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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅳ章:黒の皇子は革新する。
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タが為の試験ってコト。

 イライラ。

うん、イライラだ。

オレは今、イラついている。

ザッシュの突然の宣言があった夜から、一ヶ月半近くが経った。

その間の仕事は、特に問題もなくすこぶる順調。

まぁ、天候が悪くて工事の工程は、そこそこの進捗具合い。

じゃあ、何故こんなにイラついているかと言うとだ。

「アルム様。」 「遅い!」

 執務室に入ってくるカーライル。

コイツを待っていた。

オレはずかずかと歩み寄り、彼が手にしていた資料の束をぶんだくった。

「守備は?」

「は。受験者総数は約五百名強。一次試験突破者は百四名になります。」

 オレの態度に何ら表情を変える事もなく、カーライルは報告を始める。

この報告、例の騎士団員選抜の試験結果だ。

「それよりも約五百名とは聞いていたが、何処からわいてきたんだ?」

 獣人・亜人、ダークエルフに人間と実に多種多様の受験者だった。

「中には記念や話の種に。という者も居たようです。」

「官吏の登用試験の時は、一時金取るか?合格したら、即返却とか?」

「合格する自信のある者は、州の方から貸し付けるような制度がないと、低所得の人間は大変ですね。」

 思いつきで言った案に、直ちに修正案が出てくるこの優秀さと真面目さ。

冗談って通じるのかね?

選抜試験の第一次試験は筆記試験だ。

官吏としての初歩的な問題で、なるべくこれだという唯一回答のない、自分の考えを述べる形の記述式。

これを用意させた。

させたというのは、問題の作成にはオレは何も関わっていないからだ。

「ところで、カーライル?」

「何でしょう?」

 オレは合格者一覧の名前が載った表を次々とめくっていく。

「これは得点順に記載されてたりするのかな?」

 名前と種族・出身以外は何も書かれていない表は、何かの規則性があるようには見えない。

「はい、一応そのようにした方が良いかと思いまして。」

「そうか・・・あのさ、カーライル?」

「面目ない。」

 一言。

何の説明もなく、言い訳すらなく。

仕方なくオレは合格者名簿を見続ける。

「あ・・・。」

 合格者名、下から四番目。

そこにようやく探していた名前が・・・。

「勘弁してくれよ、・・・ザッシュ。」

「誠に遺憾です。」

 いやさ、別に一番の成績で合格するとか言われてないからいいさ。

「でもさ、コレ、本気?」

 カーライルも掴めないけれど、十分ザッシュも掴みづらいからなぁ。

この辺、やっぱりちょっと似てる。

「アレの突拍子の無さと、世の中を舐めた態度は筋金入りですから。」

 バッサリだな、仲良いのか?

「よくそんなのでやってこれたな。」

「自分もそう思います。」

「いや、"オマエ達二人が"。」

 ピクリと眉が動いたな。

「ともかく、アレの思考をあえて読むとしたら、一番の成績だろうと最下位の成績だろうと、合格は合格で大局的に大差ない。とかそんなところでしょうか。」

 オレもちょっぴりそうかなとは思うが、本気でやって実はコレという説でも否定はしない。

「それよりも。」

 コホンと咳払いをして、オレの手元の書類に視線を向けるカーライル。

うぅ~ん、何かこの間の作り方が恐いんだよなぁ。

「自分としましては・・・その上から二番目辺りにある御仁が気になるのですが?」

 チッ。

やっぱりそこに気づきやがったか。

「"トウマ・グランツ"という方なのですが。グランツ家の人間を招聘なさったのですか?」

 ・・・だって、他に思いつかなかったんだもん。

「グランツ姓を"名乗れる"方は、バルド殿の他に三、四名しかいないと記憶しています。」

 このほぼ確信を持っているのに遠回しに言う嫌味な感じ、どうにかならないのか?

「いずれの方も、国内の様々な場所で任についているはずですが?」

「あぁ。」

 対するオレの歯切れの悪いコト悪いコト。

「その割には、バルド殿が何も仰ってこないですね。」

 ちくちく来るカーライルの口撃にオレはいっその事、口笛を吹いて目線を逸らしてとかやってみようかと思った。

だって普通、こういうのってやるからには本気でやるだろ!

手を抜いたら、他の人間に失礼だろ!

というか、まさかこんな順位の結果になるとは思わないだろォォ~。

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