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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅳ章:黒の皇子は革新する。
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ルイショウは想いを焦がすというコト。【後】(ラミア視点)

 うっすらとした明かりが差し込む。

少し霧がこめるこの地方特有の朝。

目覚めて何時もと違う感触の為に、はたと思考が止まる。

珍しくうつ伏せに寝た胸が苦しい。

少し弾力のある固さ。

「あ・・・。」

 私の右半身の下に重なった人影。

そうだった、昨夜はアルムの部屋で寝たのだった。

「改めては思い出したくないな。」

 我ながら直情型だとは思っていたが・・・今回は酷い。

自分でも落ち込む。

「だが。」

 安らかな表情で眠っているアルムを見ていると、悪くはないな。

そういう想いが浮かんでくる。

これは一晩を共にした者だけの特権というヤツか。

「悪くない・・・ところで、重くないのか?」

 私は背が高い方だから、それなりの重さがあるはずだが・・・。

そうだな、あれだけの速さで動けるのだから、この程度重くはないのだろう。

自分の武を主張したがる我が一族の男達と違って、アルムはそういう自分を見せない。

見せたがらない。

だからこそ、普段のあのマヌケ面がアルムそのものと思いがちになる。

だが、アルムは相当強い。

実戦に即した強さだ。

それは私を集落で助けたあの時に目の前で見ている。

「・・・見られたな。」

 思えば、あの時に私の裸は見られているのだがら、今回の事は今更ではないか?

とは言え・・・。

「やはり恥ずかしい。」

 男の寝所に深夜忍び込んで、全裸で、しかも馬乗りで迫るなんて。

「オマエも悪いのだぞ?」

 アルムの黒髪を撫でる。

アルムは私の、私達の肌を美しいと言うが、アルムの黒髪だって綺麗だ。

漆黒の髪と瞳は、時折吸い込まれそうな夜の闇を彷彿とさせる。

「ふふっ。」

 撫でているうちに笑みがこぼれる。

妹のサァラ以外に、頭を撫でるのが楽しいと思ったのは初めてだ。

ん?

アルムの黒髪の中に数本。

左前髪に色の違う髪がある。

白髪か?

我が一族にはない現象だが、人間は老化の過程で頭髪が変色する者がいると聞く。

「白くはなくても白髪というのだろうか?」

 白髪というくらいだから、色が抜けた白だとばかり思っていた。

これは・・・金か?

確かアルムの一族は、金の髪に蒼の瞳の者が多いと聞く。

これは・・・もしや、ちょっとした"私だけの"新発見かも知れんぞ。

何やら、楽しいではないかっ!

一緒に寝て、寝顔を見て、触れて・・・そして、ちょっとした新発見。

それがこんなにも顔が、頬が緩むような事だったなんて!

「ん・・・。」

 突然アルムが私にすり寄るように寝返りを打つ。

「大丈夫だ、私は逃げたりしないぞ?」

 思わず口から出た。

相手が寝ているから言える言葉。

アルムは余りにも無防備だから・・・。

私も彼を抱き寄せてみたくなる。

っと、私は裸だったか。

寝台の近くに投げ捨ててあった夜着を起きて身にまとう。

アルムはまだ眠ったままだ。

ふと昨夜、私にかけられていた掛け布が視界に入る。

「・・・これは借りて行くぞ。」

 夜着の上から、その絹の掛け布を巻き、なんとなく鼻を近づける。

「アルム、オマエの匂いがするな。」

 眠っているアルムの頬にくちづけをして、部屋を後にした。

「あら?」「ん?」

 早朝から目がチカチカする真紅の色。

「む。」

 確かアルムの妃候補だったな。

「アルムならまだ寝ているぞ。」

 肌は白く、髪は輝く金色。

私とは正反対だ。

背の高さは負けているし、胸の大きさも少し負けている。

少しだぞ!

同じ姫といっても規模が違う。

だか!

今の私には昨夜のアルムの言葉がある!

「あら、そうでしたの。では、出直す事に致します。えぇと・・・?」

「ラミアだ。」

 シルビアに近い間延びしそうな喋り方に軽くイラつく。

「貴女と同じ、アルムの妃候補だ。」

 もうこうなったら、勢いしかない。

「まぁ?!そうなのですか?お揃いですのね!」

 ・・・何だ?この生き物は?

「ところで、こんな朝早くアルムに何の用だ?」

 まさか、私と同じ夜這いか?!

いや、朝だから朝這いか?!

「いえ、アルム様の朝の鍛錬の見学をお願いしてみようかと思いまして。」

「鍛錬の?」

 物好きだな。

それよりアルムは、早朝に鍛錬をしていたのか?

どうりで訓練をしているのを余り見かけないと思った。

というより、何故、この女がソレを知っている?

「私も少しは武の心得があるもので。」

 にこりと微笑む姿は、外見より幼く可憐に見える。

私とは全く違う・・・。

「そうか。私も多少の心得はある。どうだ?手合わせでも。」

 私には絶対に作れない花のような笑顔。

「それは光栄ですわ。是非。」

 ぽんっと手を合わせて鳴らし、彼女はまた笑顔を咲かせた。

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