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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅳ章:黒の皇子は革新する。
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ソウジャは常に全力勝負ってコト。【後】

 順当に試験が進むと当然、同じ組だからアイツと当たるわけだ。

正直に言おう、勝てる気せず。

うん、絶対無理。

まずあの速度に勝てない。

全身鎧だし、この鉄仮面視界狭いし。

あっという間に死角を突かれて、敗北。

ザッシュ相手にさっさと降参したのも、これが大半の原因。

一応、自分の基本装備一式はレイアに預けてあるけれど、正体バレてまで戦うのもどうかと思う。

「トウマ・グランツ、トムス、前へ!」

 ほら、呼ばれちゃったよ・・・どうしようかな。

開始直後に降参とかするか?

それが堅いのか?

つか、トムスってどうせ偽名だろ。

「はじ・・・。」「まいっ・・・。」「言うなボケェ!」

 怒声と額からカツンという音がして、軽い衝撃。

何かを投げられた?!

というか、今、始めの合図より早くなかったかっ?!

「どらぁッ!」

 次の瞬間、目の前の男、トムス(恐らく偽名)がオレに向かって飛び込んで来る。

「ぬをっ!」

 その勢いを殺せず、二人とももんどりうって地に倒れる。

「オイ、茶番はヤメろや。」

 額と額を付き合わせた距離で、奴は囁く。

「互いに本気と違うってんのは、わかっとるやろ?」

「何を・・・。」

「本気を出せ。いいな?本気で戦えや。」

 そう言うとオレの身体は軽くなる。

男がどいたからだ。

そのまま男はてくてくと歩いて行き、戦っていた場所の外れにじゃがみ込む。

「でないと死ぬかもな。」

 ゆっくりと立ち上がった男の手には長い棒。

最初にアイツが背負っていたヤツだ。

「レイア!オレの剣と盾を!」

 冗談じゃない!アイツはヤバい!

あれがアイツの本当の得物。

レイアに叫びながら、オレは余計な防具を脱ぎさっていく。

「戦えば、他には手は出さないな?」

 アイツの口ぶりからして、要求はオレと戦う事なのだろうか?

もしかしたら、殺す事かも知れないが。

だが、あの装備を先程の速さで振られたら、ザッシュ以外の他の人間はどうなるかわからない。

多分、今のアイツはこの場にいる誰よりも実力が上だ。

「アルム様・・・。」

「レイア、バルドを呼んで来い。それまでオレがなんとかする。」

 レイアから装備一式を渡され身に着ける間、ヤツは動かない。

それがオレと戦うという目的を証明している。

・・・マズいな・・・。

「用意はえぇか?」

 最後の鉄仮面を外すと、オレは最初から長剣を二本とも抜く。

銀剣の力で世界が広がる感覚。

そして、オレがヤバいと感じた直感の警告音も大きくなる。

「来いッ!」

 退くわけにはいかず、オレの一言でヤツはオレに突進する。

構えた瞬間、繰り出される突きを何とか紙一重で。

得物の正体は"槍"だ。

両刃の直剣の槍。

その付け根に蛇のように二本の蔦の様なものが絡まっている。

「もういっちょっ!」

 ぐんと引き寄せられる槍の速度に、身体を持っていかれそうな錯覚を覚えた瞬間、すぐさま突き出される。

それが二回、三回と・・・どんどん早くなっていく。

埒があかない!

反撃の隙をどう作るかだ。

オレが隙を作るか?

いや、この早さだとそんな事をしたら、オレが串刺しだ。

拡大した感覚で何とか捌いてはいるが・・・。

と、オレの感覚がある存在を知らせる。

「ぐらぁぁーッ!」

 乾いた金属音が辺りに響き渡る。

槍の軌道を盾で逸らした音だ。

盾には前に一度だけ見た紋様が浮き出ている。

盾が発動して・・・て、コトはあれは最低でも付与された武器。

しかし、この隙を逃すワケにもいかない。

オレはそのまま盾を滑らせるようにして、ヤツに肉薄しようと試みる。

「チッ!」

 突進しながら、慌ててもう一方の盾を前に出す。

ザッシュの戦いの時の動作を思い出したからだ。

一拍遅れて盾に来る衝撃。

渾身の蹴りだ。

コイツ、徒手と槍が主体だ。

さっき短剣使ってたもんな。

「ヤルな。だが、オレは本気を出せと言ったんだ。」

 何を言ってんだ?コイツ。

「"オマエのチカラ"を見せろ!」

「ワケわかんないコト、ぬかすな!」

 無理矢理オレはぐるりと身体を回し、ヤツの肩口に蹴りを浴びせる。

「ぐっ・・・やるやんけ。これだけやってもまだ隠すんなら、俺様も本気を出してやらぁ!」 「ヤメんかバカタレ。」

「あだッ!」

 鈍い音がヤツの後ろからして、蹲る。

ナニ?

「全く年下の格下相手にムキになって、馬鹿なんですか?脳ミソ空っぽですか?死にますか?」

 一言、一言区切る度に蹲ったヤツの身体にげしげしと蹴りが入る。

蹴っているのはヤツと一緒にいた長髪の男だ。

「大体、アンタは行動も考えも人間としての造りもザルなんですよ、ザル!」

 整った美形の部類に入る顔にしては、出て来る言葉の全てが酷い。

「もう、なんでこうダメダメなんですか?あぁ、私もどうせなら、こちらの皇子に仕えたいくらいですよ、本当に。」

 汚物でも見るような蔑む目で見下す様は、ここまで来ると逆に清々しいというか・・・。

「で、結局、アンタ達は何処の誰で、目的は?」

「はぁ・・・これですよ、この冷静さと状況判断。どっちもアンタには無いモノですよ?少しは見習いなさい。聞いてるんですか?」

「・・・あの、彼、多分、気絶してる・・・。」

「・・・・・・軟弱な。」

 えぇ~?!

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