表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅳ章:黒の皇子は革新する。
133/207

ヌケてる皇子は可愛らしいってコト。

言うだけ言って、一人で勝手に・・・本当、勝手だがスッキリしたオレは、自分の現状も再確認。

そのせいか、一日の仕事も思った以上に捗った。

もっとも、今のところは何も問題なく順調に運んでいて、オレはその報告を聞くのと、今後の騎士団員選抜会(仮)についての打ち合わせの仕事くらいしかなかったが。

「しかし、カーライルの部下達は仕込みがいいよなぁ。」

 思わず感心。

「それは、自分を含めて褒められているのでしょうか?」

 書類に目を通しながら、何処か訝しげに反応する。

「オレのような異分子が入っても乱れる事なく公務を行ってるしな。」

「それが仕事ですから。」

「いや、うん、まぁ、そうなんだが・・・。」

 ちょっと論点がズレてる気が・・・。

「何か?」

「いや、う~ん・・・。」

 はっきりしないオレにカーライルは、読んでいた書類から目を離して俺をまじまじと見る。

「いきなり太守が更迭されて、オレみたいな若造がしゃしゃり出て、こんな事になっててさ。」

「本当ですね、大忙しです。でも、ただの若造ではなかったので、部下達も色々と刺激されたのですよ。」

「まぁ、一応は皇子だしなぁ。ん?」

 カーライルが口を抑えて震えて・・・る?

何、アレ?

「くくくっ。いやはや、アルム様は過小評価がお好きなのですね。」

 目尻に透明な液体を滲ませてカーライルが微笑む。

「そんなに笑うコトか?」

 どうやら、今の何かがドツボに嵌ったらしい。

う~ん、カーライル、読めんヤツ。

「いや、失礼。アルム様が余りにも可愛らしいので。」

「何だ、ソレ。」

 真顔で冗談言われても面白くもなんともない。

どちらかというと気味が悪い。

・・・言い過ぎか?

「しかし、能力のある者があまり謙遜し過ぎると、それは嫌味にしかなりませんよ。」

 目尻の涙をようやく拭うカーライル。

本当、一体、何がそんなに面白かったのか。

「謙遜も何も、オレは今まで、自分が誰かと比べて優秀だと思った事はないぞ?」

 皆、何処かしら長所があって、短所があるのは当然で、オレ自身も例外ではないと思っている。

それが他より抜きん出てるかはまた別の話だと思うし。

「でしたら、自分の部下達は皆、クビになってしまうかも知れません。」

「それこそ過大評価だ。」

 大げさ過ぎる。

「いいえ、それくらいアルム様の行う政事は皆に持たせるのです。」

「持たせる?」

「えぇ、それが夢だったり、期待だったり、希望だったり。人それぞれです。」

 重圧だな。

いや、それが先頭に立って政事をする、皇族の本当の責務なのか。

「それすらも謙遜なさるなら、証拠もありますよ?」

 そう言うと、カーライルは先程まで自分が目を通していた書類の束を投げて寄越す。

カーライルにしては扱いがぞんざいだ。

「・・・・・・何だコレ?」

 人名と所属が書かれた表がズラリと・・・。

「復職願の一覧です。」

「復職願?」

 つまり、これは州府に以前勤めていた人間達か?

「スクラトニーに罷免された者、悪政に耐え切れず辞した者、更に一度引退したご老体までも。」

 苦笑するカーライルに対して、どう反応したら良いのかオレには全くわからない。

「時の流れは誰しにも平等だからこそ、人は未来に不安を持ちます。」

 困惑。

恐らく困惑の表情を浮かべていたのだろう、カーライルは更に補足していく。

朗々と演説するかのように。

「しかし、未来のある一点に小さな希望があったのならばどうでしょう?」

「人は、そこに邁進してゆく。」

 無言の頷き。

結局、遅かれ早かれ、人は死ぬ。

本当のオレの生は子供の頃には終わっている。

人より少し早かっただけ。

でも、皆にはまだ先がある。

「結局、何が残せるかは、如何に日々をより良く生きていくかって事か・・・。」

 皆がそう思うようになってきた結果が、オレの手の中にある。

大切な想いの結晶。

「解に至る道は常に自分の周りに見え隠れしていて、私達を嘲り通り過ぎようとしている。」

「何だ?」

「自分の師の教えの一つです。」

 どうやらカーライルにも内政の師がいるらしい。

それはそうだ、彼にだって先輩官吏はいただろうし、新任時代だってあってもおかしくはない。

あ、カーライルの新任時代って、想像すると笑えるかも。

いきなりこの無愛想さでも扱いに困るよな。

「カーライルの師って人も会ってみたくはあるな。」

「自分はもう二度と会いたくはないですが・・・あぁ、今なら腕力で勝てそうですから、アリですね。」

 ・・・なんというか・・・きっと、オレとバルドみたいな関係なんだろうと容易に推測出来る。

悲しい。

「ともかく・・・だとしたら、これはオレの新しい宝物だな。」

 その新たにオレを支えてくれる存在に心から感謝した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ