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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅳ章:黒の皇子は革新する。
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ワカゲの至りにも色々あるというコト。【前】

「間に合ったか・・・。」

 亜人の儒者と一緒にいる真紅の全身鎧のアイシャ姫。

そして、細剣を腰にさし、軽装の鎧姿のラミア。

「全く二人とも何やってんだか・・・。」

 やれやれと溜め息をついてしまう。

「あ、アルムお兄様・・・。」

 オレの姿を見て、駆け寄って来るサァラ姫の表情も不安げで沈んでいる。

あぁ、可愛い顔が台無しじゃないか。

オレは彼女を片腕で抱き寄せ、耳元で囁く。

「大丈夫だよ。」

 全く、妹にまで迷惑をかけやがって。

「二人とも、何をしている?」

 出来る限りの凄みを効かせて二人を睥睨する。

「見ての通りの手合わせですわ。」

「止めるなよ?」

「止めるわ、馬鹿者。人の城の敷地で何やっとんじゃ。」

 迷惑この上ないです、えぇ。

二人とも少しは冷静にオレの身になって、考えてみろってんだ。

「いくら、オマエの頼みでも私は止めんぞ。」

「止めると言ってるだろうが。」

 コイツ、何言ってんだ?

頭に血が上ってんのか?

いや、それはオレも同じか。

「全く、アイシャ姫もこんなのに付き合わなくても・・・。」

「こんなのとは何だ!」

 あー、もうこの際、コイツは無視。

「あら?」

 従者に自分の得物を持たせたまま、首を傾げるアイシャ姫。

何か、この首を傾げる癖を持つ人間って、オレの周り多くないか?

「私がこういう手合わせ、決闘の類いに乗る人間だというのは、アルム様もご存知では?」

 ん?

あぁ。

初めて彼女に会った時も、二回目に会った時も、手合わせ・決闘の類いだったな。

て、本当に馬鹿なの?このは。

前回の事で、少しは変わったのかと思ったら。

というか、前回も前々回もオレが介入して止めたんじゃないかよ。

・・・オレが、か。

「じゃあ、オレがそういうのに介入してでも止めに入る人間だって知ってるよな?」

 朝から何度も溜め息つかせんなよ、本当。

「えぇ、勿論。」

 極上の笑顔を見せられたって、癒されたりしないから。

・・・うぅむ・・・これも縁か。

「ラミアもラミアだ。何時も何時も直情的で後先考えないで。昨夜のことで反省したんじゃないのか?」

 じぃーっとオレがラミアを見ると、思い出したのか、途端に表情が赤くなる。

肌が黒いから判り辛いが、最近はオレにも多少判断出来るようになった。

「あ、あれはだな!」

 多少は反省しているか。

「あれと、これとでは意味が違う!」

「ほぅ、どう違うんだ?説明してもらおうか?」

「そ、それはだな、その、何というか、"ケジメ"だ。」

「何の?」

 この二人で戦う事に、どんな意味があるのか本当、心の底から理解出来ん。

大体、意味とか理由があってもきっとロクなもんじゃないだろう。

「オマエの婚約者としての座だ!」 「そんなもの賭けるな!!」

 今の大声、オレは悪くない、悪くないぞ。

絶対に悪くない。

「全く相変わらずなんだから。」

 "ケジメ"ね・・・。

オレはふとアイシャ姫を見る。

彼女はあれから・・・。

オレが"彼"を手にかけ、何も言わせずに去ってから、何を考えたのだろう・・・。

自分が何も出来なかった事を恥じただろうか?後悔しただろうか?

いや、それ以前に泣いたのだろうか?

きっとそうなのだろう。

彼女は、"オレの知っているアイシャ"はそういう人だ。

「はぁ・・・そういう事なら、オレにも考えがある。」

 オレだって"ケジメ"とやらがどういう時に使うものかくらい、理解しているつもりだ。

まぁ、皇族のオレのつけるケジメなんてのは、自害くらいしか本当はないのだろうが。

「何だというのだ?」

 はぁ・・・オレって実は我が侭かも知れない。

今更、自覚。

いっその事、自分で自分の事を"オレ様"って言おうかねぇ。

・・・ヤメとこ、マヌケ過ぎるから。

「アイシャ姫。いや、アイシャ・エル・クロアート。」

 既に二回やったんだ。

三回やってもどうってことないだろう、アルム。

三回だって同じだ。

「この"トウマ・グランツ"と勝負しろ。」

 彼女の戦いに介入するには、彼女と戦うにはこの名前じゃないと。

「"トウマ"さんがそう仰るのなら、喜んで。友達ですものね。」

 全く、何が友達だ。

友達同士が喜んで決闘なんぞするかっての。

それ以前に友達同士じゃなくて、婚姻相手候補だろう。

「オイ、オマエ!」

「悪いな、ケジメをつけるなら、戦うのはラミアじゃないオレだ。」

 ヤレヤレ。

元々、勝負自体が変だという事に気づけよ。

「アイシャ、オレが勝ったら結婚してもらうぞ。」 「アルム!」

「だってさ、ラミア。君は婚約者の座を賭けてたんだろ?オレも結婚くらい賭けないとな。」

 オレの言葉に更に反論しようとする彼女の唇を指で押さえ、アイシャ姫に向き直る。

「で?返事は?」

「よろしいですわ。」

「レイア、オレの残りの武具を取ってきてくれ。」

「かしこまりました。」

 レイアはこのやり取りに一言も口を挟まなかった。

信頼だろうか・・・心地よくもある。

「悪いね。」

「いえ、どんな時もアルム様に従うだけですから。」

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