグルド殿下が困ってましたよ?」

 唐突に乱入してくるニヤケ面の男・・・で、エスリーンさんを姉と呼ぶってコトは・・・?

「シュドニア?」

「いやぁ、坊ちゃん、覚えていてくれましたか。先程は格好良かったですねぇ。」

「・・・・・・この・・・バカニアぁっ!!」

 これまた更に唐突にエスリーンさんの正拳がシュドニアの腹に・・・めり込んだな。

「おぶぅっ。」

「全く、アンタのせいで、私に対するアル君の印象が悪くなったじゃないの!」

 今の一撃を見た限りでは、あながち間違いじゃない印象を持ちますが・・・。

しかし、本当にオレ、昔にエスリーンさんに会った事あるのかなぁ?

シュドニアはすぐにわかったんだけれど・・・思い出せない。

全く。

「い、意外と間違いじゃない印象だと思うん・・・ですけれどねぇ。」

 とりあえず、姉弟で盛り上がっているみたいだし、さっさと片づけを始めるか。

次はセイブラムだしな。

また砂漠地帯を越えなければならない。

騎士のルチルは別として、シルビアは侍女だから、旅の道程もそんなに強行なものには出来ないだろうし、出だしから躓くわけにはいかない。

「よしっ、準備が出来次第、カーライルとホリンは急いでリッヒニドスへ。残りの工事頼むぞ。」

「かしこまりました。」

「早く帰ってきて下さいよー。アト、お土産。」

「へいへい。」

 ホリンは相変わらずだ。

前も同じ事言ってたよな?

これって、これからオレが何処かへ行く度に毎回ってコトなのかな?

「カーライル、最悪の場合は・・・。」

「亡命者一名という事で宜しいでしょうか?」

 流石。

最後の手段だけどな。

「なにやら、物騒な話をしてますねぇ?」

「ん?そうでもないよ。秘密だけど。」

 横合いからニヤニヤと割り込んで来るシュドニアは、意外と平然としている。

「アル君は昔から、人の思考の一歩上を行くのが好きな人でしたからねぇ。もう何か起きてから楽しむ事にしましたねぇ。」

 あぁ、なんか、こんな反応の薄い事無かれ主義な感じの人だった気がする。

「亡命って、アル君、何処かに行っちゃうの?」

 エスリーンさんが、瞳をウルウルさせながら、オレを見上げる。

あぁ、このやりにくさとか距離感って、アレだよ。

ミランダに近いんだ。

どうりで・・・納得。

「別にオレが亡命するとかじゃなくて・・・まぁ、これからの訪問先からというか・・・。」

「秘密じゃなかったんですか?へぶらぁっ。」

 素早い蹴りで吹き飛ばされるシュドニア。

誰が蹴ったかはもうわかるだろう?

「ちょっくら北のお隣にね。」

 セイブラムはここから北の国だ。

隣国という意味では、お隣。

「あー、だったらついでに私も行くー。」

「え゛?」

「だってー、私、北東部の樹海の境界線の警備隊の教導だしぃ。北ならついで♪」

「全然ついでになっでびゃっ。」

 綺麗だな、踵落とし。

つか、それは死んだんじゃないか?

腐ってもグランツ一門だから大丈夫か。

クマも殺しても死にそうにないしな。

「ね?いいよね?アルくぅん♪私、昔よりずっとずっと強くなったんだからね!」

 昔、何があったんだろう?

バルドに剣を教えてもらいに行ってた時だよな。

大体シュドニアに会った時だって・・・ん?

シュドニアに初めて会った時・・・。

ディーンの剣を手に入れて、バルドに弟子入りして・・・それで。

「・・・勘弁してくれ。」

 もしかしなくても、オレ・・・記憶が欠落し始めて・・・る?

「はぁ・・・よし!さっさと北へ行くぞ。エスリーンさん、ついて来るなら急いで支度して!」

「ぃやぁったぁっ!」

 何を失くしたとしても、オレはオレ。

最後の最後まで、その刻が来るまで。

キリが良いので、土日更新致します。

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