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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅳ章:黒の皇子は革新する。
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チよりも濃く温かいってコト。【前】

 コンコンと部屋の扉を叩く音で、オレは意識を取り戻した。

・・・どうやら、少し眠っていたようだ。

あんだけ騒いでから入浴すれば、そうなるよな。

夕食もとって満腹だったし。

「どうぞ。」

 ダルい身体をなんとか起こし、許可を出す。

このやりとりをする人間自体が少ないのが悲しいとろだが、大体の人物が想像出来るのも確かだ。

「アルム様・・・。」

「どうしたミリィ?あれ?オリエも。」

 部屋に来た二人は夜着姿。

・・・夜着姿ってアレだよなぁ。

「・・・オリエ、おいで。」

 どうしてなんだろうな・・。

どうしてオレだったのだろう?

そう思っていると、無邪気にオリエが布団に入ってくる。

何故と考えてたら、オリエも同じか。

「アルム?」

 心配そうに見つめてくるオリエの頭を撫でる。

「ねぇ、オリエ。オリエにお願いがあるんだ。」

 今、オレは罪悪感よりも、彼女のこれからの未来が楽しみで仕方がない。

彼女が一体、どんな女性に成長するのか。

「オリエ、自分の力を嫌いにならないで欲しい。」

 何故、自分がこんな力を持ったのか。

望んで手に入れたわけじゃないのは、オレもオリエも同じ。

「その力があったから、オレは助かった。それを含めてオリエなんだよ?」

 否定し続けるだけでは、何も生まれない。

何も変わらない。

痛い程、それは理解させられた。

「だから、嫌わないであげて。何時か、その力が大切な人を守る為に必要になるかも知れない。」

 無言のまま、オレを見続ける灰銀色の瞳。

「オレを助けた時みたいに。」

 どう足掻いても、逃げても、付き纏うというのなら受け入れるしかない。

「・・・わかった。アルムが言うなら、ガンバル。」

 受け入れられたのなら、絶対見える景色は変わってくる。

「ありがとう。」

 オレはオリエを抱きしめる。

「愛しているよ、オリエ。」

 惜しむらくは、成長を見守る時間がオレに残されているかどうかだけれど・・・。

「ん?勿論、ミリィも好きだよ?」

「なにか・・・ついでに言われただけな気がします。」

 ぶーっと頬を膨らますミリィ。

やっぱり、オレ、何処かの国の王族みたいに後宮作って云々とか絶対出来ない。

円滑な運営とかどうやってんだか、謎だらけ。

「そんな事ないよ、ミリィも可愛いよ。」

 嘘はついていない。

「ん~、じゃあ、アイシャ様と比べてどっちがです?」

 そう来ますか。

「比べる基準にもよるが・・・。」

 胸とか美人度、生まれだったら、今の社会じゃどう見てもアイシャ姫の方が評価されるだろう。

「断然、ミリィだな。」

 別に機嫌を取っているワケじゃないぞ。

「・・・それは・・・どういう基準なんですか?」

 前置きとして述べた言葉が引っかかっているのか、頬を膨らますのを止めたものの、機嫌は直っていない。

「相手がオレの事をよく知らないっていうのもあるけど、ミリィはオレの全部を認めて受け入れてくれそうだからかな。」

 外見は一切関係ない。

いや、ミリィも充分可愛いし、ちまっとぽちゃっとまとまった身体つきも嫌いじゃない。

「それに・・・。」

「それに?」

「ミリィとなら、一緒に故郷を見に行きたいと思えるから。」

 些細な約束・・・というか、誘い。

「あ・・・。」

 本当に些細な事かも知れないけれど、今はその約束を果たせるように精一杯生きていられる。

生きていこうと思える。

そう思わせてくれたミリィは、やっぱりオレを構成する一欠片ってコトなんだよな。

「うん、ありがとうミリィ。大好きだよ。」

 オレは傍で既に寝息をたてはじめたオリエに布団をかけ直し、ミリィを招き寄せる。

「何時か、オレのやりたい事、成したい事が終わったら、行けるといいな。」

 約束しきれない事が辛い。

「はい、楽しみにしてます。」

 ミリィの笑顔が痛い。

「オレも楽しみだよ。」

 彼女のように素朴で自然があふれた故郷。

うん、いい所だろうな・・・。

「それまでずっとお傍に、それからだってお傍にいますから。」

 ぎゅっとオレの夜着を掴む。

彼女は彼女なりに、オレの変調に気づいているようだ。

全く、ダメ皇子だな、本当。

変わり映えというか、学習能力低いんじゃないか?オレ。

「あぁ。おやすみ、ミリィ。」

 抱き寄せた彼女は、オリエと同じくらい温かかった。

「おやすみなさいませ、アルム様。」

 オレは自分の両脇にある温もりと一緒に眠りにつき・・・。



-そして"夢"を視た。-

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