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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅳ章:黒の皇子は革新する。
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レイメイが無くても前に進めるというコト。(バルド視点)

「これはこれは皇子、何用ですかな?」

 黒髪に黒い瞳。

ヴァンハイト皇家の幼い第二皇子。

誰からも望まれず、期待されずにいると"思い込んでいる。"

皇国の歴史の中で黒髪の持ち主は三人。

更に黒い瞳を合わせて持つ者は皇子を入れてたったの二人。

およそ皇家にはありえない容貌。

「バルド・グランツ卿。オマエはこの国で一番強いと誰もが認めているそうだな?」

 だからこそ、待ちわびた。

この皇子は必ず剣を取ると。

「自分ではそうは思いませぬが、皆の評価ではそうなりますな。」

 たとえ色は違えど先代と同じ瞳。

こういう人間は大抵モノになる。

例え極める事が出来ずとも、人としては十二分に完熟する可能性があるのだ。

「ならば、頼む。オレに剣を教えてくれ。」

 シグルド皇太子より二年は早い。

「何故ですかな?」

「オマエが一番強いからだ。それに・・・。」

「それに?」

「オマエが"長剣使い"だから。」

 この皇子との共通点があるとすればコレだ。

共に自分が"異端"であるという事。

「確かに長剣使いではありますが、この国は双剣の・・・。」

「言うな。オレは長剣を使えるようにならなければいけないんだ。」

 堅い意志。

どうにも曲げるつもりはないらしい。

(長剣を使わねばならぬか・・・。)

 脳裏に一人の男の顔が浮かぶ。

その顔に生き写しのようにそっくりな幼子。

決意は揺るがぬものなのだろう。

だが、それだけでは何も出来ぬ。

出来ぬ事の方が多いのだ。

だから、自分はこの国に来た。

「しかし、皇子。強くなって、それからどうするおつもりなのですかな?」

 さて、どう答える?

「わからん。」 

「は?」

「わからない。けれど、何時か、その時が来たら・・・何も出来ずに後悔するのは、泣くだけでいるのは嫌だ。」

 いやはや、自分が皇子と同じ年頃の時はどうだったか・・・ここまでしっかりとしていただろうか?

そんなはずはないな。

鼻タレのクソガキじゃったわい。

人は持つべき器に見合うように成長すると言うが、これはちと出来過ぎですな、先代。

惜しむらくは、この器を以ってしても第二皇子という事実はどうにもならんという事か・・・。

「皇子が長剣を極めたいという強い気持ちは理解しましたが、ここはヴァンハイト、そして貴方は皇子。最低でも、双剣の型は身につけませんと。」

「双剣も扱えるのか?!」

 うぅむ・・・素直に驚かれると照れますな。

全く今までの弟子共の可愛くないコトが浮き彫りではないか。

「では、それを含め是非頼む!」

 皇子の皇子である為の戦いは、あの時から始まったワケですな?

とはいえ、双剣を教えたのは"こちらの都合"なんじゃが。

「皇子、覚悟は宜しいですか?」

「あぁ、望むところだ。」

 あの時と同じ言葉をかけると、あの時と同じ強い瞳で頷く。

今度は絶対最後まで見届けますぞ。

ようやくこの城、リッヒニドスに帰ってきた。

長い時を経て、"黒の皇子"がこの地に・・・。

恐らく皇子があの時言った"何時か"はもうすぐなのだろう。

だから、皇子は新たな強さを、より強い力を求める。

(しかし、不思議と心配にならんのじゃが・・・。)

 きっと皇子が"力の本質"をきちんと理解しているに他ならないからなのだろう。

「それでは後程、"トウマ・グランツ"。」

 そう言って、"最後の"グランツ姓を名乗る少年を苦笑しながら見送った。

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