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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅳ章:黒の皇子は革新する。
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ソウジャは常に全力勝負ってコト。【中】

 一次試験の筆記を先にやったせいか、周囲にはそれほど抜きん出た武芸者は見られない気がした。

まぁ、武が突出している人間は、大抵何処かの国に所属しているからという事もある。

だが、知識に比重を置いた騎士団は少ない。

大体、騎士団の高い地位にいる人間なんざ、貴族、貴族、貴族!

うんざりする。

オレは時に自分で考えて行動する騎士団員が欲しいんだ。

「参りました。」

「ありがとうございました。」

 目の前の相手との対戦を終え、一息。

全身鎧のせいか、疲労の度合いが高い。

というか、身体が重い。

・・・そりゃそうか。

今の対戦相手は、筆記の試験もそこそこ良かった人間だ。

剣術も双剣だったが、動きも悪くない。

充分、合格圏内に入っているだろう。

(しかし・・・全身鎧って意外と暑いんだな。)

 レイアはよくこんなのを着て動き回れると思う。

あぁ、でも長時間の戦闘は厳しそうだな。

アイシャ姫は当然別格。

「さてと、次は・・・。」

 次の対戦相手をチラリと見る。

鉄仮面の利点は防御力と視線がわかりづらい事だな。

そう思っている間にザッシュが呼ばれる。

ザッシュは手数と速さと熟達した双剣さばきで危うげなく勝ちを重ねていた。

目下のところ、負けナシ。

ちなみにザッシュは同組なので、オレとも戦った。

まぁ、開始直後に参った宣言をしたが。

不正と言われ兼ねなかったが、ザッシュとなんか何時でも戦えるし。

やる気満々のザッシュは、一人でズッコケていたが・・・いやま、傑作。

そんなザッシュに対するは、例の気になっている男。

短髪の方だ。

扱う武器は・・・双剣?

にしては小さいな、短剣くらいの長さだ。

しかも直剣ではなく、左右に張り出すように副剣がついている。

あれで、相手の剣を引っ掛けて受けるのだろうか?

互いに構えても、随分と前傾姿勢。

半身でかなり足を後に引いている。

見たこともない武器に、不思議な構え。

少し胸がざわつく。

「始めッ!」

 合図と共にザッシュが距離をつめる。

互いの剣は空を切り、それでも出を出し続ける両者。

相変わらず早いのだが、受け止めるという考えも暇もないように思えるくらい、それをかわし続ける。

「ん?」

 両者が一瞬間を取って構え直す瞬間、短髪の男の構えが一瞬だけさっきと変化したような気が・・・。

「参った。」

 次に唐突の男がその言葉を発して、去って行く。

「なんだったんだ?」

 一旦退いて、両手を身体の左側に重心ごとズラしていた。

オレは気になって、戦いを終えたザッシュに近づく。

「・・・全く、こんなとこで何やってるんスか?皇子。」

 あはは、動きを見られているんだから、やっぱりバレるか。

「オレはトウマ・グランツだ。」

「そうグランツ姓がぽこぽこいて堪るかっていうんス。」

 ごもっとも。

反論の余地ナシ。

「ところでザッシュ?」

「そんな暑苦しい鎧まで着ちゃって・・・て、何スか?」

 いや、好きで着ているワケじゃないんだよ、オレだって。

これには深い・・・そんな深くはないワケがあるんだ。

「あの相手、最後どうしたんだ?」

 あの動きはどう見ても不自然だろ。

「あぁ、舐められたもんス。」

 オレの問いにぷんすかと怒り出すザッシュ。

珍しいな、こういうザッシュも。

「途中から手を抜いてきたんスよ。んで、距離を取った後、攻撃に出ようとして気づいて降参。」

 あ~、腹立つっス。と一人ぷりぷりしているザッシュは面白いが、それは置いといて。

「気づいたって何をだ?全く言っている意味がわからんぞ?」

「自分が持っている得物っスよ。」

「得物?」

「多分、普段使ってる得物が別なんス。だから一瞬、何時もの動きをしようとして遅れるっス。気づかなかったスか?」

 面目ない。

端から見ている分には、最後の動き以外は何となくしか判らなかった。

これが経験の差というヤツだろうか・・・。

「最後の以外は・・・。構えた瞬間は嫌な予感というか、胸がザワついて離れたいとしか。」

「・・・皇子って、意外と野生味あるっスね。」

「どういう意味だよ?」

「良くも悪くもグランツ一門ってコトっス。」

 うぐっ?!

何という言い様・・・というか、言ってはならん事を!

「オマエこそ、そういう所、カーライルにそっくりダヨ!」

「ぐっ?!」

 お互いに何かが刺さるような音の後・・・。

「フフフ・・・。」

「ははは・・・。」

「フフフフフ。」

「あーはっはっは。」

 どう見ても危ない二人間違いなかった。

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