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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅳ章:黒の皇子は革新する。
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ツカヌ事では済まされないというコト。【後】

「運動した後のお茶はいいなぁ。程よく力が抜ける。」

 長髪のお兄さんこと、クラム氏と椅子に座って優雅(?)にお茶。

特に話題もない。

質問とか聞きたい事は細々あったが、急務なモノは無いと判断。

ただ、あの槍がどの程度の威力を持った武器なのかという、さっきの質問にさえ答えてくれればオレはいい。

「あぁ、質問はさっきのあれだけで終わりだから。」

「はぁ・・・。」

 どう答えていいのかという表情だな。

「大体の話は向こうの尋問でわかるだろうし、君達が確認したかった事も半分は今、残り半分は数日中に答えられると思うよ。」

「あの皇子?皇子はどこまで予想や把握しておられるので?」

「それは自分がボロを出して、オレの知らない情報を言わないようにする為?」

 だとしたら、拙いなぁ。

カーライルなら、一つの質問で聞きたい事の大半を満たせる方法を考えるぞ、きっと。

「君達は恐らくこの周辺の国の人間じゃない。そして神器級の武器の盗難騒ぎを追っている。何故ならそれをされると困る理由があるから。その理由はオレは知らない。ただ、神器級の武器を持つ人間が動いているのだから、事態は深刻なのかも知れない。」

 強い武器を持つ者は有名になる。

でも、オレはそんな人物を聞いた事がない。

クロアートのアイシャ姫からも、セルブのラスロー王子からも、セイブラムのリディア先生からも。

更に各国の優秀な人間が集まる、見栄の博覧会の学舎でも見なかった。

オレが知らないだけだという事もあるが、だったらそんな秘蔵っ子を派遣する時点で事は重大という事だ。

よって、先程の推測と。

ただ神器が盗まれるという意味がわからない。

神器級の武器は使い手を選ぶから。

ただ例外があって、オレはそれを知っているという・・・ね。

この偶然は、何の因果でしょうかね?

「おおよそ合っています。・・・あぁ、やっぱり仕える人間、間違えたかな。」

 いや、そこで後悔に落ち込まれても困るんだけれども。

「もう面倒なので、ばっさりと行きましょう。先程、私の質問に答えられると言ったのは?」

 諦めと、転換早いなぁ。

「先日、クロアートの姫君と会った。彼女は神器の盗難の事なんか一言も言わなかった。」

 あったら絶対、彼女はその事をオレに述べるだろう。

「そんな国家の一大事を他国の、それも皇子に話しますか?」

「彼女はオレの婚約者(候補)だ。」

 うわぁぁぁ~ッ!

背中がムズ痒いー!!

言ってて色んな所が痛いよ、オレ。

「しかし・・・。」

「それに一度オレ達は、神器級の武器の盗難を目撃している。勿論、犯人もね。」

「それは!」

 椅子から勢い良く立ち上がったクラムは思わず茶器を落としそうになって、慌てて座り直す。

「はいはい。落ち着いてな。今、このリッヒニドスは改革の真っ最中なんだ。そしてこの州の民の生活水準の底上げを画策しててね。」

 ガンガン仕事して、生産力を上げ、その分の税を減らし民を豊かにする。

豊かになった分は、娯楽や教育に使う。

生きるという事を精一杯やってもらう為に。

「それと、何の関係がというような顔をしてるね。手始めに治水、次に教育機関。その為に知り合いに協力をお願いしたんだ。セイブラム法皇国の枢機卿に。」

 あの人、教育熱心だからなぁ。

この話に乗ってこないわけがない。

書いた手紙の返事はもう届いていて、内容的にはこの返事がオレの所に来る頃にはこちらに向けて出発しているだろう旨が書かれていた。

「あの国の神器、正確にはその複製だが、盗難にあっている。詳しい事情が聞けるだろうし、何より追っているモノが共通なら、手も貸せなくはない。」

 犯人の居場所がわかるなら、そろそろ"預けたモノ"を返してもらわなくてはならない。

「はぁ・・・何というか・・・。」

「何?」

「酷く遠回りな事をした気が・・・最初からこちらに来ていれば良かったです。」

 あらあら、ぐったりしちゃったよ。

別にオレが悪いわけでもないけれど、ちょっと気の毒にはなるな。

「仕方ない。オレは国の神器を継承しているわけじゃないし、およそ神器とは全く無縁の第二皇子だからね。まず注目自体が集まらない。」

 なんだかんだで、今現在は注目が集まっているようなカンジではあるが、それも一過性のもの。

中央では、第二皇子のお遊び。

政治ごっことしか取られないようになって、忘れられるだろう。

リッヒニドスの州内では、常に注目されまくっているけど。

これはこれで、州限定という事で目を瞑る事にしよう。

でないと、やっぱり居た堪れない。

「何でこぅ、神器というのは奇人・変人ばかりを選ぶんですかね。」

 ヤケ酒ならぬヤケ茶(?)を呷るクラム。

味も香りもあったもんじゃない。

「あ、やっぱり、アレ神器なんだ。」

「えぇ、今は亡き国の忘れられし名の神器です。元来ここからずうっと北東の国にありました。」

 神器が他にまだ存在しているのは、書物の類いから知ってはいたが・・・随分と辺境にあったもんだ。

この国から北東。

位置的にはセイブラム東の方か?

確か未開の地だった・・・はず。

「樹海だよな?あの辺りって。」

「そして、俺様が樹海の傭兵王ハディラム・ジューザ様だ!」

「・・・本当、クラムさんの言葉、一理あるわ。」

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