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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅳ章:黒の皇子は革新する。
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ルイショウは想いを焦がすというコト。【前】

カーライルが持て余していた復職願の名簿は、本当にオレにとっての宝だった。

来るべき官吏の試験。

それに合格した者達への教育係に熟達した文官は最適だった。

カーライルが自分の師の話題を出したお陰だ。

武官も同じようにレイアやバルドの補佐についてもらう事に。

更にリッヒニドスに置く学舎の教鞭を取る人材にもなる。

この事をカーライルに提案すると、ニヤリと笑って颯爽と部屋を去って行った。

恐らく打ち合わせに行ったのだろう。

何という身軽さだ。

「民は国の宝也ってな。」

 皇族なんざいなくとも、一定以上の教育水準があれば国は成り立つであろう、いい証拠だよ、全く。

その後は上がって来た報告書に確認の署名をし続けた。

自分の名をあんな回数書いたのは初めてだ。

早々にそれの認印を製作・登録しないと大変だというのは理解した。

「じゃないと、そのうち剣すら持てなくなりそう・・・。」

 利き手を揉みながら、寝台に倒れ込む。

そういえば、あれからオレの知らない言語が浮かんでこない。

まだ大丈夫という事だろうか?

「あぁ・・・。」

 また落ち込みそうになって、寝台の上でもぞもぞしながら瞼を閉じた。

部屋の明かりは既に落としてある。

身体がゆっくりと沈み込むカンジ。

・・・落ちそう・・・。

「うぁ・・・。」

 次に呻いた時には、外も室内も完全に真っ暗で、明かりといえば窓から微かに入る光。

何時間経ったんだろう?

完璧に寝てしまったらしい。

誰も起こしに来なかったのだろうか?

また気を遣わせてしまった・・・?

「・・・誰?」

 気配がする。

そのせいで意識が覚醒した・・・のか?

ピクリと動いた気配は、ゆっくりと横になっているオレに近づいて来る。

外からの光にうっすらと身体を照らされて・・・。

「ホリン?」

 月光で照らされても尚、黒い肌。

あれ?

でも、ホリンはあれでも扉を叩いてから部屋に入ってくる派・・・。

オレの声に僅かに反応したソレは、突然寝台に飛び込んで来て、素早くオレの上に馬乗りになり肩口を押さえつける。

「コラ、冗談にも程があるぞ。」

 仮にも、だ。

主従関係というものを多少は持って欲しい。

「冗談のつもりはない。」

 ホリンよりも低い声・・・?

「て、オマエ、ラミア・・・?」

 そういえば体格もホリンより一回り大きい。

薄布のような合わせ一枚を纏い、腰の辺りを帯で留めたラミア。

心なしか表情は暗く悲しそうにも見える。

「なにやってんだよ、オマエ。」

 半ば呆れたオレは、相手の正体も判ったせいかぐったりとする。

「そんな顔をしないでくれ。」

 薄暗さの中で、オレはラミアの表情を判別しにくいというのに・・・ダークエウルフは夜目が利くんだっけな。

少し不公平だな、オイ。

「アルム・・・。」

「何だよ?」

 大方、誰かに何かを吹き込まれて・・・。

「いいから、私を見ろ。」

 片手でぐぃっと顔をラミアに強制的に向かせられると、彼女は自分の身体をまさぐりながら、ごぞごそと。

衣擦れの音と帯が解かれていく音。

「ちょっと待て!何を考えてんだ、ヲイ!」 「いいから黙っていろ!」

 暴れようとする俺の身体に膝をつき、力を力で押さえ込まれる。

全力で跳ね除けてもいいんだが、暗くて周りに何があるのかわからん。

うっかり怪我でもさせたら大変だ。

「アルム・・・私を見てくれ・・・。」

 もう一度、衣擦れの音がして、柔らかな光に照らされたラミアの肌が露わになる。

艶かしく光っているようにも見える黒い肌・胸に、花の蕾のような頂。

「お願いだ・・・ちゃんと、私を見てくれ・・・。」

 自分を見ろという二度目の声、懇願。

視線を外そうにも、身体全体で主張された美しさに吸い込まれてしまう。

「一体・・・どうしたんだよ。」

 酷く渇いて張り付いたように上ずった声が漏れる。

オレは正直・・・かなり混乱している。

そうに違いない。

「・・・わからない。」

 返ってくる声も頼りなく、空間に彷徨って消える。

「は?」

「・・・わからないんだ。」

 次の声は更に頼りなく、迷子の子供のようだった。

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