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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅳ章:黒の皇子は革新する。
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ヨコ一列で歩いて行く為に必要なコト。

 屋上庭園。

城のかつてはそう呼ばれていた一画。

そこから、一人夜空を見上げていた。

ただでさえ考え込むタチだから、一人の時間というのは本当は願い下げと言いたいけれど。

でも、今は一人になりたかった。

なんとなくそういう気分。

「つくづく運というか、周りに恵まれてるよな・・・。」

 自分の行動の結果という考え方もあるけれど、人の出会いなんてもんは運だ。

どうやら、オレは意外とこの運だけには恵まれているらしい。

それくらいは思ってもいいだろう?

「その割には、何でもかんでもやり過ぎな気がするっスよ。」

 両手を胸元で振りながら、オレの顔を覗き込む男。

「・・・仕事はどうした?」

「たまには男同士の会話もいいかなぁと思ったっス。」

 全然答えになってない。

何処までおどけたら気が済むんだ?

オマエは喜劇に出てくる道化か。

「あ、今、確実に呆れたっスね?」

 非難じみた視線を向け、ザッシュはオレの傍らに許可も取らず座り込む。

「男同士の会話なら、カーライルとしているぞ?」

「アノ人にマトモな会話が出来ると思わないし、信じないっス。」

 ザッシュよ、何があった・・・。

主にそう思うに至るまでの過程を。

「アノ人もある意味、皇子とソックリっス。」

「オマエも大概失礼だな。」

 オレはあんな冷血そうに見えるのか?

って、オレも大概だな。

「今はそんなでもないっスけど、昔は皇子みたいだったっス。」

 余計に想像がつかんな。

ある意味、兄上に次ぐ完璧人間に近い気がするし。

オレはとりあえず、ザッシュの横に同じように座り込む。

「なんでもかんでも、一人でやっちゃうんスよね、アノ人は。しかも、無駄に優秀だからデキちゃうんスよ、大抵のコトは。」

 あはは、と渇いた笑い声を上げるザッシュだが、心なしか顔が引きつっている。

これは、アレだな、深く突っ込まない事にした方が良さそうだ。

「オレはそんなに優秀じゃないぞ?」

「本気で言ってるっスか?・・・あー、本気みたいっスねぇ・・・これだから全く。」

 ナニか悪い事をしたか?

それともアレか?

この前の仕返しか?

「皇子?一人で出来るってコトと、一人でするってコトは物凄い違いがあるっスよ?」

 どてんっと、床に大の字になるザッシュはそのまま瞼を閉じる。

まさか、ただ仕事したくなかっただけじゃないだろうな?

オレをそういうのに利用するなよ?

「一人で出来るからって、一人だけでやっていいとか、何がなんでも一人でしなければいけないってコトとかってないっスよ?」

「オレは別にそんな・・・。」

「そうっスねぇ、皇子はちゃんと周りを大切にしてるっス。でも、それは端から見れば支えられる事によって、皇子が自身に踏み込まれるのを拒否しているようにも見えるっス。」

 そんな事はない。

オレは皆に感謝しているし、支えられていると思っている・・・でも。

「でも・・・そういう事はない・・・とは言い切れないかも知れない。」

 皆を信頼しているけれど、オレという人間の内面を全て見せる事はしていない。

話せる内容でもない。

「恐いっスか?」

 恐くないかと問われれば、恐い。

真実は当人のオレですら、残酷だと思う。

「ま、それは誰も同じだからある程度は仕方ないっス。問題は皇子が一人でひょこひょこ出歩いて何でも一人でやってしまうコトっス。」

 瞼を閉じたまま、腕だけを上げひらひらと振るザッシュの気だるげな態度を見ていると、何処までが真面目な話なのかわからなくなる。

あえて重くならないようにしている気もするし。

「そりゃあ、何処までいっても人は独りかも知れないっスけど、皆、皇子の力になりたいんスよ。少しは誰かを使うってコトを覚えないとダメっス。」

 ひらひらと振られていた手は、何時の間にか止まっている。

今度はぴんと伸ばされた人差し指がくるくると宙を回っている。

「誰も皇子にコキ使われてるなんて思わないっス。皇子、信頼って人間関係は綱引きなんスよ。引っ張ったり、引っ張られたり。それで成立するんス。」

「単純そうに言っているようだが・・・?」

「難しいっスか?仕方ないっスねぇ、皇子は。」

 何か、久々にダメ皇子的な扱いに直面。

いや、実際、ダメ皇子か否かと問われたら、ダメ皇子という認定を否定し切れないんだが。

「じゃ、一つ、練習といくっスかね。」

「練習?」

「受けるっス。」

「何を?」

「皇子の騎士団員選抜試験。」

 ザッシュが?

試験を?

「と、いうか、オマエ、仕事は?」

 思わず横たわっているザッシュの顔を覗き込んだ。

依然として、瞼は閉じられたままで表情からでは感情が読み取れない。

「だから、男同士の会話もいいかなぁって、さっき言ったっス。」

 コイツは・・・。

「皇子には剣が必要なんスよね?剣はレイアさんや他の騎士団員がいるっスけど、盾も必要っスよ。」

「オマエは・・・ザッシュの人生はそれでいいのか?」

「さぁ?それは終わってみないコトにはわかんないっスね。」

 ・・・似たような会話を最近したな。

「まぁ、このまま何処ぞの"州太守代理様"に仕えるよりはマシっスかねぇ。」

 本気度合いが量りかねるぞ、その発言。

「ザッシュ・・・。」

「なんスか?」

「試験、落ちるなよ?」

「ありゃぁ~、それは流石に格好悪いっスねぇ~。」

 あはは、と苦笑するザッシュに嘆息してから、オレは彼の隣に自分の身体を横たえる。

かつて庭園だったそこから見る星空は、やっぱり何時もと同じ星空だった。

ザッシュが再び皇子一行に復帰を決意。

足早な展開ですが、次回!騎士団員選抜試験編です。

果たして新キャラはどんなヤツが出てくるのやら。

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