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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅳ章:黒の皇子は革新する。
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ルイショウは想いを焦がすというコト。【中】

「ラミア・・・。」

「どうしたらいい?アルム、私はどうすれば・・・。」

 泣いているのか?

「最初はいけ好かないヤツだと思っていた。」

「ん?」

 突然に。

話すというより、思いついた事を言っているだけ。

そんな風を感じる。

「オマエが言い出す事は全て心地よい理想だと思っていた。」

 否定はしない。

理想は理想。

しかし、理想を実現する努力をしなくなった者の進歩はそこで止まるのをオレは知っている。

「でも、オマエはどんどん色んな事をしていって・・・オマエの周りにはどんどん人が集まって・・・。」

 その正体が何なのか、それはオレにとっても不思議現象だった。

オレの事を良く知っているミランダならまだしも。

何故、オレの周りに人が集まるのか。

答えの一つが、今日のカーライルの一言だった。

「何時しか私もそれを見ているのが楽しくなった。」

 "未来への希望"

例えそれがどんなにちっぽけなモノだとしても生きていると実感出来る何か。

オレの今の生はそれ求めていたのかも知れないと、今は思う。

「でも・・・私の居場所がどんどん無くなっていく気がして・・・。」

「そんなコトは・・・。」

「そうこうするウチに、オマエの婚姻相手とかいうのが来て・・・。」

「あのなぁ、彼女は・・・。」 「そうしたら!」

 一際、大きな声が上がる。

「胸が痛くなって、どうしたらいいかわからなくなって、こんなの・・・初めてだ・・・。」

 オレは・・・この状況を・・・彼女にどんな態度を示せばいいのだろう?

子供のように泣きじゃくる彼女に。

「私とあのオンナと何処が違う?この黒い肌がいけないのか?どうすれば私はオマエの傍にいられる?見続けられる?」

 ホリンとラミアの違い。

オレはそれを今、目の前に突きつけられたような気がした。

そして、オレとラミアの違いも。

それは、他者に必要とされず、省みてもらう事のない疎外感や空虚感。

そんなモノに一度も浸された事がないという・・・。

「ラミア、それは違うよ。」

 オレは子供・・・オリエに言い聞かせるよりも優しく語りかける。

目の前の彼女が壊れてしまわないように。

「オレは肌の色、種族の色で区別はしない。」「でも!」

「オレが一度でもそんな素振りを見せたか?そりゃ、確かに種族の壁はある。」

 現に一度出来てしまった先入観を拭い去るには時間が必要だ。

実際、肌の色や耳の形など目に見える差異がなくなるワケでもない。

「オレは、黒い肌は美しいと思ってる。」

 大体、美的感覚は人それぞれだし、美の概念なんて、時代や風土文化で千差万別に変化するものだ。

「それと・・・アイシャ姫の事だが、そもそも最初から断るつもりだからな?向こうにもそう言ってある。」

「え?じゃ、じゃあ・・・。」

 急にうろたえ出したな、少しは冷静になってきたか?

「オマエの早とちりじゃ。」

 コツンと彼女の額を叩くと、はぅっと声を上げて押さえる。

「ちなみに今のところ、次の候補とかはいないからナ。」

 ここまでくると、不謹慎だが笑えるな。

実に不謹慎だ。

「・・・でも、嬉しいよ。」

 オレはラミアを引き寄せ、その裸体に一番薄い掛け布を被せてやる。

「あ、あの、アルム?」

「今度は何だ?」

 オレに覆い被さるような格好で抱き寄せられた形のラミア・・・何だか照れる。

「私はオマエの傍にいていいのだろうか?」

「何を今更。」

 それは逆だ。

オレが皆にいてもらっているんだから。

こんな何も持たなかった、持とうとしなかったオレの傍に。

「好きなだけいたらいい。決めるのはラミアだよ。」

 傍にいたいと思われるような存在でいたい。

居続けたい。

「うぅ・・・む。」

 歯切れ悪くオレの胸の上で唸るラミア。

「あのなぁ、もう今更あんだがら、言いたい事は全部言っておいてくれ。」

 またこんな風に突拍子もない行動に出られても対処に困るし、心臓に悪い。

いいか?

今のオレ、かなり余裕なんてないぞ?

「言いたい事というか・・・。」

 黙り込んだ数呼吸後・・・。

「はっんむぅっ・・・。」

 ラミアの唇がオレの唇を塞ぐ。

本当に・・・唐突だ。

「私は、オマエが欲しい・・・のかも・・・知れない。」

 最後はかなりの尻すぼみだ。

「断言できないのに、こんな事するなよ・・・。」

「う・・・すまない。」

 謝るのかよ・・・。

「全く・・・。」

 呆れて物も言えないが、が、可愛いとも言える。

きっと恥ずかしいやら、何やらで互いに顔が真っ赤になっているだろう、あぁ、だろうさ。

というか、この状況で相手の顔がはっきり見えるラミアってズルくないか?

「アルム・・・その、なんなら・・・最後までしてもいい・・・ぞ。」

 激しく矛盾していないか?

人に見ろと言っておきながら、オレから顔を逸らし耳元で囁くなんて。

「オマエなぁ・・・。」

 断言出来ないクセに・・・。

断言出来ない状態なのは、オレも同じか。

「む・・・すまん。」

 だから謝るなっての。

オレの方が悪者みたいで恥ずかしいじゃないか。

「・・・その、今日は、ここで寝ていいか?」

 ・・・断ったら、オレ、完全に悪者だよな?

「お好きにどうぞ。」

 色々と反応してしまいそうだったが、身体は思ったより疲労していたようだ。

これなら、変な事を考える事なく眠りにつけそう。

「・・・ホリンの母君もこんな気分だったのだろうか・・・。」

 ラミアのその呟きにオレはあえて答えない事にした。

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